本編25 新天地へ
「町を移る」
「ちょっと待った、リク」
「ここで何か不満が有るのか」
「この町では暴動が二度起きている。一回目は町の一角での暴動、二回目は町の九割が消滅した大規模な暴動」
「ここに留まるのは危険が伴うだろう」
「……分かった、それで良いのか、皆」
ロランの問い掛けにニナが答える。
「まあ、大丈夫だけど……」
「リク君、あなたこの家どうするの?」
しまった。
完全に忘れていた。
この家にはゲーム開始直後から住んでいる。
どうするかーー
「このままにする」
「ちょっと待て、この家が壊れるかも知れないんだぞ」
「この家には結界が張ってある、少しの衝撃では壊れないさ」
「……まあいい、この家の荷物はトーヤの収納魔法で運ぶが、トーヤ、いいか」
「良いですよ、魔力消費もありませんし」
「じゃあ、荷物を纏め始めるか」
10分後、全ての荷物が収納魔法で収納されて、家が買ったばかりのようになった。
そして出ていこうとした瞬間、頭痛が走った。
「うっ!」
二秒ほどの頭痛に耐え、辺りを見渡す。
「皆、大丈夫か」
「うん、大丈夫」
そう言って振り向いたニナを、僕が見たその時、ある事に気付いた。
体力ゲージの上に、番号が浮かび上がっている。
20024567。
レベルでは無いだろう、こんなにニナはレベルが高くない筈だから。
ニナも僕の番号が見えているのだろうか、無言のまま。
見回せば、トーヤやカズト達にも番号が浮かび上がっている。
トーヤは20024235、カズトは70758。
番号の差は大きい。
全プレイヤーに付いて、番号の差もある……
「ランキングか」
「リク、どういう事」
「カズト、カイトのレベルは高い。そして、僕達は低い。そして同じレベルなのに順位が違うから、これはゲームの総合ランキングだ」
「そうね、ゲームの時もそこに表示されていた筈」
ランキング、ゲームの時代、掲示板とプレイヤーのゲージの上に表示されていた物。総合ランキングはステータス、スキル等全てで順位が決まる。そして、51より上はマスターJと言われる五十人のプレイヤーと全ステータスカンストの伝説のプレイヤー。
マスターJのJは、ジョブ……職業の略。
最高ランクの職業五十の中で一つ以上極めた者がなれる公認プレイヤー。
ランキング一位は名前も非公開、アバターの姿も非公開。
だから誰か分からない。大会にも出ないし、ギルドはランキング一位とマスターJだけと言う最強ギルドにしか入っていない。運営までもがその情報を秘匿する、伝説のプレイヤーだ。剣を一回振ればあらゆるモンスターを粉微塵にする強さを持つと言う。
実質マスターJ以外では52位が最高であるのだ。
「まあいい、出発するぞ!」
そして新天地へ向けての旅が始まった。




