潰した
久しぶりに会った蕪さんは、3人目の旦那さんが亡くなったあとだというのに元気だった。
昔案山子に聞いたことがあるけど、蕪さんは旦那さんが換わることが怖くないんだって。
よくわからない。
私は昔母さんが亡くなった。その時すごく悲しくて寂しくて、でも礼於がいたから頑張った。
武術はもちろん、苦手な勉強も、傾いた家のこともみんな頑張った。
学園でも回りの子に負けないように頑張っていたら、他の貴き名にいじめられ、魔女に潰された。
最初は些細ないたずらから、最後は命を狙われた。私も礼於も。
魔女に泣いてすがってもダメで、礼於を置いて逃げた。
私はひどいお姉ちゃんだ。
色々思い出しながら、蕪さんについていくと学園の中に入った。
蕪さんは色々質問するリセとトトに丁寧に説明していた。
「あそこは図書館、静かでいいとこだけど飲食禁止なの。あの食堂は量がいいのだけど長居するとよい顔されないわ。理科室の実験器具は干物を焼くのにちょうどいいの。」
なにかちがう。
どんどん進むと魔女の塔に着く。
不思議と誰も出てこない、邪魔をしない。
「姉さん何で誰もいないの。」
案山子が私の疑問を聞いた。
今は塔の最上階、魔女の部屋の前。
「あら、だってねえ奥様が静かにあんたたちを案内しなさいて、言われたから。みんなこそこそしてるのよ。」
扉の前で蕪さんが姿勢を正して言う。
「畠野案山子様、獅子頭玲於那様、壱様。そして魔女様。どうぞお入りくださいませ。」
部屋の中には西の魔女と礼於がいた。
「会いたかったよ、玲於那ちゃん。」
礼於が笑顔で言う。
その礼於の頬を西の魔女が叩く。
「レオいけない子ね。私より先にお客様に話しかけてはダメよ。」
西の魔女は叩いた頬を撫でながら話す。
「私のペットが失礼しました。まだ幼いのでよくわからないのよ。許してね。」
あの女は何て言った。
「玲於那さん。」
案山子の声で少し落ち着く。
西の魔女。
銀の髪に紫色の目、色気が漂う二十代くらいの女。
「ご主人様ごめんなさい。」
礼於は何て言った。
私は床を強く蹴っていた。
「貴様、礼於に何をした。」
私はほえていた。
「玲於那ちゃん、ダメだよ。」
西の魔女の首を捕らえる前に、私は礼於に制圧された。
私が礼於に教えた技で。
また私は泣きじゃくった。
西の魔女が笑う。
「いい光景ね、前にも見たわ。」
「はい、いい技ですね。伸ばされた腕を取り肩を綺麗にきめています。」
「リセ冷静冷製スープー。トトのキメ顔をはどこをきめるのかな。」
「トトの顔ってどこ。」
「リセ冷静冷製スープー。トトここ顔よ。」
涙が止まった。
「あなた何なの。」
西の魔女がリセに聞く。
「ナイスで素敵なリセとトトだよ。」
「あなたを食べます。」
礼於が私を離しリセとトトに対峙した。
軽く腰を落とす構えを取る礼於。
リセがスキップした、ように見えた。
リセは礼於の膝に左足をかけ、勢いよくの右の膝頭を礼於のあごに叩きつける。
リセがもう一度スキップした、ように見えた。
リセの体が軽く浮き上がり、空中で床と平行になり、西の魔女の顔に靴底をぶちこんだ。
倒れた西の魔女に肘をさらに落とし、腕を取って決めた。
「ウウウウ、ワン、ツウウウ、すりいい。カンカンカンカン。」
トトの唱える呪文は何か魔女に止めを刺すものなのかな。
案山子が西の魔女に近づき見ている。
どうやら西の魔女は死んだらしい。




