拾った
ゴミ箱から足が生えてる。膝から下が天に向かって一直線。誰かがマネキンでも捨てたかと思い触ると温かい。生きている人の足、紺のハイソックスに革靴女の子みたい。足の付け根の領域はどうなっているか見ると暗くて見えない。壱に足をゴミ箱から引き抜いてもらうと人ではなく、ゴミ箱の形の黒いものが出てきた。黒いアイスキャンディ、うん不味そう。
黒いアイスキャンディに声をかけると、もう食べられないと幸せそうな返事が来た。どうやら寝ているらしい。
寝ている女の子を放置したらいけないよね。
「壱、この子家まで運んで」
壱は少し考えて、アイスキャンディを横抱きにした。玲於那さんにいいお土産できたね。
自宅アパートは古い建物なので、エレベーターはついていない。僕と壱、黒いアイスキャンディ3人で階段を登るとひどくきしむ。階段が抜けないことを祈りながら部屋に向かう。ドアを開けると部屋に誰もいない。ソファーとテーブル、小さいキッチン、奥に扉が一つ小さい我が家だ、人が隠れるには狭い。
「玲於那さんただいま。僕と壱しかいないよ。」
「あ、足音が。」
「大荷物なだけだよ。」
テーブルの下から声がするので、テーブルの脇に黒いアイスキャンディを置く。
「くさいです。」
「ああごめん、それゴミ箱の中にあったから、臭いがついているね。」
改めて明るいところで黒いアイスキャンディを見るとおかしな物体である。艶のない黒色で触るとひんやりする。耳をあてると、寝息が聞こえる。どうやら足の持ち主が入っていると思われる。
「これなにですか。」
テーブルの下から玲於那さんが言う。まだ怖いのか出てこない。
「たぶん、人、かな。中がわかると確実なんだけど。割って見ようか。壱斧持ってきて。」
「ちょい、ちょいちょいちょい、お兄さーん。判断行動早いよ。優しく抱いて温めたら孵化するかも羽化するかもしれないじゃない。」
「じゃあ壱、これ抱いて一晩様子見て。壱のエンジンなら熱量十分でしょ。」
「判断行動早いよ。私が僕がわしが俺がトトが話しているのは無視しちゃダメ、絶対。大事よ。」
黒いアイスキャンディがほぐれたように動き、話し出した。どんどんほぐれ中から足の持ち主の女の子が出てきた。
玲於那さんはすでにソファーの陰に隠れている。
出てきた女の子は十代半ば、肩までの黒髪に、セーラー服、スカート、革靴を履いた足で小柄な感じ。気持ち良さそうに寝ている。もう食べられないと言ったのは寝言だった。床の上に寝せて置くのはかわいそうなので、ソファーに勧めた。トトと名乗った黒い何かは波打つようにうごめき女の子をソファーに寝かせた。玲於那さんはキッチンにうずくまっている。行動が速い。
トトは女の子の肩に巻き付きマントのようになった。マントの裾部分が持ち上がり犬の形を作り、話始めた。
「落ちたら高い塔の上で美味しい果物があって食べたら怒られて逃げてお腹一杯で眠くなったリセ。」
話は驚くほど短かった。
「塔は魔女の塔。」
キッチンから玲於那さんがか細い声で確認してきた。
「トゥーストウッ塔の名前なんて知らないよう。見渡す限りで一番高い塔だよ。」
これは駄目だ。
「玲於那さん、出かける準備して、壱も非常持ち出し袋持って。」
「な、んで。」
玲於那さん、やっかいごと持ち込んでごめんね。
「トト君リセちゃんが食べた果物ってどんな形してた。」
魔女の果物を食べた、そんな話だったらいいのに。
「顔はボン胸はキュ腹はボンな女形ってやつさ。」
ボンキュボンの位置を変えると化け物になることがわかった。
「リセちゃんは魔女だ。東の魔女の手下がくる。」
リセちゃんは魔女を食べていた。




