エヴァ編20 まだ劇場版じゃない
「庵野監督的にはどうだったんだよ。エヴァ最終回ってのは」
「一応公式には「25話は申し訳なかったけど、26話は予定通り」ということになってる」
「大して変わらんじゃないか」
「夏エヴァを観る限り、そうなんだろうなとしか言えん。結局やり直させたのに念入りに同じことをやってんだから」
「む~ん」
「オレの推理を振り返っとくな」
・エヴァの作成・放送スケジュールは放送開始時点で既に破綻寸前だった
・製作の遅れに精神的に追い詰められた庵野監督はある意味「壊れて」しまい、序盤~中盤にあった恐ろしい分量のディティールとパロディを詰め込み、「気合」で引っ張って行く怒涛の展開は影をひそめ、ひたすら内省的な告白ばかりする鬱アニメになっていく
・遂に最終回ではまともなストーリーの中でつぶやくという体裁すら放棄してストーリーの決着を一切しないで放り出す
「こう言う風にまとめると、全てはスケジュールの遅れみたいに読めちまうぞ」
「そうだな。内面についてもう少し捕捉」
・オタク第1世代である庵野監督は「前の世代に比べて貧相な(自称)人生体験」をコンプレックスに感じている
・かといってここまで来てしまった以上どうにもならないので、エヴァは明確なテーマは無いが「このままでいいのか!?!?」という「問題意識」だけが凄まじく肥大した作品となっていた
「ここから更に進む」
・「どうしていいのか分からない」問題意識はあっても明確に訴えたいことがある訳ではなかったが、エヴァを作ることで自分だけはセラピー(治療)出来たと思い込める程度には至れる
「…恐らくはそこまで外れてはいないんだろうが…」
「本当にプライベートな動機だろうな。オレが「スケジュール」説を押すのは本当にアニメ制作現場が大変な修羅場だということを知ってるからだ」
「経験者か?」
「根性なしなんですぐにやめたけどな」
「それじゃ分からんだろ」
「大変だという程度は分かるさ。ともかく、そんな前提が可能であるのかまでは分からんが、仮にこれが完全にプライベートそのもののアニメだったとしたらどうか?」
「?どういうこと」
「要するにテレビ放送すらしない、単に「作るだけ」の2クールアニメだったとしたらどうだったかって話だ」
「いや、ありえんだろ」
「ありえんだろうな。テレビ放送のスケジュールが決まってたからこそああなっちまったとはいえ一応26話作り切れたんだから。これがスケジュールが決まってない状態だったら延々作り続けて永遠に完成しないアニメになっただろう」
「いや…人に見せないのに作品作るなんてありえるのか?」
「ヘンリー・ダーガーは知ってるか?」
「いや…」
「「アウトサイダー・アート」と呼ばれるジャンルの代表的な作家だ。自閉症の人とかの描く絵画や文学と思われがちだが、「アカデミックな教育を受けていない」アーティストによって作られた作品のことを言う」
「それが?」
「ヘンリー・ダーガーは自室にそりゃもう凄まじい分量の文章と、その自作の挿絵を付けた「小説」を延々と書き続けてた。あるきっかけで偶然発見されることになるんだが、それが無かったら永遠に闇に埋もれていただろうな。というか見つかってないヘンリー・ダーガーなんて大勢いることだろう」
「へ、へー…」
「読んでないからストーリーは分からんのだが、とにかく壁一面を埋め尽くす本棚にびっしりだったってんだからかなりの量だ」
「…それ、全部ノートなのか?」
「ああ。彼にとっては創作活動は純粋な趣味であって、人に見せる必要は無かったんだろう」
「出版されたりはしてないのか?」
「試みられたことはあったみたいだが、余りにも量が多いし採算も取れないだろう。ただ、挿絵の一部をまとめた画集なんかは発売されたらしい」
「そうなんだ」
「なんつーか、ひきこもりの中年男の妄想が爆発したような厨二病設定丸出しのファンタジーらしくって、全裸の美少女天使たちが活躍するんだと」
「…まあ、あるよね」
「問題はヘンリー・ダーガーは一度も女性の裸を見たことが無かったのでどういうものかさっぱり分からんかったらしく想像で描いてる」
「…はあ」
「だから女の子なのに男性器がついてる」
「…は?」
「自分と同じ人間だからこんな感じなんだろう…ということらしい」
「何を言ってんだよ」
「事実そのまんまだ。物語を描く『衝動』があればいいんであって、そこには「人に見せる」ことは必ずしも絶対条件ではない」
「エヴァをアウトサイダー・アートと同列に並べるのはちょっとヒドくないか?」
「アーティストが自分の作品に向かい合う姿勢のことを言ってんだ。レオナルド・ダ・ヴィンチは「モナ・リザ」を死ぬまで手放さず、一生手を入れ続けた。もうそれ自体が目的化してるとも言える」
「最初からそっちの例を出せよ」
「ダ・ヴィンチなら褒められてると思い、ヘンリー・ダーガーならけなされてると思うたあオタクとしちゃ大したことないな」
「そういう訳じゃないけど…」
「恐らくだが、エヴァの序盤から中盤は誰にも見せない前提であったとしてもあれだけの作り込みになっただろう」
「はあ」
「それこそ同人誌と同じだよ。誰も読んでなかろうが、恐ろしく作りこむ。その心意気は分かるよな?」
「…まあ」
「アウトサイダー・アートはある物の開発から一気に鳴りを潜める」
「何だ」
「向精神薬…抗生物質だ」
「?」
「それまで、一部の人はクスリじゃなくて「創作活動」で鬱憤を晴らしてた訳だ」
「…益々エヴァと同列に並べるのは深刻に失礼なんじゃないかという気がするんだが」
「そうかね。あんな凄まじいアニメは前半であっても作りながら『脳内麻薬』はドバドバに出てたと思うぞ」
「治療代わりに創作活動で癒していただと?」
「誹謗中傷どころか最大の賞讃だと思ってんだがね」
「…俺には判断できん」
「問題は後半から終盤だ。伏線に対して何も考えてないのはまだともかく、「落としどころ」が定まってないし、そのテクニックも無い」
「もう一度確認するが「落としどころ」について教えてくれ」
「落としどころってのはあれだよ。結局のところ一体何がいいたいのかってこと。それはそれこそ「怪獣大好き!サイコ―だぜ!」ならそれでいいし、「オレはアニメで興奮したいんだよ!燃えるアニメ作ってやるぜ!」ならそれでいい」
「ふむ」
「ところが何を思ったか、「オレたちオタク第1世代ってこんなんでいいのかな?」が何故かメインテーマになってしまう」
「そんな答え出ないだろ」
「出ないな。ただ、だからといって作品を破綻させなきゃ表現できないってのはありえない」
「ヘンリー・ダーガーがちゃんと終わってるってのかよ」
「同列視するなと言ったのはお前だ。セカイ系のところで話すが、恐らくかなりの程度モチーフになっているであろう「デビルマン」という漫画史上に残る作品がある」
「デビルマンねえ…」
「読んだよな?」
「読んだけど…」
「どう思った?」
「ジンメンが気持ち悪い」
「そこかよ!」
「…正直、凄い凄いとだけ延々と聞かされた後だったから…凄いとは思うけど…短いし」
「まあ、バッドエンド作品の典型ではあるな。ただ、『バッドエンドだから』読者がみんな激怒したかといえばそんなことは無い」
「そりゃそうだ」
「むしろそれによって名作の地位を勝ち取ってると言えるだろう。デビルマンの最後でハッピーエンドになったんじゃアホらしくてどうにもならん」
「まあな」
「つまりデビルマンは「最後人類も何もかも全部破滅する」ことでテーマを昇華することが出来た訳だ」
「最後、半分に千切れ飛んだ上半身だけのデビルマンのビジュアルはトラウマものだもんな」
「まあ、こんなのを当時忠実にアニメ化なんぞした日にゃPTA大激怒だ」
「…想像もしたくないな」
「確かに『デビルマン』に構成だの逆算だのがあったとは思えない。そういう小賢しい計算を越えたところにある孤高の作品だ」
「そう!俺がこの間からお前の意見に違和感があるのはそれなんだって!計算だの構成だのの理屈は分かるが、本当にそれだけなのかって」
「…結局そういう『偶然に頼る』みたいな奇跡に賭けて作品作ってるから駄目作品ばかり量産するんだ」
「しかし計算からは奇跡は起こらない」
「だからといって適当にアニメ作り続ける積りかよ。まあ今はそれはそれでいい。ラストの形式の話だ」
「そうだったな」
「インターネットこそ無かったんだが、『観ていた』人間ほぼ全員が大激怒したり、大論争したりとえらいことになっているもんだから、全くの門外漢だった人間なんかも「…こりゃ一体何の騒動なんだ?」ってんで乗り込んでくることになる」
「…結果オーライか」
「発売スケジュールを見てみよう。日付に注目してくれ」
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:3 1996年4月5日 第伍話、第六話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:4 1996年5月2日 第七話、第八話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:5 1996年6月5日 第九話、第拾話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:6 1996年7月5日 第拾壱話、第拾弐話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:7 1996年8月7日 第拾参話、第拾四話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:8 1996年9月5日 第拾伍話、第拾六話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:9 1996年10月2日 第拾七話、第拾八話
新世紀エヴァンゲリオン Genesis0:10 1996年12月5日第拾九話、第弐拾話
「何だかんだ言っても毎月ペースで発売され続けてる。これでリアルタイム組でない人間も追いついてくることになって、やっと一般にも人気が拡大する…あの衝撃的な最終回と込みでな」
「確かに毎月出てるな」
「映画公開に至るまでの詳細を引用しよう。リアルタイム組でも「そんなことあったっけ」という懐かしい話だらけらしい」
*****(改行引用者)
(前略)TVシリーズ放映終了1ヶ月後の1996年4月に、最終2話は当初の脚本に沿った形でリメイクし、既に順次発売されていたVHSとLDでソフトとして発売すること、次いで最終2話のリメイクとは別の完全新作の劇場版の製作・公開が発表された[3]。
その後この二つの企画は連動し、1996年11月1日に東京都内において記者会見が開かれ、そこで1997年春にTVシリーズの総集編とリメイク版第25話・第26話をセットにした完結編『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が、同年夏には完全新作の劇場版が公開されることが発表された。
*****
「…??え、つまり最終2話をちゃんと作り直して『ソフトとしてのみ発売する』だけの予定だったってこと!?」
「最初はそうさ」
「じゃ、劇場版は?」
「完全新作の予定だった。俗に「愛・おぼえていますか」方式と呼ばれてた」
「なんか聞いてた話とだいぶ違うぞ」
「こういう情報を見る限り、「あの(TV版の)25・26話は予定通り」って言われても信じられんのだよ。しかもこの記者会見はテレビ放送終了後1か月しか経ってない1996年4月にはもう行われてる」
「それくらい方々から苦情が殺到したんだろうな」
「とはいえ、ニコ生で中継した訳じゃない。この記者会見の映像を観たオタクなんてまあいないだろう。みんな雑誌発表なんかで知った訳だ」
「はあ」
「とにかくこの時点で「最終2話の後始末」の雰囲気が余りにも濃厚だ」
「…これってやっぱり「イデオン」に似てるよな」
「うん。結果的に「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版」は「テレビ版の総集編+本来の最終回」方式ということになった」
「これって…」
「『伝説巨神イデオン』の「接触編(テレビ版の総集編)+発動編(本来の最終回)」と全く同じ構造だ」
「う~ん」
「オレとてオタクの端くれでクリエイター側の気持ちも分からんことは無いから、正直ガイナックスを憎からず思ってるところはそりゃ…ある」
「ほう」
「だが、このスケジュール管理の余りのムチャクチャさはありえない。幾ら作品が面白いといったって到底社会人として許されるレベルじゃない」
「はあ」
「アウトサイダー・アートの話まで引用したのは要するにあの幕引きに関してこう思ってたんじゃないかと思う訳だ」
『こっちが勝手に作って失敗したと言うだけで、何を見てただけのオタク連中が勝手に怒ってやがる』
「…ってね」
「む~ん」
*****(改行引用者)
しかし、『REBIRTH』編の完成は当初の公開時期に設定されていた1997年春には間に合わないことが事前に判明、劇場公開1ヶ月前の1997年2月14日に緊急記者会見が開かれた。
その席上で総監督である庵野秀明が謝罪を行い、春の映画では『DEATH』編と制作途中の『REBIRTH』編が公開され、夏に完全版『REBIRTH』編となる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が公開されることが発表。
すでに販売されていた春の映画の前売券は、未使用の券に限り夏の映画でも有効との措置が採られた。
*****
「大方の予想通り、1997年の春において完結編は間に合わないことが分かって前代未聞の「分割公開」となるわけだ」
「うわ~」
「いや、厳密には『分割公開』ですらない。春にその一部を見せて、夏には完全版を見せると言ってんだから」
「あ…」
「それこそ『(総集編付き)予告編』の公開に近い。金取ってな。だから春のチケットを夏にも転用出来る措置になった訳だ。これは関係者の「映画屋」さんたちの意地だな」
「う…うん」
「極論すれば夏エヴァがあれば春エヴァは見なくてもいいことになる。実際今じゃ鬼っ子扱いで全話入りBOXに得点収録されるくらいで、単品ソフト化はされていない」
「ひっでえな」
「Wikiには書いてないけど、これは歴史と伝統ある東映映画にとって「聞いたことも無い」レベルの大スキャンダルだった」
「あ…あはは…はは」
「直接見た訳じゃないけど、劇場・興業関係者大激怒だっただろう」
「見なくたって分かる」
「元々テレビ版でも20話セックスシーン、24話のカヲルくん首チョンパなんかで担当者はかなり長時間怒鳴り散らされる羽目になったらしい。都市伝説だと首が飛んだのはカヲルくんじゃなくて関係者だったとか」
「…」
「何しろ夜の7時にエヴァが終わってからしばらく抗議電話でテレビ東京の業務に支障が出るレベルだったらしいからな」
「あーあーあーあ」
「ところが、放送が終わってしばらくしてみると、そりゃ放送事故寸前の最終回をぶっかましてくれたりはしたものの、史上空前の大ブームだ。テレビ東京だって相当潤ったはずだ」
「そ、そうかな」
「庵野監督がテレビ東京に行ったら玄関で局の偉い人がじかに出迎える状態だったらしいぞ」
「そ、そこまで…」
「エヴァが逞しいのは、どう考えたってマイナス材料しかないスキャンダルを正に「面白さ」を免罪符に乗り越えてしまうことだ」
「いいのかなあ…」
「結局このスキャンダル体質は映画を舞台にして今度は本当に「事故」を起こすにいたる」
「未完成・分割公開ってことか」
「今でこそ「春エヴァ」「夏エヴァ」みたいなのんきなことを言ってられるが、この一件を持ってマジで関係者全員業界追放されててもおかしくなかった。ギリギリの瀬戸際だったんだ」
「…そっか」
「映画業界を馬鹿にしちゃいけない。あそこはテレビとはまた論理が違ってるからな」
*****
前売券発売開始日の1996年11月23日には、早朝からオリジナルテレホンカード付きの前売券を購入するファンが行列を作り、一般メディアでも報道された。一説によると映画公開前には前売券は20万枚以上売れ、当時の前売券の日本記録を更新したとされる[4]。
*****
「分割公開がアナウンスされたのが1997年2月だから、この1996年年末はまだ「春にはエヴァンゲリオンの完結編が観られる!」と胸をわくわくさせたファンがこれだけの経済効果を発揮させてくれたわけだ」
「…ここまでやっといて「出来てません」じゃそりゃ関係者怒るわな」
「今の劇場アニメも相当えげつない再入場商法を取ってるが、この前売り券もレイ版・アスカ版と発売されてファンは当然2枚買うし、保存用なんかを買ったファンも多かっただろう」
「そう…だな」
「前売り券がここまで売れている時点で決してそんなことは無かったんだが、もしもかりにこの「劇場版 エヴァンゲリオン」の前編にあたる「デス&リバース シト新生」がオオコケしたとしたら…マジで業界追放もありえたかもしれない」
「…うん」
「ところがこれが凄まじい大当たりをとる」
「…」
「何と言っても話題性が物凄い。臨時ニュースで公開前夜の徹夜行列が取り上げられて猫も杓子もエヴァンゲリオンだよ」
「そうだな」
「俗称「春エヴァ」というだけあって、公開は1997年3月15日」
「そんな時期か」
「学生諸君の「春休み」を直撃したわけだ」
「あ…」
「東映が真っ赤になって激怒したのも当たり前だ。ここを逃す手は無いもんな。3月公開の映画を2月に分割の緊急記者発表だ。現場がどれくらいの修羅場だったか考えるだけで胃が痛くなる」
「…公開時期をずらす訳には…」
「あのな、テレビで特番やるのと訳が違うんだぞ?他の映画…ハリウッド大作から日本映画まで予定がかなり先までびっしり決まってる。全国の何千という劇場をおさえてあるのに掛けるシャシン(映画)が無いから「ずらす」なんて、現実に可能だと思ってんのか?マジで関係者に殺されかねんぞ」
「…何てことしてくれてんだ」
「ま、普通はそうなる」
「まさか…」
「個人的な意見だが、恐らくエヴァで最も視聴者が幸せなまま終わることが出来た映像作品はこの「春エヴァ」だ」
「???」
「何しろ「続きがある(まだ終わってない)」ってことは、「いつかどこかにあるのかも知れない(現実には決して存在しない)幻の最高のエンディング」を夢想し続けていられるからだ」
「何を言ってんだよ」
「確かにネルフ本部が急襲されて無辜の一般職員の死体の山を築く凄惨な映画だ。火炎放射器に合わせて悲鳴が上がる場面なんて悪趣味の極みだ」
「まあな」
「ちなみにこれらのシーンにも元ネタがあるんだが」
「…もういいよ」
「それでも復活したアスカの大立ち回りやら「さあこれから!」と興奮させてくれる映画になってる」
「うん」
「正に『一番観たかったエヴァ』がそこにあったんだから、時ならぬエヴァブームの再来さ。みんなこれでもかと考察を再開し、キャラに萌え、数か月後に迫った「完結編」にいてもたってもいられず、ビデオテープを再生するんじゃなくて『劇場に通い詰めた』んだ」
「あ…」
「その知人は学生時代の貧乏生活だったのに4回も劇場に行ったらしい。熱心なファンはそれどころじゃなかっただろう」
「だろうな」
「アメリカ人は「スター・ウォーズ」ブームの時は新作が公開されるたびに20回や30回は普通に観に行ってたらしい」
「HAHAHAHAHA…」
「「アニメなんぞ」と最初から馬鹿にして、しかもスキャンダルまで起こしてくれちゃってと怒り心頭だった東映の関係者はビックリ仰天だよ」
「あんなに怒ってたのに…って怒るのは当たり前か」
「ぶっちゃけこんなに人気コンテンツになったのは「分割公開」だったからだ。真の結末を先延ばしにしたからこそ、明るく終わり、先に期待が持てた」
「かもな」
「しかし、関係者はそうは考えない」
「ほう」
「良く考えてみろ。これ「前編」…いや「予告編」なんだぞ」
「はあ」
「普通に考えれば「同じ人数」が「本編」も観に来ることになる」
「あっ!」
「つまり、1本の映画が2本になったことで「倍の収入」を齎すことに気が付いたってわけ」
「あ、悪運が強い…」
「ただまあ、『先の期待』が興行収入を押し上げてたのは紛れもない事実。この数字観てくれ」
興行収入
春エヴァ 18億7千万円
夏エヴァ 14億5千万円
「…減ってる…」
「そう。春エヴァを何度も観てたリピーターは夏エヴァはリピートしなかったみたいだな」
「…まあな。食欲なくなるし」
「それでも倍になったのは間違いない。いきなり完結してたらどっちかが無かったってことだから」
「とりあえず、エヴァそのものについて片付けておこう。夏エヴァ以降、エヴァと言うコンテンツは10年ほど休眠することになるからな」
*****
大月俊倫は「あまり言うとネタバレになっちゃうんですが(笑)12年前の『エヴァ』では、あの頃の社会状況や庵野さんの内面の問題があったりして、 特に劇場版は世界が破滅して、シンジとアスカだけ生き残るという破滅的な形で終わりましたから、あの続きはありえないんですよ」とシンジとアスカのみが生存との製作側の認識を示している[7]。
*****
「おいおい、公式アナウンスで「庵野の内面の問題」ってハッキリ言っちゃってるぞこれ」
「言われんでも状況証拠から丸わかりだが。個人的に注目して欲しいのは、いみじくも「社会状況」が関係してる言質にもなってるってことだ。エヴァは「ノストラダムス・世紀末アニメ」なんだよ」
*****(改行引用者)
同様に劇場版主題歌「魂のルフラン」の歌詞についての及川眠子へのインタビューでも、「みんな死んじゃうから、というので輪廻をテーマにしたんです」、
「魂のルフランはこれで終わりという歌ですから、新しい詞は書きようがないんですね。輪廻を出してしまったら次はないですよ。今度の映画ではみんな死んじゃったんでしょ」、
「打ち合わせの時にみんな死んじゃうんですかって(庵野に)聞いたら、次が出来ないように殺しちゃうんです。もう疲れましたからって(笑)」としている。
*****
「(ぶちぶち)「もう疲れました」…って何だよそれは。「次が出来ないように殺す」だと!?」
「ここだけ読めば「なんという自分勝手な奴」ってことになるわな」
「当たり前だ!こんな程度のものにみんな夢中になってたってのか!」
「ちなみに「魂のルフラン」はあれだけの名曲なのに、「春エヴァ」が「夏エヴァ」と被るのでソフト化されていない関係上居場所を見失ってしまい、素直に発売された映像コンテンツだけ観ると一回もエンディングとして観ることが出来ない」
「何をやってんだ」
「夏エヴァことEOEは別のエンディングがあるからな。ただ、オタク第1世代である庵野監督の言葉は額面通り捉えることはできん」
「何だと?」
「元々あまりインタビューでありきたりのことは喋らないキャラクターなんだよ。「新世代クリエイター座談会」なんかに呼ばれても他の人がみんな夢とやる気を語ってるのに一人だけやる気なさそうに冷めたことばかり言ってたりする」
「天邪鬼な…」
「それでいて誰よりも熱い作品を作るからな」
「…こりゃアンチがいるのも分かるわ」
「内容については踏み込まずに周辺状況だけを駆け足で観てきた。次はエヴァを巡るアニメ言論界状況を」
***
・「新世紀エヴァンゲリオン」は「とにかく格好いい」「興奮する」シチュエーションをひたすら並べ立てている
・その為には設定や統一感すら犠牲にする
・元は「連続するストーリー」にする予定すらなかった(?)
*****
・とにかく情報を大量にぶち込む。意味はどうでもいいから(例)マルドゥック機関、ネオパン2000、ガフの部屋)
・よく聞いてないと分からん用語を絶妙に配置する(例)使徒、セカンドインパクト)
・ダブルミーニング、見立て用語を多用する(例)ATフィールドは人の心の壁の象徴、LCLは羊水)
・ディティールが格好いい(第壱話、初号機、弐号機、参号機…)
・敵の正体が不明で、得体がしれない感じ
・戦闘シーンでは重厚で格好いい音楽を流す(低音を効かせる)
・オペレーターが緊迫した表情で「格好良く聞こえる」専門用語を怒鳴る(例:強羅絶対防衛線を突破されました!)
・意味は良く分からんが、「何だか格好いい」用語を使う(例:汎用人型決戦兵器、ヤシマ作戦、人類補完計画、死海文書)
・人類が滅びそうなピンチに陥る
・「とにかくなんか大変なことになってる」感じにする(例)BGMがクラシック)
・感情移入できそうなキャラが機転を利かせて危機を突破する
・ちょっとシリアスもありよ(例)一見明るく見えるミサトやアスカも心の闇を抱えている)
・敵相手、そして味方相手にも「びっくり解説」をする(例)もうエヴァを止めることは出来ないわ!)
・誰か何かたくらんでいそうな雰囲気を出す(例)リツコ)
・「何もかも分かっている」風を装うキャラがにやりと意味深に笑う(例)ゲンドウ、カヲル)
・やっと判明したと思ったら次の新しい「謎」が提示される
*****




