アニメはいつから有料になったのか その8
「…確かに画期的だとは思うが、時代を変えるほどなのか?」
「アニメは極論すれば10分長くなれば製作するための手間暇その他が倍になると考えても構わないジャンルだ。映像作品なら皆そうだな」
「ほう」
「仮に30分アニメを作るのに掛かる手間の「単位」を「1」とするなら、2時間の劇場映画は9乗で512倍だ」
「…何言ってるんだ?」
「例えが大げさだが、要は「長い作品は大変」ってことだ」
「はあ」
「だが、30分単位で作れば細かく分割して作れるし、その部分部分をパッケージで売れる。「とりあえず」始めても何とかなりやすい」
「ふむ」
「何と言ってもテレビ放送枠の問題がある」
「テレビ放送枠?」
「今じゃ劇場映画のエンディングテロップまで全部流すことも珍しくなかったが、昔なんて途中を編集しまくるのは当たり前、エンディングなんぞ流れ始めた時点でブッツリ。すぐに「お茶の間ショッピング」が始まってた」
「だからお前幾つなんだって」
「最初からテレビサイズで作られていればそういう心配する必要も無い」
「分かったがテレビサイズのメリットの話はいいよ。「タイラー」の続きを頼む」
「すまんすまん。今じゃ珍しくない「ソフトを発売するに当たって、『とりあえずテレビ放送してハクをつける』」傾向の先駆けだったと言える」
「…?何年のアニメだ?」
「1993年。エヴァの2年前だ」
「じゃあ、この時点でテレビアニメ → ソフト化の流れは出来てたんじゃないのか?」
「全く無いとは言ってないだろ。タイラーは特にイベント好きで全国ツアーみたいなこともしてた」
「へー。ご当地ネタを織り込んだ舞台アフレココントみたいなのは現地のラジオ放送されたりしたもんだ」
「よく知ってるな」
「インターネット登場以前のオタクの情報収集能力は侮れんものがある。ちなみに「ライトノベル」と呼んでいい原作の初の媒体からのアニメ化がこれだ」
「へー」
「ちなみにEDではテレビ放送を前提としていない露出度の高い女性のイラストだったんで放送中に抗議を受けて差し替えられるというちょっとした事件を起こしたりもしている」
「さすがに要らんことばかり知ってるな」
「…と、長年思ってたんだけど、どうも真相は違っててノイズに見える画面エフェクトが問題視されたらしい」
「そうなのか」
「まあ、この辺もテレビへのシフトと言えなくもない。ろむにぃさんの掲示板での情報提供感謝」
「どうも」
「言っとくが当時はまだ「深夜アニメ」が存在していない」
「はぁ!?」
「おいおいしっかりしてくれよ。深夜なんて酔狂な枠に一応は子供向けのアニメ放送するなんてことが始まったのは90年代後半に入ってからだぞ」
「…じゃあ、何時放送してたんだよ」
「当然『夕方』だ。実質そこしかないからな」
「じゃあ、エヴァも夕方なのか?あの過激なアニメを」
「当然そうなる。金曜日の夕方六時半といえばエヴァの時間だ。当時のオタクには常識だった」
「しかし…問題になるだろ」
「大問題だった。後半に差し掛かる頃には毎週毎週抗議電話でテレビ東京の回線はパンク寸前だったらしい」
「あんなもん夕方にやるから…」
「だから当時は深夜アニメが無いんだって。エヴァの放送は1995年10月4日から1996年3月27日の半年だ。ちなみに1995年は阪神大震災と地下鉄サリン事件の年だ」
「完全に世紀末だな」
「意味不明だが言いたいことは分かる。…話を戻すが、アニメのソフト化の話だ」
「うん」
「今もって滅びてない『販促アニメ』についてはいいな?これは特に幼児向けとなると永遠に滅びないだろう」
「ああ」
「こうして話していて気が付いたが、確かに「テレビアニメのソフト化」現象は90年代にはかなりの程度萌芽がみられるな」
「根拠が揺らいだか?」
「いや、全く」
(続く)