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エヴァ編18 エヴァンゲリオンはありまぁす


最終話3月27日 世界の中心でアイを叫んだけもの


「エヴァンゲリオンは言ってみれば「STAP細胞」みたいなもんだ」


「…何を言ってんだ?」


「あれだ。ユートピアだよ。「常温核融合」とか「不老不死の薬」とかと同じだ。「永久機関」でもいい」


「全く分からん。どういうことだよ」


「つまりエヴァの序盤が見せてくれた『ここまで面白いアニメ』が「STAP細胞」みたいなものってこと」


「?????」


「STAP細胞について最初に聞いた時どう思った?」


「…いや、そんなもん本当にあったら凄いな…と思ったよ」


「だろ?そういうことさ」


「どこがエヴァと一緒だってんだよ」


「普通に考えれば、エヴァみたいな作り方のアニメは成立しない」


「何故」


「持たんからだ。どう考えてもあのクオリティで毎週26話作れる訳が無い」


「…しかし、アメリカのテレビドラマは映画みたいなクオリティで全話作ってるぞ」


「派手なSFXなんかはそうだわな。しかし、入り組みまくった謎や伏線をあそこまでまき散らして綺麗に回収するなんて『絶対に』不可能にしか見えない」


「まあ…そうかな」


「だから当然、「本気でのめりこんでいいものかどうか」最初は半信半疑だっただろう。確かに表面的には熱狂していた様に見える。オタク第1世代ってのは「みっともなく見える」ことを何より嫌うから、本来なら「本気で夢中になってる」ポーズを見られることを嫌いそうなもんだが、「本気で夢中になってることを装う」様に振る舞ったとも言える」


「あー面倒臭い」


「アニメをこんな作り方するなんて、正に夢みたいだ」


「はあ」


「しかし徐々に「もしこのまま最後まで駆け抜けたなら…これは凄いことになるぞ!」という予感も芽生え始める」


「…ほお」


「どうしてそんなにすごいかと言えば「絶対に成立しない」はずの夢だったからだ。言ってみれば「不老不死の薬が見つかった!」みたいなもんだ。最初は「そんな都合のいいことがあるか」と半信半疑だけど、状況証拠から本当に間違いないらしい!となればそりゃ熱狂するだろ」


「…その論理は分からんでもないが、「そこまで面白いアニメ」ってそんなに成立困難なものなのかね。面白いアニメくらい幾らでもあるだろ」


「しゃーない。これを解説せんといかんのか」


「何だよ」


「いいか?面白いってのは、「辻褄が合ってる」とか「一応ストーリーが分かる」とかそんなんじゃ駄目なんだよ」


「はあ」


「そうだなあ。例えば密室殺人が起こったとする」


「またミステリかよ」


「一番分かりやすいからな」


「それで?」


「分かりやすいんで密室殺人にするが、絶対不可能にしか見えない事件が起こった!どう解決するか」


「はあ」


「そこで『実はこうでした』 → 『はあなるほど』だけじゃ駄目なんだよ」


「駄目ったって…どうしろってんだ」


「これは「辻褄が合ってる」とか「作品としての体裁を満たしてる」とかそういう最低の最低の最低レベルの話であって、その上でどう『面白くするか』がカギなんだ」


「…面白いかどうかなんて…個人の感じ方だろうが」


「いや違うね。間違いなくそこには「セオリー」は存在してる」


「セオリー…」


「頭を使っている以上、どんなにニブい視聴者であってもあれこれ予想はする」


「まあ…そうだろう」


「この『予想』を“遥かに”越えてないと駄目なんだ」


「はあ」


「勿論、それでいてルール違反を犯さずにだ。犯したとしても「あり」と感じさせる工夫が必須だ」


「面倒臭いな」


「そりゃ簡単に面白い話なんて出来んさ。ただ、「構成」で迫ることは可能だ」


「また構成かよ」


「大事だって。例えば「相手を崩す」ことでガードを下げる」


「???」


「柔道や相撲と同じだ。がっしり構えてガードを固めてる相手には技なんぞ掛からん」


「具体的に言ってくれ」


「仮に『実はセカンドインパクトというのはね…』と解説を始めたとしてもちょっとでも矛盾を感じたりしたらそれまでの「絶対的な信頼」は音を立てて崩れ落ちるだろう」


「絶対的な信頼って…大げさな」


「大げさじゃないんだって。だからテレビ版ではそこから逃げた。結末をまともに描かないことで「真相とやらも大したことは無かった」と思われることを避けたんだ」


「まさか」


「だからガードを崩す。そこに叩き込めばいい」


「ガードって何だよ」


「オレの生涯ベスト1映画は『ターミネーター』だ」


「え?あのB級SFの?」


「ああそうさ」


「せめて「2」じゃないのか?」


「ここでは炎上するから2の悪口は言わん。とにかく『ターミネーター』は最高だ。序盤から中盤に掛けて、追いかけてくるマッチョ男が実は未来から来たロボットである…という荒唐無稽そのものの「真相」が明らかになる下りが素晴らしい」


「どんなんだっけ?」


「未来から2人やってくるのがミソでな。一人はマイケル・ビーン演じるカイル・リース。そしてアーノルド・シュワルツェネガー演じるターミネーターT800だ」


「そうだったな」


「保護対象となるサラ・コナーを車に押し込めて激しいカーチェイスをしながら、正にその真っ最中に「あいつは未来から来た殺人ロボットで、自分はそれを守りに来た未来戦士だ」ってな説明をする」


「…そうだっけ」


「何しろ激しいカーチェイスの真っ最中だから観てる側は「いいからちゃんと前見て運転してー!」という感じでハラハラドキドキしっ放しだ。正にこの「意識がとてもじゃないけど集中できない」シチュエーションの真っただ中で解説するから「いいから!分かったから!」と納得させられてしまうわけだ」


「…なるほど」


「未来から来た殺人ロボットだの、素面しらふでそんなヨタ話聞かされたら「アホか?」としか思えないだろ」


「そうかも」


「こういうのが「ガードを下げる」方法だ。意図的なマルチタスクで観客の理解力を下げて、そこに超重大な秘密をぶっこむ」


「…なるほど」


「まあ、エヴァは元々謎についてもちゃんとした解決なんぞ持ってないし、結局「何がどうなればいいのか」の具体的指針も何も決まってないからやりようは無いんだけどさ」


「終わり方の話をしたな」


「ああ」


「映画『ターミネーター』の構造は恐ろしくシンプルで力強い。要は追いかけっこだ」


「…いや、それは単純化しすぎだろ」


「そんなことは無い。だから面白い。ちょっとここからネタバレになるので知らない人はすいません」


「1984年の映画だぞ。エヴァの11年前、今から30年前だ。大丈夫だろ」


「ふん。とにかくこの手の「怪物」映画のラストってのは「怪物をどう倒すのか」が一番のポイントな訳だ」


「それは分かるけど」


「いや、分かってない。ただ倒すんじゃなくて、物語的には「針の糸を通すように」倒さなくてはならんのだ」


「どういうこと?」


「恐らくマシンガンとか巡航ミサイルならT800は倒せると思う」


「…そりゃな」


「けど、それじゃ駄目で、主人公たちが苦心惨憺した挙句にどうにかこうにかやっとこさ倒した…良かった!という形式を「無理なく」演出していなくてはならん。一流のエンターテインメントってのは作者と消費者の知恵比べさ」


「もっと具体的に」


「結局ターミネーターは全身火だるまになって人間の外見を完全に失い、骨組みだけになっても尚追いかけてくる」


「ああ。あの安っぽい動きの」


「みんなあれストップモーションアニメだと思ってるみたいだけど、実際にはフレーム外から人の手で動かしてる。そんな予算無いからな」


「そうなんだ」


「クローズアップのスモークにはタバコの煙を吸い込んで「ふ~!」っとやってるくらいの低予算映画なんだぞ?流石はロジャー・コーマン門下生だ」


「…」


「この『炎の中から立ち上がる骸骨』ってのがキャメロン監督のこの映画のキーとなるビジュアルイメージなんだからこの状態になったターミネーターのアクションは欠かせない。それはともかく、とにかくしつこいターミネーターは遂にカイルの自爆同然の突撃作戦によって相打ちとなる」


「あれは泣けるな」


「ところが、上半身だけになったターミネーターは尚腕で身体を引きずりながら迫ってくる!」


「あれはゾッとしたぜ」


「そこでプレス機を作動させて押しつぶすことでやっと倒すことが出来た訳だ」


「…ちょっと分かって来たぞ」


「カイルは工場に逃げ込んだ際に、「音で追跡されない様に」電源を入れてるし、逃げる途中でちゃんとプレス機をボタンで誤作動させる場面を入れて伏線を丁寧に撒いてる。余りにも見事だ」


「なるほど」


「この場面に至っては「敵ながら天晴あっぱれ」じゃないが、そのしつこすぎるターミネーターの根性にも拍手したくなる。それを尚どうにか倒すことでやっと終われるんだ」


「なるほどな」


「いいか、ただ「怪物を倒す」というごく単純な展開であってすら「映画としてちゃんとやる」ってのはこれくらい大変なんだ。ましてや一回ネタバレしたら興ざめになる「ミステリ的な謎解き」を人類の存亡をかけてテレビアニメでやろうってんだぜ?」


「…すごいな」


「不可能だ」


「いいきるなよ」


「事実出来なかっただろうが」


「それは…」


「もしもやるんだったら…それこそ凄まじいばかりの考証・構成に裏打ちされた綿密な設定と展開、そして…」


「そして?」


「それを「演出的に」納得させうるだけの恐ろしいばかりの工夫、演出方針が必要だ」


「む~ん」


「百戦錬磨のオタク仙人みたいなのがゴロゴロいるオタク第1世代は、エヴァの序盤に片鱗に触れただけで「この物語をしっかり終わらせるためには」それくらいが必要なことは即座に勘付いたはずだ」


「そうなのか」


「何だかんだ言ってもオタクを名乗るからには映像体験が豊富だ。この時代は特にな。特撮映画も観るのは勿論だが、ミステリもSFも読む。古今東西の名作は頭に入ってると言っていいだろう」


「…だからこそ熱狂したと」


「そういうことだ。だが、あの最終回を受けてオタクたちが激怒したのはこの「期待」を裏切ったからじゃない」


「じゃあ何だ」


「オタクの社会的地位の逆転のサクセスストーリーだよ」


「何だって?」


「アニメ新世紀宣言の再現だ。確かにオレたちゃクズかも知れない。一般人のご立派な皆さんに比べればカス同然だろう。しかしな!世の中には凄いものってのはあるんだぜ!それはアニメだ!このアニメを見ろ!こんな物凄いものがオレたちの仲間が作ってるんだぜ!今まで散々コケにしてくれた一般人ども!目をむいてひれ伏せ!ひざまずけ!…ってな感じだった」


「…分からん」


「何故分からん。痛快だろうが」


「エヴァが一般人が見てすら面白さに圧倒されるアニメだ…ってのはまあ、いいとしよう」


「おう」


「しかしそれは単にエヴァがアニメとして作品として素晴らしかったってだけで、それを「ただ観てるだけ」のオタクは別に偉くもなんともないだろ。何を一緒になって偉そうにしてんだかわからん」


「…お前、痛いところを衝くなあ」


「いや、偽らざる感想なんだが」


「少なくとも当時のオタク第1世代はそうは思っていなかった。いや、実は思ってはいたんだが諦めていた。元よりそんなことは承知の上だったんだ」


「はあ」


「しかし、それでもしいたげられてきたアニメが実は素晴らしいものだったんだ!と世間に見せつけてやる!というだけでも痛快じゃないかってなもんだ。それまでは変態だのネクラなオタクが観るもんだと思われてたんだから。オタクの頭の中にはウェーイ系のサーファーやら、メガネの一般人たちが


「私たちが間違っておりました。あなたたちオタクの言う通りです。アニメと言う物は素晴らしかったのです」


…と土下座するビジョンがあったことだろう」


「む~ん」


「ところが、エヴァは後半に入って明らかに迷走し始める」


「そうだな」


「だが、ここまで依存してしまってるオタクとしてはもう引っ込みがつかないから「衝撃のトラウマ展開」とか「過去に例のない思弁的アニメ」と更に持ち上げまくる」


「引っ込みがつかないって…」


「とはいえ、流石に25・26に至って絶望する」


「はあ」


「単に面白いのつまらんのではなくて、アニメそのものの社会的地位を大逆転するための希望の光だったはずのあのエヴァンゲリオンが…史上最高の最終回で全世界の愚民どもをひれ伏させてくれるはずのあのエヴァンゲリオンが…よりにもよってまともにストーリー展開をすることすら拒否するトンデモアニメだっただって!?…」


「あーあー…」


「裏切ったな!ボクの気持ちを裏切ったんだ!…って訳」


「そういうことか…」


「何しろこれまでドヤ顔で“まともな大人ならまずやらん、ファン目線の作り込み”を誇って来たのに、25・26話は“まともな大人ならまずやらん、いい加減で適当なでっちあげ仕事”…少なくともそう見えた…だったんだから面目も丸つぶれだ」


「ああ…そういうことか」


「直接聞いた訳じゃないが、周囲の人間にエヴァを宣伝しまくったのに、最終回に至って「お前に勧められて観たのにどういうこと!?」と言われて大恥をかいたオタクも多かったみたいだ」


「そりゃ逆恨み…と言いたいところだが、まあまともな最終回を放棄したのは事実だからある程度言い分は通ってるわな」


「可愛さ余って憎さ百倍。彼らの多くはここから大展開して「エヴァバッシング」派に転向することになる」


「その知人とやらの感想は?」


「アンチガイナックスだったからな。『最初から詐欺だと分かってて用心した積りだったのに、すっかり騙された』んだってさ」


「なるほどね。じゃあ「そんな面白いアニメ成立する訳が無い」と見抜いてはいた訳だ」


「そう。ただ、余りにも自信満々に堂々と「謎」を展開するもんだから、「幾らなんでもここまでやっておきながら真相を何も考えて無いってことは無いだろ」とすっかり信じ込んでしまったらしい」


「あーあ」


「用心が足らなかったね」


「オタク第1世代については分かったけど、2・3以降の感想はどうだったんだ?」


「キリがいいんで次のチャプターへ」



・「新世紀エヴァンゲリオン」は「とにかく格好いい」「興奮する」シチュエーションをひたすら並べ立てている

・その為には設定や統一感すら犠牲にする

・元は「連続するストーリー」にする予定すらなかった(?)


*****

・とにかく情報を大量にぶち込む。意味はどうでもいいから(例)マルドゥック機関、ネオパン2000、ガフの部屋)

・よく聞いてないと分からん用語を絶妙に配置する(例)使徒、セカンドインパクト)

・ダブルミーニング、見立て用語を多用する(例)ATフィールドは人の心の壁の象徴、LCLは羊水)

・ディティールが格好いい(第壱話、初号機、弐号機、参号機…)

・敵の正体が不明で、得体がしれない感じ

・戦闘シーンでは重厚で格好いい音楽を流す(低音を効かせる)

・オペレーターが緊迫した表情で「格好良く聞こえる」専門用語を怒鳴る(例:強羅絶対防衛線を突破されました!)

・意味は良く分からんが、「何だか格好いい」用語を使う(例:汎用人型決戦兵器、ヤシマ作戦、人類補完計画、死海文書)

・人類が滅びそうなピンチに陥る


・「とにかくなんか大変なことになってる」感じにする(例)BGMがクラシック)


・感情移入できそうなキャラが機転を利かせて危機を突破する

・ちょっとシリアスもありよ(例)一見明るく見えるミサトやアスカも心の闇を抱えている)

・敵相手、そして味方相手にも「びっくり解説」をする(例)もうエヴァを止めることは出来ないわ!)

・誰か何かたくらんでいそうな雰囲気を出す(例)リツコ)

・「何もかも分かっている」風を装うキャラがにやりと意味深に笑う(例)ゲンドウ、カヲル)

・やっと判明したと思ったら次の新しい「謎」が提示される

*****


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