表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/94

エヴァ編13 終わる世界


「エヴァスタッフ…というか、庵野監督たちはとにかく与えられた準備期間を目一杯使って「趣味的」フィルムを作りまくった」


「…だな」


「作画の手間を掛けたアニメってのはもうOAVが登場してから長いんでそれなりにある」


「うん」


「ただ、画面上に映り込むすべてに気を配るレベルの「本気アニメ」ってのは早々お目に掛かれない」


「そうなのか」


「第1話は珍しく政府の軍人(?)みたいなのが登場するんだが、吸い殻が山の様に積み上げられた灰皿の隅っこに「NERV」という文字が書いてある」


「…はぁ」


「劇場版になるにあたって4:3画面が16:9にカットされた関係で映ってないみたいなんだけど、こういう「手を抜かない」描写って心に響くんだよね~…だって」


「…灰皿に文字書いてりゃいいのか?」


「これはもうフィーリングだろうな。少なくとも「大人」はそんなアニメの作り方はしない。キリが無いからな」


「大人ねえ…」


「リアルロボットアニメこそないが、もうアニメーションは産業として成立してるから日々放送はされてる。ただ、スケジュールを守るのに精いっぱいな現場が大半。クオリティが売りのはずのOAVですら「どうにか発売日に間に合わせました」くらいのも沢山あった」


「…90年代だよな?」


「いつだって同じさ。しかし、エヴァはそうじゃない。「本当にやりたいものをやってる」ことが伝わってくる。だから気合も入るし手抜きもしない」


「…それは美しいとは思うけど、別に好きでもない作品もしっかりやり切ることだって大事だぞ。社会人として」


「ガイナックス編で紹介した表には載せて無かったけど、ガイナックスは正にその「利益優先」をかなりの程度経験してきた会社でもある」


「そうなのか?」


「庵野監督が利益度外視で「トップをねらえ!」みたいなのを作って暴走しちゃうから、その穴埋めのためにアニメの下請けだの仕上げ請けだのゲームだのをやってきた訳だ」


「ふん」


「よしあしの問題じゃなく「初期衝動」は失ってたと言える。子供の理論と言われるかもしれないがな」


「それで?」


「うん。オレは「26本オムニバス説」を採る。確かに裏設定もあるけど、一応はちゃんと畳もうと思ってたと思うんだ」


「あのぐっちゃぐちゃになった「謎」に全部決着付けるつもりだったっての?」


「そもそも「謎」そのものをそれほど深刻にとらえて無かったんだと思う。だから「何とかなるさ」くらいで進めてた」


「無計画な…」


「要するに「その回でベストな演出」の結果に過ぎなかったってこと。「第3話くらいだったら「謎」がこれくらいあった方がそれっぽいだろ」みたいな」


「はぁあ!?何言ってんだよ」


「オレは間違いないと踏んでるんだがね」


「第3話くらいなら…ってそんな馬鹿な!」


「例えば劇中で最大の謎の1つ…ということになってる「セカンドインパクト」の真相だが」


「ああ」


「観てて気付かないのか忘れてるのか知らんが、第7話の冒頭でリツコさんがあっさりとバラしちゃう」


「…えええええぇぇぇええ!?そ、そうだっけ!?」


「ソフト持ってる人は確認してくれ。間違いないから」


「ほ、ホントだ…どうなってんだこれは」


「色んな意味で「こう言うアニメ」なんだってエヴァは。ただ、エヴァンゲリオンと言うアニメは14~16話あたりから遂に思弁的になっていく」


「…そ、そうだな」


「恐らくそれまでのエピソードでオタクとして持っていた知識・こだわりその他「即物的に興奮する」展開をこれでもかこれでもかとやり倒して、その意味ではかなり満足出来たんだと思う」


「まあ…そうかな」


「ところが、ここまでやって来てはたと気付いてしまった」


「…何に?」


「これまでの展開は「面白そうに見える展開・演出」でバリバリ進めてきた。そしてそれは上手く行っていた」


「世間じゃひっくり返るほどのエヴァブームだもんな」


「だが、全部やり切ったのにちっとも心が満たされない」


「…なんだって?」


「そもそもアニメにおける「表現」とは何なのだろうか?」


「…もしもーし」


「というかそもそも「表現する」とはどういうことなのだろうか?」


「おい、何を言ってんだよ」


「「アニメを作る」ことに真剣に向かい合い過ぎたばかりに、「そもそも表現するとは何か?」という「根源的な疑問」にまで到達してしまった訳だ」


「…危険だ」


「そう。危険だ。そこで見えてきた一つの真実として「表面的な情報量・パロディなんかは「本当の表現」じゃない」…という境地に到達したんじゃないかと」


「…それじゃあ前半でやってきたことの否定じゃないか」


「そういうことになる。実際内容が思弁的になってから特撮リスペクトなディティールだの、作画だのは見られなくなって行くだろ?」


「あ…」


「そもそもが時間も予算も手間も無いからやろうったって出来ないのが真相ではあるんだが、それはこの当時の監督の思惑と偶然にも一致した」


「監督の思惑って何だよ」


「「本当の表現」とは、嘘偽りなく自分をさらけ出すことであり、ありのままの自分の状態で手が勝手に動くままに描くことだ!…というものかな」


「…それで、ロボットアニメなのに訳の分からんイメージシーンが延々続いてず~っとナレーションが入り続けるみたいな奇妙なアニメになったと」


「そう。25話の非難として「サボりだ」というのがあるが、少なくともそれは当たらないと思う。あの当時の庵野監督にとってみれば、あの状態こそが「本当の表現」なのである!という信念のもとにやってる。悪意はない」


「悪意が無いったって訳が分からんもん」


「極限まで考え抜いて技を極めた人が「悟りを開いた」かの様に一種の幼児退行を起こすみたいな逸話は世界中にある。中島敦の「名人伝」は流石に中国古典だけあって「読むドラゴンボール」みたいなトンデモな小説だが、最後に至って当代一の弓の名人は弓を見てもそれが何なのか分からなくなる…というところまで技を極めることになる」


「何を言ってんだか全然分からんぞ。何で弓を見て何だか分からなくなってんだよ。下手になってる…っつーかそれ以下だろ!意味がないじゃないか!」


「そこは中国4,000年の…」


「やかましいわ!」


「仏陀…お釈迦様は荒行の果てにリラックスした瞬間に悟りを開いたそうだ。拘りまくった挙句に拘らなくなって何かに「開眼」するって論理は分からんでもない」


「どうしてそういう話になるんだよ」


「内容に踏み込まんとは言ったが、特にアスカは執拗に「本当の自分を見られる」ことを精神的に拒否する。あれはオタク第1世代の心情そのものだ」


「アスカがオタクだと」


「要するに「結局アニメや特撮しか観てこなかった」という自分がそこにあることを徹底的に恥じてるんだな」


「それを登場人物にまんま語らせてるってのか?作品の私物化だ。公私混同だぞ」


「言うまでもない。だが、やってることは基本的には序盤や前半と変わらない。真剣に「表現しよう」としていることはね。ただ、やり方、アプローチが真逆なんだ」


「真逆」


「前半は徹底的に情報やらディティールやらシチュエーションでごってごてに「理論武装」し、パロディやオマージュは勿論、ありとあらゆる虚飾を塗りこめて画面を作った」


「ふん」


「それこそが「表現」としてベストだ!と信じるからこそそうした訳だ。そしてその「真剣度合い」は確かに視聴者に伝わった」


「そうだな」


「ところが、余りにも「表現とは何か」を考えつくしてしまったため、その行き着く先として「一切の情報もディティールも理論武装も無く、パロディやオマージュどころか一切の虚飾を排除した「本当の自分」をぶつける、「ありのままの自分」や「嘘偽りの無い正直な心情」を吐きだして見せつける」…という「表現形式」に行き着いてしまう。それ自体が目的化し始めるんだ」


「…」


「エヴァは前半が面白いが後半が意味不明ってのは気持ちは分かるが現実的じゃない。後半に至る真剣な思いがあったからこそ前半のディティールがあるのであり、前半を彩るクリエイター魂が後半を招いたんだ」


「納得できねえよそんな話」


「言ったろ?『パンツを脱いで踊って見せた』って」


「はあ」


「これは時代背景もある。世代の考え方の差というか」


「またオタク世代論か」


「そうさ。よりにもよってオタク第1世代が「ありのままの自分をさらけだす」ことをコラムや評論でならともかく「作品内の表現として」行うなんぞ、その凄まじさは『パンツ脱いで踊る』くらいじゃ表現が追いつかない。それくらい物凄いことだったんだ」


「…全く分からん」


「分からんか」


「分かるもんかね。それがどうしたとしか思えん。何といわれようとこちとらアニメ観る程度の事はどうとも思ってない。ましてや理論武装だの証しを立てるだの、果ては「命を賭ける」とか何のこっちゃだ」


「…そうだなあ、あえて強引に例えるならば「一番大事にしていること」を打ち捨てて見世物にしたんだ。…反発必至で例えるならば、一番大事な人をボコボコにするのを見世物にしてる様なものだ」


「何を言ってんだ?」


「本当はもっと過激な例えもしてたんだが、流石に訴えられたりしたら嫌なんでね」


「大丈夫か?」


「生放送でダイナマイトで自らの頭をふっ飛ばして見せるというか…」


「はぁ?」


「現代美術でもあるだろ?「表現」について考える余り、「写実的な絵」を否定して「抽象的な絵」に傾倒するくらいならまだしも、便器を買ってきて真っ二つにしたものを「作品です」といって展示したり、果ては自宅をダイナマイトで爆破してその「破片」を展示したり」


「…バカじゃん」


「そう。バカだ。ただそのバカさというのは、序盤の恐ろしいほどのディティールを画面に叩き付けている情熱パッションと全く同根のものなんだ」


「…もうちょっと上手い例えはねえのかよ」


「そう…そうだなあ。あれだマジシャンが仕込みネタを全部使ってしまった」


「ふん」


「道具はもとより、出し物そのものも全部使い尽くしてもう何も無い」


「ほう」


「仕方が無いから、とにかく目立つことをしてお客をギョッとさせようと思い詰めた」


「ふむ」


「そこで全裸になり、パンツもぬいでお客の目の前にちんちんを思いっきり見せつけた!」


「…は?」


「もう自分にはこうするしかありません!驚いたでしょ!…って感じ」


「いや、驚くっつーか…余りの事にドン引きだよ」


「でも、あの最終回って結局そういう事じゃないか。お客も余りの事にドン引きだ」


「…はあ」


「表現することを突き詰めればいつかはこうならざるを得ない。大抵は理性の方が勝つんだが」


「…エヴァの最終回に至る崩壊は必然だったってのか」


「まあ、そうなる。実際問題、「物理的」な問題からも逃れられんからな」


「物理的って何だよ」


「アニメ作ってる以上、どれだけ根性があろうが気合やら情熱があろうが、物理的に絵が無いものを放送することは出来ん」


「そりゃそうだ」


「実際のスケジュールを観てみよう」


第壱話 1995年10月4日 使徒、襲来

第弐話 10月11日 見知らぬ、天井

第参話 10月18日 鳴らない、電話

第四話 10月25日 雨、逃げ出した後

第伍話 11月1日 レイ、心のむこうに

第六話 11月8日 決戦、第3新東京市

第七話 11月15日 人の造りしもの

第八話 11月22日 アスカ、来日

第九話 11月29日 瞬間、心、重ねて

第拾話 12月6日 マグマダイバー

第拾壱話 12月13日 静止した闇の中で

第拾弐話 12月20日 奇跡の価値は

第拾参話 12月27日 使徒、侵入

第拾四話 1996年1月3日 ゼーレ、魂の座

第拾伍話 1月10日 嘘と沈黙

第拾六話 1月17日 死に至る病、そして

第拾七話 1月24日 四人目の適格者

第拾八話 1月31日 命の選択を

第拾九話 2月7日 男の戰い

第弐拾話 2月14日 心のかたち 人のかたち

第弐拾壱話 2月21日 ネルフ、誕生

第弐拾弐話 2月28日 せめて、人間らしく

第弐拾参話 3月6日 涙

第弐拾四話 3月13日 最後のシ者

第弐拾伍話 3月20日 終わる世界

最終話3月27日 世界の中心でアイを叫んだけもの


「栄光の軌跡ってところか」


「アニメのエピソードは作るのに6週間かかる。逆算すると仮に「ラスたち」が最終回“のみ”という非現実的な仮定をしたとしても、20話、2月14日の段階で方針が固まっていないといけない」


「いや、方針が決まってもそれだけじゃダメだろ」


「当然だ。絵コンテはかなりの腕っこきが朝から晩まで掛かっても一週間は掛かる」


「え?そんなに掛かるのか?」


「今のアニメの平均的なカット数は300オーバーだ。絵コンテなんて俗にいう「まるちょん」で構わないとはいえ凄まじい作業量になる。ましてや「放送出来ればいい」レベルのアニメじゃない」


「ま、そうだな」


「脚本まで考えてこれに仮に2週間掛かると仮定すると1月末には最終回の準備が全て出来上がっていないといけない」


「…ギリギリだな」


「アニメ業界的なことを言うと「次回予告」が必要になるから、実際の放送の一週間前には出来上がっていることが望ましい」


「あ…そうか」


「本放送を観ていた人なら分かるが、業界的に一番苦しい「次回予告」は凄い勢いで簡略化されていき、一枚絵だのレイアウトだの果ては脚本をそのまま映すみたいなヤケクソ状態になっていく」


「だったな」


「しかもラスたちが最終回のみ…という前提でこれだ。仮に「最終決戦」を21~26みたいに大々的にやりたいとなったら…」


「不可能だ」


「ああ。何しろ放送開始時点で完成していたのが6話まで。未編集8話までと言う有様だ。全て完成した状態で本放送迎えて欲しいというのは幾らなんでも酷だろうが、それにしてもそれこそ「未完成部分がラスたち21~26話だけ」だったと仮定しても、『それのみを放送中に作らなければならないスケジュールだったとしても』ちょっと現実的じゃない」


「ああ」


「現実にはそれどころか『最終回をどうするのか』の方針すら決まっていない。決まっていたとしても地獄のスケジュールだと言うのにだ」


「あああああ…」


「あの最終回は当然ながら実際に放送される前には出来上がっているんだが、ならば作る側の中でああいう方針転換がいつごろされたのか」


「いつなんだ」


「確かなことは分からんが、少なくとも「このまま際限なく盛り上がり続けて八方丸く収まる」とは放送開始時点で素直に思えるほど楽観的にはなれなかっただろう」


「…そこから!?」


「それこそ最序盤である6~8話あたりまでを作るのに一体どれだけの時間とマンパワーが掛かったと思ってんだ!?ってなもんだ。普通に考えればそれに数倍する「歴史的作品のフィニッシュ」を飾ろうってんだから同じか、もっと多くのリソースを注ぎ込みたい。ただ、もう放送は始まってしまってる。このままだと最後まで作ることそのものが危うい…」


「…そんな綱渡りしてたのかよ」


「現実は非情だ」


「スケジュール管理がなってないだけだ」


「放送前に乱れ飛んだデマその他を総合しても「第19話」にとりあえず全てのリソースを集中させて、残りの話数は斬り捨てる…ということがかなり早い段階で決定していたと思われる。ナディアの再来だ」


「19話?」


第拾九話 2月7日 男の戰い

第弐拾話 2月14日 心のかたち 人のかたち

第弐拾壱話 2月21日 ネルフ、誕生

第弐拾弐話 2月28日 せめて、人間らしく

第弐拾参話 3月6日 涙

第弐拾四話 3月13日 最後のシ者

第弐拾伍話 3月20日 終わる世界

最終話3月27日 世界の中心でアイを叫んだけもの


「インターネットすらない時代だが、かなり広く流通していた情報らしい」


「19話ってーと」


「2月7日放送の最強の第14使徒・ゼルエルが登場し、「シンクロ率400%」で暴走したエヴァ初号機が食ってしまうあの回だ」


「あれね」


「17話でトウジが参号機で使徒に飲み込まれ、18話でダミープラグで暴走した初号機がボコボコにする」


「この辺になると毎回トラウマだよな」


「シリアス全開で正に「観る価値ある」展開ってところだ。19話はその続きで、一旦エヴァを降りたシンジがあれこれあって一念発起して今度こそ自主的にパイロットになる」


「あがるよな」


「ただ、これってある意味19話も掛けてガンダム第1話を描けただけだ…という批判もある」


「いや、そんなことないだろ」


「残念ながらここで少なくとも「ストーリー」においてはエヴァは「敗戦処理」モードに突入する」


「敗戦処理って…」


「スケジュールの関係上、このペースで最後まで行くのは無理だ。「続きは劇場で!」と考えていたかどうかはともかく、この時点で「形式上、ちゃんと放送する(だけ)」方針に転換したとも言える」


「…大人の判断ってところか」


「逆算して8週間前+αくらいにこの方針が決定したとすると、エヴァはもう年越しあたりでは「望む形での最終回」の作成が不可能であったと言っていいだろう」


「そんな段階で…」


「旧劇場場「Air/まごころを君に」は24話から分岐した形を取っている。大して新劇場版「Q」は「破」のラスト、19話から分岐してる」


「そうだな」


「19話がテレビ放送版のターニングポイントであったことを考えると、今度と言う今度は「本来の形」の20話以降が観られるはずだった」


「…そういうことか」


「20話以降をおさらいしてみよう」


第弐拾話 2月14日 心のかたち 人のかたち


「前回のラストで「もうエヴァを止めることは出来ないわ」と語ってたのに冒頭でいきなり止まってる(爆)」


「…」


「思弁的もいいところの回で、電車内イメージとか延々語りモード。これで尺を稼ぐことを更に覚えたんだな」


「表現が悪意に満ちてるぞ」


「16話や14話のそれはいいよ。まだファイティングモードだから。でもこれは完全に引き伸ばしだろ」


「それは…」


「ラストでシンジが排出されて終わるんだけど、最後に直接映ってないとはいえベッドシーンがあったことでPTAが激おこした回でもある」


「…はあ」


「軽くあえぎ声もあったからな」


第弐拾壱話 2月21日 ネルフ、誕生


「謎はてんこ盛りなのに急に前日談ですよ」


「…」


「本放送時には身を乗り出して観ていたリアルタイム組はみんなずっこけたらしい。「そんなことやってる場合か!?あと6話しか無いんだぞ!」…ってね」


「その後20年近く経過しても謎は謎のまんまなんだがね」


「ちなみに「謎の円盤UFO」の「シャドーはこうして生まれた」のもじりエピソードでもある」


「…これもか」


第弐拾弐話 2月28日 せめて、人間らしく


「アスカ脱落回」


「…」


「一応ちゃんとしたエピソードの体を保ってる様にも見えるんだけど、リアルタイム組の感想によると「…そろそろ最終決戦モードに入らなくて大丈夫なの?」と心配してたらしい」


「…心が痛いな」


第弐拾参話 3月6日 涙


「当時のアニメ雑誌のインタビューなどから総合すると、この辺で最終2話のアフレコは終わってたらしい」


「そうなのか」


「ま、絵素材の編集はギリギリまで掛かったんだろうが、今更「超スペクタクル最終回!」に方針転換出来る訳も無い」


「…」


「この23話はエヴァの中でも最も逸話が多い。中でも「大規模セル盗難に遭った」という都市伝説があった」


「…なんじゃそりゃ!?」


「まあ、本当にそんなことがあったら大変だ。要するにエヴァがああなったことに対するカウンターのフォークロアってところなんだろう」


「はあ」


「前半に綾波が爆死し、後半にリツコの告白から大量の綾波培養水槽が開陳される回だ」


「あーあれ」


「20~24話も敗戦処理とはいえ、本来のストーリーと全くかけ離れている訳では無くてかなりの程度エピソードの原型は残っているらしい」


「まあ、そうなんだろうな」


「盗難説によると、素材が足らなくなったので本来24話だったものを後半に持ってきた…んだそうだ。真偽はともかくかなりつめこみ気味のエピソードではある」


「俺は敗戦処理だなんて思わないが、ただ残り3話しかないのに「いつもの調子」なのは疑問だわな」


第弐拾四話 3月13日 最後のシ者


「出たなホモ男(by CDドラマのアスカ)」


「そう。OPにも登場してる謎の少年こと渚カヲル。彼のエピソードも多くて、もっともっと早く登場させる予定ではあったらしい」


「かもな」


「でないと『裏切ったんだ!』セリフが真に迫ってこない」


「うん」


「何故か決定稿前の脚本が少女誌に掲載されたんだが、シンジとカヲルのキスシーンまであったらしい」


「…何のアニメなんだよ」


「ここに至ればもう「ちゃんと終わらない」のはスタッフにも明白になってる。にもかかわらずちょっとでも謎を解明してやろうとするどころか「リリスがどうしたの」「リリンがあれこれ」みたいに謎の用語を増やしに掛かってる」


「やれやれだぜ」


「ちなみにかなーり後になって発売せざるを得なかったこの辺のエピソードのDVDは追加されまくったシーンだらけだ」


「そうなのか?」


「リアルタイム組は勿論、熱心なファンでも見逃しがちなんだがね。「ネルフ、誕生」冒頭のセカンドインパクト描写みたいに単にディティールが細かくなっただけのものもあるが、この24話はカヲルくんが海岸でゼーレの石版と会話するシーンまであったりする」


「おいおい!何だよそれは!そんなのありなのか!?」


「本放送を嫌と言うほど繰り返し観た当時のファンこそ衝撃は大きいだろうな」


「どうでもいいと思ってんじゃねえの?」


「23話の使徒なんて、夏エヴァ風に人体ぐちゃぐちゃ形態に変形する。余りにも印象が違い過ぎるんで、今のDVDだと「本放送版」も選べるようになってる」


「テレビでちゃんとやっとけよ。さもなきゃやるな」


「同感」



第弐拾伍話 3月20日 終わる世界

最終話3月27日 世界の中心でアイを叫んだけもの


「あーあ、遂にこの日が来てしまったか」


「一説によると「テレビ版でちゃんとやるのは無理。劇場版で「イデオン」みたく本来の展開で決着を付ける」という事前情報はかなり流れてはいたらしい」


「イデオンって…死亡フラグじゃねえか」


「とにかく、『衝撃的な最終2話』とされるが、20話の段階からグッズグズになってるんだ。24話の段階に於いてすら「使徒来る → 倒す」パターンで展開してる。もしもやり直すんなら根本的な大手術が必要だろう」


「む~ん」


「…と、いうことで20話以降をおさらいしたが「敗戦処理」であることは分かってもらえたかな?」


「…まあ」


「当事者の気持ちになって考えてみて欲しいんだよ。逆算して年明けあたりにはもう「どう考えても絶対に間に合わない」絶望的な状況が目の前にある」


「悪夢だな」


「ところが世間の評価はうなぎのぼり。上へ下への大騒ぎだ」


「珍しいよな。普通は時代を作るアニメってのは本放送時は視聴率に恵まれないもんだが」


「ある意味それは従来と同じさ。というのはこの時点での人気はまだアニメファンや一部気が付き始めたサブカルの人なんかの「限定的」な範囲に収まっていたからだ。それですらこのフィーバーぶりなんだが」


「…これでもまだ序の口って訳か」


「そういうこと。ただ、『一体どんな物凄いフィニッシュを見せてくれるのか!?』と目を輝かせて期待してくれてるファンには悪いんだけど、目の前のスケジュールを観る限り「作るのがやっと」という有様だ」


「…精神的に追い込まれるな」


「期待が大きいだけにな。控え目に考えても相当テンパってただろう」


「それどころじゃないんじゃないのか?」


「そうかもな」


「オレだったら何もかも投げ出して逃避行したくなるな」


「…そういうこと。終盤に至って登場人物たちはドンドン追いつめられて行くけど、それは制作環境そのものの反映でもあるんだ」


「あはは…はは…フェリーニの『8 1/2』ってか?」


「上手いね。そういうこと」


「これって前代未聞じゃねえの?」


「だからそう言ってるだろうが」


「決めつけは良くないが、結果としてそうなってる以上そんなことも言われても仕方が無いわな」


「エヴァは単なるヒット作じゃない。問題作であり、一種の「事件」だ。10年いや20年に1作しか現れないだろう」


「まあな」


「ぶっちゃけ『最後がワヤになったアニメ』なんて幾らでもある。「そんなのありか」エンドだってオレですら幾つも知ってる」


「イデオンとかバルディオスとか」


「そんなメジャーなのじゃなくて「結末がとんでもない」ことそのものどころか、アニメそれ自体の知名度が低いアニメだって沢山あるんだよ」


「…それで?」


「打ち切りになったアニメは多くが不本意な終わり方をしてる。しかし、自分たちが余りにもこだわりまくったためにスケジュール環境を悪化させ、結果として破綻させたアニメってのは…珍しいだろうな」


「アマチュアならともかく、プロとしては許されんだろ。どれだけ本気で作ってんだかしらんけど。テレビ局が欲しいのは本気で作って破綻したアニメより、適当に作って形式がしっかりしたアニメだ」


「…本当にそう思ってる?」


「当たり前だろ」


「破綻破綻というけども、実はエヴァは決定的に放送事故起こしたわけじゃない。これが話を余計にややこしくしてる」


「放送事故?」


「真の意味での放送事故は23分の放送枠なのに10分しか出来上がってないとか、途中で真っ暗になって何も映らないとか、全く同じエピソードを2回とか8回放送するとかそういうのを言うんだ」


「…ほう」


「エヴァにあれほど怒り狂った人がどうして「機動戦艦ナデシコ」とか「まほろまてぃっく」のラストに怒らないんだ?」


「さあ」


「天まで届くほどの期待をさせておきながら、それを裏切ったから怒ってるんだろうが。期待されていなければそもそも怒りもせんわい」


「じゃあ聞くが一体どうしたらよかったんだ?」


「さあな。オレは天才じゃなくて凡人だから、結末から逆算して小賢こざかしい構成をするのが精いっぱいだ。一応「なんとなく体裁の整ったしめくくり」くらいは考えだせるかもしれないけど、ファンが観たいのがそういうエヴァなのかどうかは分からんよ」


「やっぱり時間が足らなかったか…分割2クール制が当時にあればなあ…」


「いや、どれだけ時間があっても10倍の人員をノーギャラで使えたとしてもエヴァはちゃんと終わることは不可能だっただろう」


「はっきり言い切るじゃねえか」


「新劇場版エヴァの惨状観てみれば分かる。20年の時間と豊富なパチンコマネーでもこんな具合だ」


「…」


「要するに「最終的にどうしたいか」がハッキリしてるかどうかが一番の問題だ。あの結末は明らかに問題のすり替えだ」


「すり替えって何だよ」


「確かに製作状況は絶望的だっただろうさ。しかしそれは決定的な要因じゃない」


「じゃあ何だってんだ」


「「結局どういう結末にしたいのか」の明確なビジョンを決めきれてないことが最大の問題なんだよ」


「ビジョンねえ…」


「キリがいいんでフィクションのテーマについて次回」



・「新世紀エヴァンゲリオン」は「とにかく格好いい」「興奮する」シチュエーションをひたすら並べ立てている

・その為には設定や統一感すら犠牲にする

・元は「連続するストーリー」にする予定すらなかった(?)


*****

・とにかく情報を大量にぶち込む。意味はどうでもいいから(例)マルドゥック機関、ネオパン2000、ガフの部屋)

・よく聞いてないと分からん用語を絶妙に配置する(例)使徒、セカンドインパクト)

・ダブルミーニング、見立て用語を多用する(例)ATフィールドは人の心の壁の象徴、LCLは羊水)

・ディティールが格好いい(第壱話、初号機、弐号機、参号機…)

・敵の正体が不明で、得体がしれない感じ

・戦闘シーンでは重厚で格好いい音楽を流す(低音を効かせる)

・オペレーターが緊迫した表情で「格好良く聞こえる」専門用語を怒鳴る(例:強羅絶対防衛線を突破されました!)

・意味は良く分からんが、「何だか格好いい」用語を使う(例:汎用人型決戦兵器、ヤシマ作戦、人類補完計画、死海文書)

・人類が滅びそうなピンチに陥る


・「とにかくなんか大変なことになってる」感じにする(例)BGMがクラシック)


・感情移入できそうなキャラが機転を利かせて危機を突破する

・ちょっとシリアスもありよ(例)一見明るく見えるミサトやアスカも心の闇を抱えている)

・敵相手、そして味方相手にも「びっくり解説」をする(例)もうエヴァを止めることは出来ないわ!)

・誰か何かたくらんでいそうな雰囲気を出す(例)リツコ)

・「何もかも分かっている」風を装うキャラがにやりと意味深に笑う(例)ゲンドウ、カヲル)

・やっと判明したと思ったら次の新しい「謎」が提示される

*****


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ