エヴァ編05 世代の断絶! ガイナックスとは
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株式会社ガイナックス(英: GAINAX Co., Ltd.)は、アニメーションを主とした映像作品・コンピューターソフトウェアの企画、制作および販売を主な事業内容とする日本の企業。日本動画協会正会員。
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「細かいことを言い出すとキリが無いので、いきなりフィルモグラフィを」
「おお」
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1987 王立宇宙軍 オネアミスの翼(映画)
1988-1989 トップをねらえ!(OAV)
1990-1991 ふしぎの海のナディア(TV)
1991 おたくのビデオ(OAV)
1991 続・おたくのビデオ(OAV)
1995-1996 新世紀エヴァンゲリオン
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「主要なものだけまとめた。ガイナックスと言えばパソコンゲームでも有名なんだがとりあえずリストには入れてない」
「プリンセスメーカーとかだな」
「そうそう」
「王立宇宙軍が1987年…ZZと同じ年か…」
「こうしてみると結構古い映画だ。元は王立宇宙軍だけで解散する予定の時限会社だったんだが、赤字が解消できないからずるずる続けることになる」
「災い転じて福となすのか瓢箪から駒が出るのか…」
「『愛国戦隊大日本』とか『帰ってきたウルトラマン』とかの時代から大学時代の仲間が集って映像制作はしていたみたいだから出会ったのは必然だろう」
「J-POPの歌詞みたいだな」
「トップをねらえ!は日本OAV史上に残る金字塔だ。こういうのがSFマインド溢れる作品という」
「宇宙空間にエーテルが満ちてるって設定だな。確かにこれは凄いわ」
「1日6冊の古典SFを読んでたと自称する岡田斗司夫氏の脚本というだけはある…ということにしておこう。クレジットされてるし」
「…なんか奥歯に物が挟まった様な言い回しだが?」
「当時の同人誌を読んだりしてると裏事情が色々あるみたいでな…まあいい」
「それで?」
「オタクバッシングが頂点であろう1991年からの「おたくのビデオ」発売ってのもいい根性してる」
「当時のオタクの生態を描いたアニメなんだよな」
「ポイントは『オタク第1世代を描いてる』ってところ。後の「げんしけん」は「おたく第3世代」の生態なんだ。これ重要だ。テストに出るぞ」
「何のテストだよ…」
「これまた特に盛り上がるでもないみょ~な味わいのそれでなぁ…。熱い熱い「トップをねらえ!」とはかなり違う」
「おたくにとっての「トップ」ってどうなんだよ」
「そりゃもう大歓迎だよ。タイトルが「エースをねらえ!」と「トップガン」の合成なのはわかるな?」
「何となく」
「俗説だが「バックステージものを描き始めたらそのジャンルは衰退に向かう」と言われてる。要するに「内輪ネタ」に走り始めたってことだ」
「む~ん」
「とはいえ、『コーラスライン』みたいに露骨なバックステージもののロングランだってあるし、漫画に編集者出しちゃうなんてのは80年代のジャンプのギャグ漫画どころか赤塚不二夫先生の時代から既にあった」
「そうなのか」
「ダンバインの最終回に「最終回だから」というメタ台詞があるのは一部には有名だ」
「知らんよ」
「話をトップに戻すが、とにかく全編これパロディなのかと思ったらそれは単なる飾りで、熱いアニメだった」
「エースをねらえのパロは分かりやすいけど、他になんかあったっけ?」
「例えば「ジャコビニ流星キック」という技が出て来る」
「あったな」
「あれはカルト野球漫画「アストロ球団」に出て来る「ジャコビニ流星打法」のパロディだ」
「ふ~ん…どんな打法なんだ?」
「安打を打つ際にバットを粉々に砕いて野手のところにボールと一緒に降り注がせれば取りにくいだろ」
「反則だろうが!」
「こんなんで驚いてたら「アストロ球団」読めんぞ。試合中に死人が出るんだから」
「どうなってんだ!」
「これもまたオタク第1世代の特徴だろう。何しろアニメ・特撮どころかサブカル全般にいらん知識を嫌と言うほど持ってるからあちこちから引用しまくる。タランティーノみたいだな」
「お前みたいにな」
「オレなんぞ足元にも及ばんって。とにかく「トップ」は解説本が楽勝で書けるほど情報の宝庫だ」
「…はあ」
「この辺から、既存のアニメスタジオが良くも悪くも『ちゃんとした大人が子供向けに』アニメを作ってたスタンスだったのに対し、正にオタク自身がオタクの為に…そこまで言わんでもアニメファンがアニメファンの為に真に自分たちが観たいアニメを作る凄いスタジオだ!…ってな具合に認知され始める」
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1987 王立宇宙軍 オネアミスの翼(映画)
1988-1989 トップをねらえ!(OAV)
1990-1991 ふしぎの海のナディア(TV)
1991 おたくのビデオ(OAV)
1991 続・おたくのビデオ(OAV)
1995-1996 新世紀エヴァンゲリオン
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「ふん」
「紹介としては前後するが、そこで登場するのが「ふしぎの海のナディア」だ」
「出たな」
「時代は1990年。半・インディーズみたいな映画からOAVにパソコンゲームが主戦場だったものがNHKのゴールデンタイム帯番組アニメなんだから大出世だ」
「そうだな」
「OPには「原作 ジュール・ヴェルヌ「海底二万マイル」」と謳ってるが清清しいほどかけ離れてる」
「…」
「エレクトラとネモ船長の関係がまんま赤木リツコと碇ゲンドウだったりするが、クリエイターってそういうもんだからな」
「はあ」
「そもそも「ブルーウォーター」がまんま「ラピュタ」の「飛行石」にしか見えんし、悪役三人組はタイムボカンシリーズ。ネモ船長はマクロスのグローバル艦長そっくり…と相変わらずの調子だった」
「…オリジナリティってもんがないのかな…」
「それについては判断が難しい。そもそもガイナックスって厳密な意味でのクリエイターって自覚はあんまりないんじゃないかと言う気がするんだ」
「?どういうことだ?」
「オリジナリティってものに意義を見出してないんだよ。だから軽視する」
「何でそんなことをするんだ」
「自分たちが好きなのはあくまでも古き良き時代のアニメであり、特撮なんであってそれを再現することそのものが好きなんだからそれをやって何が悪いんだよ!…ってな感じかな」
「…いや、ちょっとその態度はどうかと」
「実際、アマチュア時代の映像作品のノリを引きずってるよな。その頃はそれでよくてもいつまでもそういう訳にはいかない」
「む~ん」
「エヴァにかなり大きな影響を与えたアニメなんだが、2点強調しておきたい」
「はいはい」
「まずは「島編」と呼ばれるエピソード群で、中盤のかなり長い間特に何も無いエピソードが延々続くと言う事態になった」
「…エンドレスエイトみたいな感じか?」
「あれはあっちの方が悪質だわな。そうじゃなくて本当に「無駄エピソード」なんだよ。作画の質も最低最悪」
「…?なんでそんなことに」
「ドロンジョ一味みたいな悪役の設定と並んでこれは某国営放送の差し金だったことが後に明かされる」
「何だそれ」
「要するに外注先を局に強引に押しつけられたらしい。作画レベルが目一杯落ちるのを承知の上でだ」
「???」
「序盤は話数によってばらつきはあるものの、面白いエピソードは本当に面白い。大げさに言えば「トップをねらえ!」が毎週放送されているみたいなもんだ」
「それはすごいな」
「それなのに「島編」だからな。シリーズ全体の評価がズダボロになるのも当たり前だろう」
「ヒドいな。完全に犠牲者じゃないか」
「ガイナックスと庵野監督が『転んでもただでは起きない』のがここからで、中盤のエピソードをごっそり犠牲にすることでラスたち…最終回近辺を猛烈に充実させる捨て身の戦法に出た訳だ」
「む~ん…」
「これが第2のポイントなんだが、これが何重の意味でも将来に禍根を残すことになる」
「…出来はどうだったんだ?その最終回の」
「力作だよ。作画レベルも展開も。最もナディアは「空想平和主義」の極致みたいなキャラだ。肉も魚も一切食べられないってのは綾波と同じで庵野監督自身の投影だろうな」
「へー」
「ただ、「殺さずの誓い」どころじゃなくて、いま正に襲われるところを阻止してすら「何で殺したの!」と甲高い声でキーキーわめく系統のキャラなんだ」
「…うぜぇ…」
「それでいて菜食主義者って訳じゃなくて卵は食べられるんだから言ってることがムチャクチャだ」
「何なんだよ」
「出来不出来が激しく、何をやっても議論ばかり呼ぶガイナックスは正に「危なっかしいが当たればでかい」特異なアニメスタジオと言う認識を益々深くする」
「その知人とやらは最終回をどう評してるんだ」
「うん。余り感心しないと言ってた。やっぱり「島編」が視聴者の希望をゴリゴリ削り取ったのは確かで、毎週毎週期待を裏切り続けること3か月だからな。確かに最終回が「何だか凄い」のは見れば分かるが、その時点ですっかり気持ちは離れてしまってたらしい。もうどうでもいいって」
「…まあ、そうかな」
「そういうところあるんだよ…この会社って…。それこそ高品質のビデオテープを準備して全話録画に勤しんでいたオタクたちもすっかり止めてたりしたろうな」
「目に浮かぶようだ」
「ナディアは確かに色んな意味で話題は呼んだんだが、「波」を起こすには当然至らず、それどころか綺麗に終わってることで放送中にはあれほど盛り上がってた「島編」の賛否まで含めてあらゆる言説が一気に沈静化した」
「へえ」
「それこそ「最終回は良かった」とか「とはいえ島編はどうなんだ」も出ない。アニメマスコミはさっさと次のアニメの特集に移ってた」
「そりゃ辛いな」
「それこそ酷評であっても「それ一色」になるほど盛り上がってるんならそれはそれでありだ。けども薄気味悪いほど誰も何も言わない。終わりよければすべて良しと言わんばかりに」
「…」
「この『必死こいて無難に終わらせたナディアが全く評判にならなかった』事実は庵野監督に相当深く刻まれたのは間違いあるまい」
「…まさか、だから『最後をムチャクチャにして放り投げることでとにもかくにも話題性重視』したとでもいうのか?」
「どうかな。とりあえずこの次がエヴァって訳だ」
「おたく第1世代的にはどうなんだよナディアって」
「ハッキリ言ってこういう『賛否両論』別れるアニメってのはオタク第1世代の大好物だ」
「???」
「何だかんだ言っても目立ったり注目を集めるのは好きだからさオタクって。若い衆が「島編」にぷんぷん怒ってるところにやって来てこういう訳だ」
「何だよ」
「真のアニメファンならば「島編」こそを評価してしかるべきだ!…ってね」
「馬鹿なの?死ぬの?」
「馬鹿かどうかは分からんが、オタク第1世代は人前で簡単に本心をさらけ出すことはしないから、これも口に出している以上は『本心ではそう思ってない』んだろうな」
「うわぁ…オレ、この時代に生まれて無くてよかった」
「まあ、「島編」が年季の入ったオタクにとってニヤリとする要素が沢山入ってたのは間違いない。ただ、それをアニメそのものの評価と直結させてしまうのは明らかにおかしい」
「当たり前だ!」
「このアニメは全てにおいてクズだが、ヒロインの衣装がエロいから傑作だ…みたいな話だ」
「当時のオタクってちゃんとアニメ評論とか出来たのか?オタク同士で意思疎通できてたのかも疑わしいんだが」
「そこは“阿吽の呼吸”って奴だよ」
「メンドクセエなあ…」
「1つだけ言えるのは「平均点を取るくらいだったら落第点を取る方がマシだ!」という子供じみた美意識があったってこと」
「ガキだよ」
「そりゃ基本的にはぶっちぎりの合格点を取りに行くさ。しかし、それが無理だとなると「トラブルシューティングして無難に着地」みたいな大人の対応をしない。このまま積み上げ続ければそれなりに完成する積み木を思いっきり蹴り壊す」
「あー…」
「ある意味「島編」を意図的に駄目にしたのもある種の意地と言えなくもない。だって爆発的に悪い島編なみのクオリティのアニメなんて幾らでもあるんだから。20年以上経っても「島編」として思い出してもらえる程度の物にしてのけた…という評価は出来なくもない」
「…どうなんだろう」
「結局テレビ版でやり切ったこともあって劇場版…はあるにはあるが無残な編集物でしか無くブームなんて夢のまた夢。かなり後になってハリウッド映画にパクられる程度に納まった」
「オタク第1世代については分かったが、それ以下についてはどうなんだよ。この頃にはもういるよな?」
「それだ。正に「世代の断絶」が明らかになってくる。最終回騒動の布石はエヴァの放送前には既にあったんだよ」




