エヴァ編04 アニメはプロレスだ! The オタク オタク第一世代
「この時代のオタク…オタク第一世代の顕著な特徴は、対象を突き離すってことだ」
「突き離すってどういうことだよ?」
「ハッキリ言えばちょっと小ばかにしつつも愛玩する…と言う観賞態度になる」
「なんじゃそりゃ」
「平成ゴジラを観てたオタク第一世代の人の同人誌を読んだことあるけどこんな感じだった」
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今度の新作ゴジラも観てきた!いや~相変わらずヒドい。こんなしょーもないもん観るために女房も子供も諦めたかと思うと人生の無常を感じるね。ま、来年の新作も観に行くけどさ!
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「…まあ、大体こんな感じだよ」
「???…この人たちは一体何がしたいんだ?」
「だから突き離して達観してるんだよ」
「達観って…修行僧じゃないんだから」
「この人たちも決してアニメや特撮が嫌いな訳じゃないんだよ。ただ、大人が見るには辛いんで韜晦してるんだな」
「はあ」
「だからこの人たちは何を観ても基本的に全部「否定」から入る」
「…」
「今度の新作!あれは〇〇と××のパクりだね。海外のSFで△△ってのにそっくりな設定があるよ。あれでしょ?□□監督でしょ?あの人もマンネリだよね~。キャラデザの☆☆だけどもう今じゃ通用しないセンスじゃねえかなあ」
「…」
「…まあ、こんな具合」
「観てて楽しいのかよ。そんなんだったら観るな!」
「いや、観るよ。そこは外さない。要するに何か言ってないと落ち着かないんだよ」
「付き合いたくねえな」
「オタク第二世代あたりだと、こういう先輩たちとの付き合いは避けられなかったみたいだ」
「…今まで物心ついてからオタクに対して特にどうとも思ってなかったけどここまで嫌悪感を感じたのは初めてだ」
「ゆとり世代とはいえオタクであるオレたちですら嫌悪感を感じかねん集団が、当時のイケイケ80年代やらオタクバッシング90年代にどう見られてたかは…分かるよな?」
「…よく殲滅させられなかったもんだ」
「何しろシラケ世代だからな。アニメに限らず「何かに夢中になる」「何かに本気になる」のは『ダサい』という価値観が蔓延してる中で青春時代を送ってきた人たちだ。それがよりによってアニメなんぞに夢中となれば「超ダサ」だ」
「ちょっと待て。オタク第一世代って熱いって話じゃなかったのか?」
「そうなんだよ。そこが正に転倒してるところで、誰よりも熱い情熱をもって好きなんだけど、それを外部に出す訳にはいかない」
「何故いかんのだ。好きなら好きでいいだろうが」
「当時の状況考えろ。オタクであると分かっただけで社会的地位を失いかねんのだぞ。何度も言うがアイドルタレントが好きなアニメ語れる現代と隔絶してる。魔女裁判の頃のスペインみたいな時代だと思えばいい」
「…とはいえ好きなんだよな?」
「そう。だからまかり間違っても「アニメが好きだ」なんてことを悟られないために、先回りして小馬鹿にするんだ」
「???」
「アニメなんてくだらないよね~。でもまあ、これも世俗文化的には興味深いから、観てあげるけどさ!…みたいな感じ」
「くたばってしめえ」
「ただ、当時のオタクはある意味『自分たちが世間からどう見られているのか』に関して多少の配慮はしていた…と言う風に好意的に解釈出来ないことも無い」
「屈折しすぎだろ」
「要は『アニメなんぞが好きだ』なんてことが世間に知られたら一大事!だと思ってた。仮に好きなんだとしても、感情的に「面白い!」と思ってるなんてことが知られるなんてありえない。「〇〇というアニメが好きだ」などと「信仰告白」するのは「文化的自殺」みたいなもんだ!…ってわけ」
「どうしてそこまで警戒するんだよ」
「今の時代からしてみると過剰な防衛本能だよな。だから当然「オタク第1世代」にとって「〇〇のアニメが好きです」などというこっ恥ずかしいことを臆面も無くほざく「オタク第2世代」以降が信じられないわけだ」
「いや…好きなもんは好きというか、そもそも第1世代だって大好きじゃねえか!言わないだけで」
「そう。言わない。絶対に。それがつつしみであり、エチケットであり、そして自らのアイデンティティを防衛する技でもあった」
「どういうことなんだって」
「オタク同士でアニメの話になったとしても、お互いに「好きなアニメ」の話なんて絶対にしない。「え?お前あんなのが好きなのかよ」となっちゃったら最後だからな」
「意味が分からん」
「オタク第1世代が、「何かが好きだ」というには“必ず”条件が必要になる。これの1つが「理論武装」だよ。当時のアニメファン気質はこれまた「プロレス」に例えると理解しやすい」
「またプロレスかよ…」
「奥が深いからなプロレスは」
「で?」
「プロレスは確かに一見するとスポーツや格闘技に見えるが、その実全てが予定調和のショーには違いない」
「そうだな」
「だから『八百長じゃねえか』『インチキ』『作りもの』めいたことが言われる訳だが、それじゃ聞くが実写映画やアニメが同じ非難を受けると思うか?」
「…は?」
「同じくフィクションなのにどうして映画は非難されない」
「いや…そりゃ明白にフィクションだから」
「オレに言わせれば程度問題だよ。プロレスのファンだって目の前に展開してるのがガチの格闘じゃないことくらい分かってる。しかし、それを言い立てるのは野暮ってもんだ。「映画」に対して「作り話だ!」と抗議しないのと同じように」
「はあ」
「だからプロレスファンは『自主的に騙されて楽しむ』、という技を身に着けている」
「…?」
「やれ凶器攻撃による流血だのはもとより、遺恨試合だの因縁の対決だの…」
「…敷居の高い娯楽だな」
「そうさ。アニメと同じだ」
「馬鹿な!全然違うだろうが!」
「そうじゃなくて、『本来子供向けであるアニメを、いい年こいた青年や大人が楽しむため』にはそこに『趣向』だの『見立て』だのを持ち込む必要があるってことを言ってんだよ。正にプロレスと同じように『自主的に騙されて楽しむ』上級者の娯楽なのさ」
「他に楽しいことねえのか!どうしてそこまでしてアニメ観てんだよ!」
「それは古今東西オタクが言われ続けてきた非難だな。「他に楽しいことねえのか」ってさ」
「いや…だってさあ」
「オレみたいな薄いのがオタクを代表するのもおこがましいが、代わって答えてやろう。そこまでアニメに拘るのは、理屈抜きでアニメが好きだからだよ」
「…?はぁ?」
「アニメ好きな奴がどうにかしてアニメを観ている自分を論理立てようと…要は「自己肯定」しようと頑張ってるのに、そこに「アニメばかり観てないで他のもの観ろ」というのは残酷すぎるだろ」
「いや…それは」
「オタク第1世代の代表的論客…ということになっている岡田斗司夫氏のアニメ認識は贔屓目に見ても80年代で止まってる」
「ああ、あのダイエットの大家になった」
「最近は別ジャンルでも大家だったことが判明した訳だが、ともかく「オタキング」を自称する割にはAKBアニメ部よりもアニメ観てない」
「はあ」
「岡田斗司夫氏の言論活動は典型的な「オタク第1世代の」それだ。ありとあらゆるものを小馬鹿にし、観てもいないアニメ偏見で決めつけて笑いものにする」
「(自主規制)」
「この頃の過剰な「萌え」恐怖症の吐露からの「オタクは死んだ」宣言に至ってはオタク第2世代以降すら控え目に言っても失笑ものだ。そして、たまに褒めるアニメがあったと思ったら恐ろしく条件を積み上げた上か、或いは明らかにひねくれる」
「ひねくれるってなんだ?」
「先の話だが、夏エヴァことEOEが話題を席巻してた夏に「この夏に一番面白いアニメ映画は「地獄先生ぬ~べ~」の劇場版だ!」だってさ」
「…ああ、そういうスタンスなんだ…」
「これは唐沢俊一氏とも共通するんだけど、どうも言論活動として「エヴァブーム」に乗り遅れた焦りからか、エヴァそのものよりも「エヴァなんぞを褒める奴ら」に当たり構わず噛みついてたところがある」
「何をやってんだ」
「笑いごとじゃなくてその舌禍事件は名誉棄損訴訟に発展したものもある。訴訟沙汰になってないものもかなりあるだろうな」
「…」
「これは邪推になるが、自分らが散々苦労して開発した「アニメ好きを隠蔽する方法論」を完全に無視して恥ずかしげもなく「アニメ好きです!」と抜かすオタク第2世代や、よりによって第1世代の連中を心の底から軽蔑してたんだと思う」
「…」
「今もってある種カリスマ的に信奉されるところもある岡田氏だが、オタク第3世代以降が普通にそのあらゆるアニメを小ばかにしたようなアニメ評聞いたら「なんだこのじじい」とムチャクチャ腹立つだろうな」
「そうだな」
「愛のあるバッシング…なんだけどな。少なくともオタク第1世代にとっては」
「知るかよ」
「ただ、同時に「屈託なく『アニメ好きです!』とか言えちゃう奴ら」に対する嫉妬…なんかもあったんじゃないかなあ…深層心理の話になるけど」
「だとしても同情なんぞ出来んね」
「一応言っとくが、エヴァのクリエイターたちは正にオタク第1世代のど真ん中の人たちばかりだぞ」
「あ…」
「エヴァンゲリオンを読み解く際に、クリエイターたちのオタク第1世代独特の屈折した心理を合わせて行うことは欠かせない。余りそういう評論に出会ったことは無いがね」
「そうか…世代論って、観る側だけじゃなくて作る側にもあるのか…」
「その通り。確かにオタク第1世代の最前線の人たちは1982年の「超時空要塞マクロス」にも既に参加はしていた。だが、愈々本格的に「戦後ロボットアニメで産湯をつかった」…オタク第1世代が本格的に1から全て作り上げたアニメが起動することになったわけだ」
「…大丈夫なのか?なんか危なっかしいんだが」
「その予感は的中する…だろ?」
「あ…」
「時は1995年。今をさかのぼる事20年前。ガンダムブームから10年強。中核を担うのは「ガンダムの子供たち」だ」
「何だかんだ言ってもまだまだ業界そのものが若いころだな」
「何度でも繰り返すがエヴァのスタッフの平均年齢は24歳(当時)。今のオレらと余り変わらん」
「信じられんな。明治維新みたいだ」
「そうだな。幕末の志士たちはみんな20代だ。吉田松陰は「先生」と言うイメージがあるが享年29歳。坂本龍馬は32歳で暗殺されてる」
「吉田松陰って29で死んでるのか…」
「伊藤博文なんぞ維新の時には20歳だぞ。ついでに言うと織田信長が桶狭間の合戦に勝った時の年齢が数えで25歳だ」
「若い…」
「エヴァの前に「ガイナックス」の歴史を」
「当然だ」




