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アニメはいつから有料になったのか その5


「さっきは内容が無難と言う話をしたが、それは「表現」にも表れる」


「表現って何だ?」


「ハッキリ言うとエロ・グロだ」


「…あのさあ」


「これは結構大事だぞ。実はOAVの存在意義はそこにもあった」


「あっ!」


「テレビ放送を前提としていないから、局からもスポンサーからもクレームは無い。テレビの前の良い子に気を遣う必要も無い。必要ならばゾンビが残虐に一般市民を殺したりもするし、女性が服を破り取られたりもする」


「面白そうじゃねえか」


「そう思うよな?」


「…???」


「言葉を濁してる知人に当時のOAVの状況について聞いてみたよ」


「それで?」


「ぶっちゃけ死屍累々だったってさ」


「?どういうことだよ」


「ハッキリ言うと当時のOAVは「スタージョンの法則」がそのまんま当てはまるカオス状態だった。これは正規のアニメ情報誌とかを読んでも絶対に書いてないぞ。一民間人の率直な意見だからな」


「民間人って…ガンダムオタクが…要は「9割はクズ」って言いたい訳か」


「幾つか見せられたが本当にゴミみたいに詰まらんものがこれでもかこれでもかと…」


「へー…意外だな」


「もうとっくに出現していた『マニア層』は、自分らが好むマニアックな作品が決してテレビアニメ化されたりしないことに不満を持ってた。今では想像しにくいかもしれんが、当時は「カセットブック」という媒体があってな」


「…ドラマCDみたいなもんか?」


「似てるが少し違う。ざっくり言えば「OAVにしたいが予算が無いからとりあえず音声版作ってみました」みたいな感じらしい」


「それで?」


「当時の状況だと、「アニメ化」ってのは正に作品としては「あがり」だったんだよ。そこに行くまで応援し続けられるかどうか…っていうね」


「ふーん」


「当時の状況を全部知ってる訳じゃないが、一部でカルト人気があったコミックはそりゃもう沢山あった。しかしそれらの多くは当然ながらテレビアニメみたいな陽の当たるところに出ることなく歴史の闇に消えていくことになる」


「大げさな」


「ところが、そういう「どう考えてもアニメ化なんて無理そうだ」というカルト・マニアコミックなんかだったとしてもOAVだったら可能なんだよ」


「…ちょっと待て」


「何だ」


「そういう作品がテレビアニメにならんのは、なってもマニアック過ぎて受けないからだろ?」


「いかにも」


「…それはその作品の資質なんであって、それを強引にアニメ化してみたところで本質的には何も変わらんのじゃないか?」


「全く持ってその通り。普通の人間はクソ高い上にマニアックなアニメなんぞ買ったりはしない」


「だろ?」


「だが、マニアなら買う。しかも必ず買う」


「あ…」


「そう、『ある程度以上は絶対に“売れない”』が、『ある程度以下の売り上げには決してならない』ことが保障されているジャンルでもあるんだよ。OAVってのは!」


「む~ん…物凄く狭い世界の話だなあ…」


「そもそもどうしてクリエイターが『残虐な表現』をしたかったりするかと言えば、それが物語上要請されているからに他ならん。“にもかかわらず”押さえつけられる…からこそOAVという『安住の地』を求めたはずだった」


「…はあ」


「しかし、実は多くの人間の“野暮な”チェックや横やり、クレームが入ってくる状態というのは、クリエイターにとっては窮屈だったかも知れないが、実は同時に「社会とのつながり」を担保してくれているものでもあったんだ」


「何となく分かるな」


「ところが、OAVというのはそうした「社会とのつながり」がぶっつり切れてしまっている。これは案外大きな痛手だったんだ」


「それがOAVのつまらなさの原因だと」


「そりゃ中には傑作もある。『迷宮物件』『幼獣都市』『トップをねらえ!』なんかはOAVの傑作といえる。正に「テレビでは見られない面白さ」を態々(わざわざ)金を払ってまで体験させてもらえる理想的な作品群だ」


「『トップをねらえ!』は知ってるけど、後のは知らんなあ」


「アホか!絶対に観ろ!後で貸してやるから」


「わーったわーった」


「とにかく、自己満足過ぎてストーリーすら把握できないほど難解な作品やら、やりたい放題やれることに胡坐をかいて気分が悪くなるほど不必要にグロテスクだったり、テレビだったらある程度担保されていた「作品の最低ライン」すら満たしてない様なのも多くてな…」


「そ、そうなのか?」


「具体的にタイトル挙げてもいいんだが角が立つからな。あと、テレビと違って何度も何度も何度も何度も観るのが前提のOAVだと設定がムチャクチャに入り組んで大量だったりもした」


「ま、そりゃ折角買ったんだから何度も観たいわな」


「漫画家のあさりよしとお氏が「月刊アニメージュ」のOAVクロスレビューでしつこく糾弾していた「設定の朗読」ものもハバを効かせてた」


「お前幾つだよ…」


「ほっとけ。ちなみに『トップをねらえ!』2巻の冒頭で全く理解できない難解な字幕が延々と続きつつ、背後で全く関係ないカラオケが延々流れる…という演出があるんだが、これは当時のOAVが無意味な設定の羅列をやってたことをあてこすった演出なんだが…今じゃ分かりにくいだろうなあ」


「知るか!」


「とにかく、これが初期の「有料アニメ」だ」


「そんなまとめ方でいいのか?」


「どれだけ無駄な時間を過ごさせられたか、未完作品も多くて本当に腹立つんだよ。ちゃんとしたアニメ通史みたいなのなら評論家の方々の著作やらデータ本があるからそういうの読んどけ。これは個人的な感想だ」


「で?何の話だっけ」


「すまんすまん。当時のレンタルビデオショップとOAVの関係もう少しやるぞ」


「へいへい」



(続く)


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