アニメはいつから有料になったのか その4
「テレビアニメってのは本当に多くの人間が関わる。特にアニメそのものなんぞはどうでもいいとしか思ってない局や制作会社の「おえらいさん」のチェックを通過したものしか「テレビアニメ」として放送されないと思って間違いない」
「そうなのか?」
「ああそうだ。ちなみに「映画」は全く別の文脈だからな。あくまでテレビアニメの話だ」
「つまりファミリー向けになるってことか」
「ありていに言えばそうだ。サザエさんは少なくとも倫理チェックには引っかからない。だが、日曜の夕方からエロ・グロ・バイオレンス全開の「AKIRA」流す様なアバンギャルドなテレビ局なんぞあるまい」
「あ…そういうことか」
「ぶっちゃけて言うとテレビで流れるアニメは「普通の大人」のお眼鏡にかなった優等生か、或いは毒にも薬にもならない子供向けアニメばかりってこと」
「え?でも人間爆弾とかパイカルとか」
「いきなり「ザンボット3」かよ!…まあ、そういうこと。その「制約の中」で思い切ったことをやるからこそトラウマになり、語り継がれたりするわけだ」
「ふーん…そういうもんかねえ」
「「巨人の星」は放送前に社長以下全員による試写会が行われてあーでもないこーでもないと内容チェックされてたそうだ」
「うっひゃー!当時のスタッフはやりづらかっただろうなあ」
「ああ。ロボットアニメなんかも基本的には放送されているものはより多くの人間のチェックを通過してきたものだし、放送前のチェックも猛烈に厳しい」
「…大変だな」
「だからこそ希少価値があり、一旦放送されればしつこく再放送されて定着するんだ。直接は金にならんが」
「無料アニメが無難になるのは分かったけど、話を聞く限りそれほど問題は無い気がするんだが」
「無料アニメにはもう一つ側面があって、それはあらゆるアニメが「販促素材」だってこと」
「30分のコマーシャルってか」
「OP・EDにCMも入るから実質23分くらいだな。アイキャッチに、ロボットアニメや魔法少女だと「合体変形」「変身」バンクもあるからもっと短くなる」
「何か問題でも」
「最低限の体裁は強引に整えさせられるんだが、逆に言うと体裁さえ整っていれば「映像作品としてのクオリティ」はそれほど重視されない。はっきり言うと「毎回同じ展開」を手を変え品を変えて延々放送していてもいいし、視聴率が取れて、関連商品が売れるんならそれで構わないんだ」
「…そうか、作品の質か…」
「今、昔懐かしのアニメの全話DVDボックスみたいなのが発売されてるが、恐らく最初から最後まで見通した人なんてそうはいないだろう」
「そりゃ、膨大な話数になるから」
「それもあるが、クオリティがどうこうよりも「毎週放送し続ける」ことを目的に作られた「時計代わり」コンテンツだから、役割が違うんだよ。俺もとある80年代の一話完結型アニメを続けざまに観たことがあるんだが…頭がどうかなりそうだった」
「…?どういうことだよ」
「ロボットアニメなんだが、毎話入る「戦闘シーン」の素材の使いまわしっぷりが半端じゃない。続けざまに何話も観てると既視感に襲われてくる。当時のロボットアニメは1年続くのが常識だったけど、今だったら長くても2クールだろうな」
「当時は何故そうしなかったんだ?」
「だから、作品の質とかじゃなくて「毎週決められた時刻に、長期間流し続ける」ものだったからさ。全話のメディアを売ることが前提の現在にああも似たような話ばかり続くのは許されんだろ」
「え?でも(自主規制)は続けざまに総集編同然のエピソードが…」
「わーわーわー!そこまで!」
(続く)