細田守監督アニメについて
「ぶっちゃけどうなんだよ」
「…はっきり言って物凄く微妙」
「要は肯定なのか否定なのか」
「アニメ版『時をかける少女』の輝きは永遠だよ。同時期に覇権を獲っていたのが『ゲド戦記』だもん。応援したくなるよ」
「まあな」
「実はタイムトラベルものということでいうならそっくりな映画があって、それで若干価値が毀損はしたんだが、それでも毎年の様にテレビ放送される「夏の定番アニメ」の位置に落ち着いたし、これに関しては誰も文句は付けられまい」
「うん。俺も大好きだ」
「ところが2作目でいきなりずっこける」
「…え?」
「『サマー・ウォーズ』は申し訳ないんだけど、かなり色々疑問点が多いんだよ」
「オタク的ないちゃもんじゃないだろうな?」
「いや、ごく普通の映画ファン的な見方さ」
「言ってみろよ」
「OZという仮想現実空間めいたものが社会インフラまで全て統括してる近未来の話だよな?」
「ああ。そこで凶悪なバグである「ラブマシーン」が大暴れするわけだ」
「代表的なところで言えば信号が消えたりデタラメになったりして社会が混乱する。これは「ダイ・ハード4.0」でも描かれるが」
「何が問題だ」
「普段の熱中症でも十人単位で死者が出るのに、「ラブマシーン」騒動での死者はゼロだ。これは甘いだろ」
「いや、ゼロだなんてどうしてわかる?」
「劇中のニュースでハッキリ言ってたぞ」
「え…」
「おばあちゃんがそうだとも言えるが、とにかくここでおばあちゃんは各方面に電話をして影響力を見せつける」
「あそこは痛快だったよなあ」
「…何でインターネットまで落ちてんのに『電話』が通じるんだよ」
「あ…」
「この時点で致命的なんだが、一番どうかと思うのは「ラブマシーン」との花札最終決戦だ」
「ネタバレじゃねえか」
「気になるなら飛ばしてくれ。とにかくあいつはシステムを侵食してんだぞ?ルール内ゲームやってもインチキし放題じゃねえか。どうしてまともに戦えるんだよ」
「それは…」
「ヒロインが次々に「こいこい」(倍プッシュ)をやって、全世界のプレイヤーの力を「元気玉」よろしく借りて絶対勝てないはずだったラブマシーンに勝つ訳だが」
「感動的で盛り上がったじゃねえか」
「だから、勝てるんなら勝てるで『論理』が全く無いんだよ」
「???意味が分からん」
「開発者の侘助おじさんがいるんだろ?例えば「こいつは花札のルールだけは知らない。要領を覚えるのにあと最低5ターンは掛かるから、その間に勝っちまえ!」とか別に何でもいいから「勝てる論理」が欲しいんだよ」
「…そんなにマニアックにされても」
「恐らく我が国の娯楽において、ここまで「花札」がメインに据えられた作品は無いだろうな」
「だな」
「だったらもっとちゃんとルール解説するなりしてほしい。「あとは〇が来れば勝てる!来い!」と盛り上がれないだろうが」
「花札映画じゃないんだから」
「だったら最後の勝負は花札である必要はない。或いは「花札の役」以外のところにサスペンスを持って来るべきだ。「ジョジョの奇妙な冒険」3部のダービー兄戦はポーカーのルール一切知らなくても分かるし盛り上がったぞ?」
「いいじゃねえか、盛り上がったんだから」
「まあ、「喝采シーン」もあるし、「この夏の娯楽作!」とされても首肯できそうな体裁ではあったんでこれはこれでよかろう」
「偉そうに…」
「俺は文系だけど、あの暗算での暗号解読なんて本当にありえない。マジで。「ウォーゲーム」あたりから見直してほしいと思ったね」
「む~ん…」
「1~2ケタの暗号ならもしかして?ってこともあるが、十数ケタ以上の暗号を暗算で解くなんてありえなさすぎてどっちらけになっちゃうんだよ」
「ま、そこはいいじゃないか。所詮フィクションなんだから」
「問題は『おおかみこどもの雨と雪』だ」
「マッチョ野郎のお前は好かんだろうな」
「別にマッチョ関係ない。好きか嫌いかで言われれば…嫌いじゃない」
「煮え切らんな」
「ただ、もろ手を上げて大賛成!という訳じゃない。客観的に見ても感動的ではあるが、「不思議な映画」というのが公平なジャッジだと思う」
「『不思議な映画』?」
「ああそうさ。特に熱っぽく何かを叩きつける訳でもない、家族愛の押し付け・説教も必要最低限。良く動くし開放感も躍動感もある。風景も最高に綺麗だし心が洗われる様だ」
「絶賛じゃねえか」
「しかし、「どんな映画ですか?」と聞かれて人に説明するのは非常に難しい」
「…まあ、そうだけど」
「生理的嫌悪感があるとされた獣姦シーンもそれほどどぎつくは無いが、家族で見るには抵抗ある映画になっちゃったな。母親と見るのは別の意味で恥ずかしいわい」
「確かに…」
「悪い意味での「いい映画」だ。夏休み前に全校で一斉に見せられた「反戦アニメ」みたいなもんで、そこは初期のジブリ作品が陥ろうとして全く陥っていなかった路線さ」
「どういうことだよ」
「初期ジブリが凄いのは一見して「夢と感動」を売りにしている様に見えて、その実バンバン人をぶっ殺したりメカが活躍する『血わき肉躍る』クソ面白い映画だってこと。「おおかみ」じゃそのまんま「子供にゃ退屈な『いい映画』」になっちまってる」
「…確かに、子供がお小遣い握りしめて押しかけて、劇場からの帰り際にごっこ遊びする映画じゃないわな」
「正直、もう「次こそは『時かけ』みたいな映画を…」待機監督になるのは早すぎる才能だと思うんだよ」
「ラピュタ待機説だな」
「そう。『時かけ』が余りにも感動的だったもんだからその幻想を追ってる」
「お前が子供みたいな娯楽作観たがり過ぎなんだよ。そういうの観たいなら「ドラえもん」でも観に行っとけ」
「まさかとは思うがドラえもんディスって訳じゃないよな?」
「ンな訳があるか!お前がすぐにそうやってバカの一つ覚えみてーにストレートな娯楽作ばかり欲しがるからさあ!」
「元は『ハウルの動く城』監督だったことを忘れるな」
「…その伝で行くと、元からストレートな娯楽作描くタイプの監督じゃないんじゃないのか?名を上げた「おじゃ魔女どれみ」のエピソードも観たけど、テレビアニメとは思えないハイクオリティのしんみりいい話ではあったけど、「わっ!」と盛り上がる熱いエピソードじゃない」
「そうなんだよなあ…細田監督の凄いところは「サマー」で見せたみたいな「ちゃんとした大人を描ける」ところにある訳だ。個人的には「サマー」は余り買わないが、「時かけ」はきっちり両親も家族もいながらキャラの魅力で魅せ切ってる。あれが最高のバランスだったとは信じたくないんだが…」
「結局日本アニメの最大の弱点って『家族で観られない』ことだもんな」
「幾ら面白いからって、パパママ妹に弟もいる場面で『俺、ツインテールになります』は無理だろ」
「…無理だな」
「『うる星やつら』なんかはそういう風潮に風穴を開けた快作だった訳だ…家族と一緒にはとてもじゃないが観られない代わりにクソ面白くて猥雑で最高だ。だが、濃厚にオタク大喜びなのに家族で楽しめる「ナウシカ」「ラピュタ」「千尋」が現に存在してるんだから、金を出してる消費者としては多くを望みたい」
「…そういう意味では『時かけ』も微妙だよな」
「うん。筋立てで言えば完全に少女マンガだ。夏の一番の娯楽作ってんでこういうのが出来上がるのが如何にも我が国だな」
「アメリカならどうなるんだよ」
「タイムリープするのはシュワルツェネガーかスタローンみたいなマッチョなおっさんだろ」
「…観たくねえぞそんな映画」
「別に高校生じゃなくて、暗殺されそうな大統領助けるとか」
「目に浮かぶようだ。…ってか恋愛要素はどこに消えたんだよ」
「何とでもなるだろうが。セクシーなブロンド美女か筋肉質のブルネット美女か…」
「ゲップが出そうだ」
「しかし、観るだけで気恥ずかしくはないぞ。日本のアニメってそういうところがあるからなあ」
「む~ん、何でそうなったんだ?」
「また言わせるか?ただ、少女マンガってのは言い得て妙で、そういう「繊細な切なさ」みたいなのを描かせたらハリウッド映画より得意だろ。間口は狭くなるが、それが存在意義だとは言えそうだ」
「…話を戻してくれ」
「すまんすまん。細田監督は次回作を観る限り、物凄く良心的で高品質のアニメ映画を作るクリエイター路線で行くみたいだから、そういう意味では応援するよ」
「だから何でそんなに偉そうなんだって」
「口さがないオタクどもは『時かけ』だけの一発屋めいたことも言ってるみたいだが、俺はそうは思わん。応援する」
「しかし、そのお前の好きな細田監督は主役級の声優に有名俳優ばかり使ってるぞ」
「…タレントや有名人じゃなくて俳優だから…」
「次回作は確かに俳優だが、演技経験ゼロでこの声優が演技デビューだそうだぞ?しかもゴリ押しまで言わないがこの頃露出を増やしてる売出し中の女優だ。カルト映画作ったと思ったらもう下手なマーケティング始めたのか?」
「…やかましい!大人には色々あるんだよ」
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