アニメはいつから有料になったのか その3
「当時のビデオデッキは値段がバラバラだが、ソフトもかなり高かった。「風の谷のナウシカ」が14,800円。当時のファミコンと同じ値段だった」
「は?2時間の映画が1万5,000円近くしたのか?」
「今ならハリウッドの娯楽大作だと500円で売ってたりするな。レンタルビデオショップの相場は会員になるのが3,000円。レンタル代はソフトの定価の1割ってのが相場だったらしいから、入会して「ナウシカ」一本借りると3,480円なりだ」
「嘘だろ?セルDVDの安いのなら買えるぞ」
「まあ、レンタル代の問題もあるが、やっぱりソフトだな」
「だよな」
「初期の地方なんて海賊版の横行が物凄くて、明らかにタイトルをマジックで手書きで殴り書きしてある様なのを貸してたらしい」
「どう考えてもアウトじゃねえか。違法コピーだろ?」
「そういうレベルですら無かったみたいだ。何しろ数年後にメーカーから正式発売されたらしい」
「…???」
「要するに流出映像に勝手に字幕を付けてレンタル素材にしてたんだな」
「その方が手間も金も掛かってるんじゃ…」
「ぶっちゃけその辺の闇については分からんよ。ともかく「適当な」映像素材が欲しくてたまらない業界は「映画」を軒並みソフト化する」
「いいじゃないか」
「これで多くの「アニメ映画」がレンタルショップに並ぶわけだ。その知人は親に連れられて行ったレンタルショップでぽつんと置いてあった「幻魔大戦」を「観たことが無いアニメだな?」とぽかーんと観察してたそうだ」
「…シチュエーションが分からん」
「要は「アニメ映画」と「テレビアニメ」は全く、本当に全く、まるっきり違うってことだ。これもその内解説したいが」
「その子はテレビアニメには詳しいが、アニメ映画は知らんかったってことか」
「そうだ。そんな中、とある新興ジャンルが産声を上げる」
「何だ」
「オリジナル・アニメ・ビデオだOAVと略される」
「聞いたことがあるぞ」
「当時はOVAとも書かれていた。ま、どっちでも同じなんだが、応用が効くので「アニメ」が先に来た方がいいと思うのでOAVで通す」
「ふむふむ」
「要するに劇場映画アニメをソフト化するんじゃなくて、ビデオで作っちまおうという発想だ」
「ある意味発明だな」
「まあな。世界初のOAVは1983年の「ダロス」。意外に早い時期にもう出てると言える」
「早いのか?時系列が良く分からないんだが」
「まとめるとこんな感じだ」
1979年 機動戦士ガンダム
1982年 超時空要塞マクロス
1983年 ダロス
「ガンダムはともかく、他のは余り馴染みが無いからピンと来ないなあ」
「ちなみにガンダムの「宇宙歴」では舞台は「0079(ダブルオーセブンティーナイン)年」となってるが、これは西暦の末尾たる「1979年」からの引用。富野監督はこういうのが好きみたいで、「F91」も「1991年」から引用だ」
「確かガンダムって「0080」「0083」って作品もあったよな?」
「あの辺になると製作年代とのリンクなんて全く無い。とにかく純粋に「有料アニメ」って意味だとOAVがそういうことになる」
「何だよ。答えは出てるじゃないか」
「無料アニメには無料アニメの問題があり、有料アニメには有料アニメの問題がある」
「無料アニメの問題って何だよ」
「無難だってことだよ」
「無難?」
(続く)