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日本アニメの神髄は「テレビ」である その6


「お前こそ本当にファンなら、『王立宇宙軍』だけだったら分かりにくいからと無理やりタイトルにねじ込まれた「オネアミスの翼」で略すのやめろ。当時のスタッフは決して「オネアミス」とは略さない」


「それくらい知ってる。なめんな」


「ともかく、こういう映画があるのは誇りさ。だが、しつこく繰り返すがこういうの作りたいんならまずはごく普通のエンターテインメントを大量に作った上で存在すべきだろ」


「お前そればっかり言うな」


「これまた間違いなく自信を持って言い切るが、日本のアニメがこういう「立派な」ものばかりだったら間違いなく世界中が夢中になるほど広がりはしてない」


「…」


「日本のアニメの強さは、ゴリゴリの「大衆文化」であることだ。つまり気楽に楽しめる肩の力を抜いたものなんだよ。大金払って席に押し込まれた状態で『観させていただく』映画とは対極にある」


「良く分からんのだが、だから何が問題なんだよ」


「問題など何もない。ただ、「日本アニメならではの魅力」は「映画」では極めて発揮されにくいと言う話だ」


「もっと具体例挙げてくれ」


「しゃーない…褒める文脈でならともかく、個別の作品を名指しで非難するのは気が引けるんだが、仕方が無い。敢えて「悪い例」として挙げよう」


「批評めいたことをするんなら反発くらい引き受けろ」


「そうだな。実は「総集編」以外の「テレビアニメの劇場版」も幾つかある」


「そうだっけ?」


「典型的な例が「きまぐれオレンジ・ロード あの日に帰りたい」(1988年)だな」


「また古いな」


「後日談なんだが、原作のマンガやテレビアニメは典型的な『ラブコメ』で、実は超能力ものなんだが、それすら感じさせないライトなノリなんだ」


「へー」


「90秒で300カットを畳み掛けるOPは今でも通用するセンスだ。ともあれ、この劇場版は観に来たファン全員を怒りの渦に叩き込んだと言われてる」


「へ?」


「要するにバッドエンドなんだな。胸糞悪くなるくらいの」


「…そうなんだ」


「確かに三角関係の決着はつけなくてはいかんだろうが、金取って人に見せるエンターテインメント…しかも「あのキャラクターたちにまた会える!」と心弾ませてやってきたファンにどうしてそんな思いをさせにゃならんのか」


「…映画としてのクオリティを重視したとか?」


「テレビ版観てたファン以外が劇場に来ると思うか?」


「…」


「正に『誰得』って奴だ。原作者には酷評され、キャストも戸惑いを隠してない」


「…」


「更に「めぞん一刻 完結編」(1988年)というのもある」


「へー。映画になってたんだ」


「同時上映の「うる星やつら」の方が話題だったみたいだがね。大問題なのはキャラクターが劇画調になってること」


「…はぁ!?」


「どうしても映画となると作る側が肩肘張るんだな。特別なものが見たいって欲求はそりゃあるけど、「いつもの」「相変わらずの」ものが観たいんだって。内容については伝聞だが、監督の芸術が炸裂していてファンが観たいものじゃなかったらしい」


「む~ん」


「『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』(1998年)もヒドかった」


「次から次へとまあ…」


「底抜けに明るいミスマル・ユリカにドン引きしつつも癒されるあほらしくも壮大で、少し外したSFコメディだったんだが…」


「何だよ」


「映画を観てみるとまさかの鬱展開」


「はぁ???」


「元々盛り上がるかと思うと外す様な人を食った作風の監督ではあったんだけど、…一言で言うと全く面白くない」


「む…」


「そもそもテレビ版に出てきたキャラがほとんど出てこない。星野ルリくらいだろう」


「そうなのか?」


「日本のアニメはキャラクター商売だとあれほど…と言いたくなる。ほんの少しだけ出て来るテレビシリーズの主人公は洗脳済みで別人みたいになってるし」


「…そりゃ…気分悪くなるな」


「実は絵コンテ観たことがあるんだが、主人公の変貌ぶりはもっとひどかった。吐きそうになった。作品のファンだったからショックで2~3日は落ち込んだよ!画面になるとあの程度で収まってるが」


「オレはもう少し通の人間から面白かったとか聞いたぞ?」


「だからそういう“すれっからし”の“通ぶった”連中の意見なんぞどうでもいいんだよ!どうして素直に「あー面白かった!」と軽やかな足取りで劇場を出してくれないんだよ!映画を何だと思ってんだ!」


「お、落ち着けよ」


「反発必至で言うが、「劇場版 魔法少女まどか★マギカ 叛逆の物語」(2013年)なんてありゃなんだ!」


「知らんぞ。ファンに刺されても」


「知るか!あのな、みんな金を払って映画観に来てんだよ。要するにイベントに来てんの!花火見物とそう変わらんのだよ。こちとら「ゲージュツ作品」みたいわけでも、難解な映画観て哲学的に語り合いたい訳でもねーんだ!」


「まさか「自分が」つまらんから罵倒なんて恥知らずなことをするとは…」


「あのな、そういう程度が低い話をしてんじゃねえんだよ!そりゃ個人的につまらんという私怨もあるさ。金返せとも思う。ぶっちゃけこれなら総集編みて妄想をたくましくする方がマシだ。何もしない方がまだ有意義だ」


「ひでえな」


「何故ヒドい?将来のアニメを買い支え、もしかしたらクリエイターに回るかもしれないいたいけな少年少女が劇場にやってきたところを鬱展開叩き付けるのがどれほどアニメ業界にとって有害か考えたことあんのか!?「破」で感激したファンが「Q」で人が変わったみたいになっちまった例を知ってるぞオレは!」


「疲れてるみたいだから寝ろ」


「やかましい!この際だからハッキリ言ってやる。日本人はな、娯楽を作るのにそもそも向いてないんだよ!」



(続く)


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