日本アニメの神髄は「テレビ」である その5
「お前はこの論に入る前に「面白い劇場アニメは幾らでもある」と言ったな」
「…物の例えだ」
「思いつく作品を挙げてみろ。『劇場アニメ』をだ。テレビアニメに準拠しないそれだぞ。ジブリアニメは除外な」
「…「太陽の王子ホルスの大冒険」「白蛇伝」「パンダコパンダ」「幻魔大戦」「王立宇宙軍 オネアミスの翼」「ブレイブストーリー」「アフロサムライ」」
「…スゲエラインナップだな」
「「パーフェクト・ブルー」「千年女優」「パプリカ」「東京ゴッドファーザーズ」とかの今敏監督作もあるな」
「ほうほう」
「「時をかける少女」「サマー・ウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」なんかの細田守監督作」
「…まあ、大体分かった」
「…テレビアニメ前提でないのを探すのは苦労するが、その気になればこれくらいの数は上がるぞ?」
「悪いがそれだけ挙げてもらってもオレの持論は揺るがんね」
「何故だ?」
「どれも素晴らしい作品であることは否定せんが…ちと肩肘張り過ぎだ」
「何だって?」
「今敏監督作は国際的な評価も高い力作・佳作揃いだが、この監督の作風は典型的な「小説的」映画だ」
「…ストーリー中心だってことか?」
「そう。主人公のキャラクタ―ソングが発売される感じしないだろ?」
「…パーフェクト・ブルーなんてアイドル歌手なのにキャラソン発売されたりせんな」
「実写であっても違和感が無い。そもそもデビッド・リンチもかくやというほどの現実と虚構が入り乱れる作風で「キャラクターに感情移入させる」構造じゃない」
「だから何だってんだ」
「別に『だから悪い』なんて話はしていない。作品としてのクオリティは素晴らしい。ただ、「典型的な日本アニメ的魅力に満ちているか?」と問われれば首肯しかねる」
「…つまりそれはどういう…」
「主人公がアイドル歌手であるという点は同じだが、同じ日本アニメだからといって「アイドルマスター」「ラブライブ!」のファンが「パーフェクト・ブルー」楽しめると思うか?」
「…ンな訳ないだろ…そうか…」
「かくも「小説的」作品と「マンガ的」作品は味わいが違うのさ。恐らくは今の典型的なアニメファンは今敏監督のアニメ映画は「余技」として楽しむことはあっても熱狂的にハマり狂うことは無いだろうな」
「…ここだけの話、ぶっちゃけ余り好きじゃない。少なくとも何度も観たいとは思わないんだ」
「別に単なる好みだからな。構わんだろ」
「でもなんつーか…今敏が分からない…とか言うと馬鹿にされそうじゃんか」
「それだよ!正にその受け取られ方が「小説的」かつ「文化的」なんだって。アニメなんつーのは虚栄心を満たすためのアクセサリーじゃないんだぞ?誰が作ろうが所詮はアニメだ」
「…まあ、すれっからしのオタクって好きなアニメでヒエラルキー作るところは確かにあるからな」
「それで面白くも無い東欧の人形アニメみたいなのを“観てるところを人に見せ”て、『日本アニメなんてのは萌えばかりで下らない』とかほざくんだろ?アリゲーターに食われればいいんだ」
「例えが良く分からんが、言いたいことは分かる」
「2時間で治めないといかんから、基本的には無駄なことはやってるヒマが無い。「キャラ萌え」…という言い方が気になるなら「キャラに感情移入させる」…ことよりも「作品としてのクオリティを上げる」ことが優先される」
「それのどこが悪い?」
「別に悪くないが、実はオレに言わせると放送コードが無い「映画」と言う媒体におけるアニメ作品のクオリティは勃興期のOAVと大差ないレベルだ。少なくともある時期まではな」
「もしかして…」
「実に下らん、しょーもないのも大量にある」
「お前の主観じゃねえか」
「かもな。だが、老若男女が“とりあえず”楽しめる程度のクオリティを担保してある日本のテレビアニメの底力を舐めるなよ?決して平均点よりも高い点数は取らないが、落第点も取らない」
「AKIRAは傑作だろうが」
「ああそうだよ!『AKIRA』も『王立宇宙軍 オネアミスの翼』も大傑作で最高だ。だがな、オレは決して人には薦めない。ましてやこれから日本アニメ観ようとしてる初心者や子供になんか絶対に見せん!」
「…そりゃ子供には…」
「これは出来どうこうじゃないからな?『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』は大好きな映画だが決して人には薦めない。それと同じだ」
「オネアミスは…スゲエだろうが」
「だから凄さは否定せんとゆーとるだろうが!延々とディティールばかり続いて何の進展も無いストーリー、良く分からん宗教解説、やっと活劇シーンかと思えばレイプ未遂…」
「なんつー恣意的な説明だ。そんな調子ならどんな映画でもつまらなく聞こえるぞ」
「マジで訊くがな、いい年こいて一周して凄さが理解できるようになる前、子供だった頃に「王立宇宙軍」みて本当に面白いと思うのか?『大長編ドラえもん』みたいに心躍らせて目を輝かせて観られたのか?どうなんだ?」
「…そりゃ…そういうのに比べれば退屈だけどさ…」
「確かに最後の打ち上げシーンは燃える。しかし分かりやすいのはそこだけだ。主人公のおっさんがムキムキの脚にプリーツスカート翻して逃げ惑うシークエンスはどう感情移入していいのか分からんから困るだけだったぞ」
「…あれは、普通に殺し屋が来てだな」
「だったらもっとちゃんと演出しろって…まあ、後に敢えて淡々と演出したことが漏れ聞こえてくるんだがね」
「俺はあの映画を否定したくないね。重厚なBGM、複数デザイナーによる小道具に至るまでの徹底的な異世界再現…最高じゃないか」
「それはそれで構わん。オレが不思議なのは、テレビアニメで世界を席巻した日本アニメはどういう訳か映画となると途端につまらなくなるってこと」
「オネアミスをつまらんとは本当にオタクか?」
(続く)




