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日本アニメの神髄は「テレビ」である その3


「それに対して『劇場版』は長くても2時間程度しかない」


「この頃の映画はもっと長いぞ」


「アニメ映画ってのは短いものだったんだよ。60分とか80分とかな。2本立て3本立て前提だったからな。『天空の城ラピュタ』は2時間6分あるが当時としては驚異的に「長い」アニメ映画だった」


「分かったよ」


「この状況で「キャラクターに馴染んでもらう」ヒマなんぞ無い。ストーリー中心にならざるを得ない」


「ふん」


「だから「映画」と言う媒体と「アニメ」という媒体は…少なくとも我が国に於いては…致命的なくらい「食い合わせ」が悪いのさ」


「…だからジブリアニメは…」


「もう少し待てって。ただ、「映画」には「映画」のメリットもある」


「何だよ」


「時間が短いってのはそれ自体が最大の武器でもある。何しろ2時間あれば全部体験できるんだからな」


「…?当たり前だろ」


「そこが分かってない。例えば『ターミネーター2』は個人的には余り好きじゃない映画だが、その凄さは認める」


「普通にスゲエだろ」


「なら、あれが2時間の映画じゃなくて、1回45分全26話のテレビシリーズだったらどうだ?」


「…それは…」


「評判には勿論なっただろう。あの特撮の「何でもありCG」は直前の「ABYSS」という先駆者こそあれ、まるでオーパーツだ。ただ、『ターミネーター2』の最大の強みは「2時間しかない」ことは間違いない」


「そうかなあ…」


「いくら『機動戦士ガンダム』が面白いからって、全くの未見の人間に全43話、都合20時間になろうというテレビシリーズを全部観てくれ!…とは軽々に言えないだろ」


「…まあな」


「それに対して映画なら長くても3時間だ。少なくとも「観る」ハードルは大幅に下がる」


「…やっと少しだけ分かって来たぞ」


「アニメってのは入るのが大変なジャンルなんだ。だからこそ先行者が選民意識で「にわかが」みたいなことを言いやすい」


「やだねえ…」


「言われる方はたまらんだろうが、言う側が気分がいいのは間違いない。仮に「それなら!」と一念発起した一般人氏が地獄のガンダムマラソンで20時間近くかけて「ガンダム」を全部観たとする」


「ふむ」


「どんな感想を漏らすにしろ、オタクが言うことは簡単に予想できる」


「む…」


「そんなんじゃ、ガンダムを真の意味で楽しんだことにはならん…ってな」


「み、耳が痛い…」


「毎回一話完結で「テレビアニメ」が作られている…仮に続き物であったとしても、OP・EDがあり、始まりと終わりがある設計になっている以上、続けざまに観るのが『視聴姿勢の本来の姿』であるかと言われれば否というしかない」


「…」


「この一点だけ見ても、テレビアニメ…ということは日本のアニメ…は、「お馴染みのキャラクターを長期間かけてダラダラとお付き合いする」という趣向の趣味・娯楽である…と言い切れるだろう」


「何だよその悪意のある表現は…」


「敢えて分かりやすく言っただけで他意はない。この頃「インターネットラジオ」あるだろ」


「あるな」


「あれで所謂いわゆる「中の人」…声優さん…に司会をさせて、アニメ本編が終わった後にまでアニメ世界にどっぷり浸かろうとしてる傾向が助長されてると思わんか」


「しかし、この頃のアニメラジオは看板はアニメのタイトル掲げてるが全く関係ない話をしたっきり終わるようなのも多いぞ」


「じゃあ聞くが普通のテレビドラマや映画に「中の人」が司会するラジオ番組があったりするのか?「ジャック・バウワーの24ラジオ」とか放送されたりするのか?「周囲のジャックみたいな無茶する人コーナー」にメール募集してたりするのか?」


「はい、ではCTUコードネーム「なんじゃそりゃ」さんからのメールです!…とかか。確かに無いな」


「2時間できっちり終わって…誤解を恐れずに言えば「世界観丸ごと使い捨てる」構造の「映画」と、日本の「世界観、キャラクターにどっぷり浸る」アニメは水と油みたいな存在だ。アニメそのものは半年で終わってるのに、ラジオが2年続いてるなんてザラだ」


「…本編よりラジオの時間の方が遥かに長いとかな」


「要するに「浸れる世界」を提供するのが役割になってるってことさ。魅力的な…時にエキセントリックな…キャラクターとか」


「…そういうことか」


「読書家や映画ファンなんかは、下手すりゃ毎日の様に「世界観使い捨て」を経験してる。だから一つの作品にそこまで執着することが無い。そんなことしてたら「次の作品」が読めないし観られないからな」


「うん」


「それに対してアニメファンは徹底的に「愛着を感じ」て「愛情を注ぐ」という楽しみ方をする」


「…道理で狭い世界に閉じこもるみたいな言われ方をされると思った」


「オレもオタクだからな。別にそれが悪いってんじゃない。作品の楽しみ方なんぞ自由だ。他人にとやかく言われる筋合いじゃない。それに…」


「それに何だ」


「いちいち世界観を使い捨て、読み終わったり観終わった作品にそれほど執着しない「小説的」でクールな楽しみ方と、どっぷりと世界観やキャラクターに密着して感情的にのめり込む「マンガ的」な楽しみ方の、どちらがより「楽しんでいるか」ということになると、オレはどちらかというと後者だと思う」


「…随分ハッキリ言い切ったな」


「それはとりもなおさず「主観的」で「視野が狭い」もっというと「絶対的」な楽しみ方だ」


「対して「小説的」な観賞態度は「客観的」で「視野が広く」、「相対的」な楽しみ方だと」


「そうさ」


「…つまらん」


「そう!その通り!」


「ビックリしたあ」


「そもそもきちんと現実とフィクションを「価値相対化」出来る人は、そもそも創作物に「のめりこむ」こと自体が無いのさ」


「どうせ現実じゃないってか」


「ああ。アニメ的…「マンガ的」な観賞態度ってのは、そもそもその境界線を崩してどっぷり浸るところがミソな訳だ」


「…でも、世界観のある映画だってあるぞ。「スター・ウォーズ」とか」


「それこそそういうテレビ的な文法が映画に「輸入」された例だろうが。元々たった一遍だったものが全9部作の「スター・ウォーズ・サーガ」扱いに整備されたんだ」


「9?6じゃなくて?」


「最初は9だったんだよ。それにルーカスの手を離れて7から9も映画化されることになったろうが。ともかくこの「世界観にどっぷりハマる」ってのは正に日本アニメが大得意とする独特の手法だったのさ」


(続く)

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