表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

2

 ルシアスには、前世の記憶がある。思い出したきっかけは、とある執事の放った言葉でだった。


◆◇◆

「あぁっ!!その目!!良いぃっ!!」


 ルシアスは、自分の目の前でクネクネと動いている執事の、メイソンを思わず子供ながらに気持ち悪いと、感じた。

 そして、そこは子供。思った事を、口に出してしまった。


「メイ・・・きもちわるい」


 舌足らずなその言葉を、聞いたメイソンはショックを受ける所かますます、喜んだ。目がうるうると潤み、形の良い唇からは「はぁはぁ」と変態チックな吐息、頬は真っ赤に染まっていた。

 その姿を、客観的に彼を知らない人が見れば、色っぽく、官能的に見えるだろうが実際は、どんなに容姿が良くても、ただの変態。


 メイソンは、すすすとルシアスの足下まで行くと、そのまま足に抱きついてきた。ルシアスはぎょっとし、足を引こうとするがメイソンの抱きつく力が強く、動けない。


「っ!?メイ、はなしてっ!!」

「あぁんっ!!ルシアス様、もっと。もっと!!『(ののし)り』、『(さげす)み』、『見下(みくだ)して』下さいぃいっ!!」


 その時、ルシアスは恐怖したと同時に、頭の中に鮮明に記憶が入ってきた。


(ののし)って!』『(さげす)んで!』『見下(みくだ)して!』という三拍子、前世の高校時代にもよく言われていた言葉だった。

 そして、そうやって三拍子揃って言われると、前世の自分は癖で悪役王子を演じていた。そう、癖で。


「よくもまあ、そんなミジンコ以下のくせして、この私に抱きつけられるもんだね」


 そこに居たのは、幼い王子のルシアスでは無く、悪役オーラー全開で冷たい声を出す、前世の(みつる)だった。

 そして、軽くメイソンの手に足を乗せ、体重をかけた。

 子供だと言っても、一点に体重を乗せられたら、痛い。それでも、メイソンは痛がる声を出す所か、「あぁんっ!!」と気持ちの悪い声で悶えている。

 その気持ちの悪い声を聞いた瞬間、ルシアスはハッと我に返る。


 しまった・・・!前世の癖で、悪役王子を演じてしまった!!


 ルシアスは、目に見えて落ち込んでいく。そして、落ち込んでいくルシアスとは反対に、メイソンは喜んでいた。今も、グリグリと自身の手を踏んでいるルシアスの足に、頬を擦りつけている。


 そして、その三拍子の言葉を言うと、ルシアスがメイソンの望む事をしてくれると学習した執事。

 彼は、ルシアスと二人きりになるとその、魔法の言葉を唱えた。


 一通り、ルシアスの悪役王子が出た後には、ゲッソリしているルシアスと、ツヤツヤになったメイソンが居た。


◆◇◆

 ルシアスは、兄弟達に癒されていた途中で、前世の記憶が(よみがえ)ったきっかけを思い出した。

 その事に、げっそりとする。

 そんなルシアスに気づいた、シルビオはそっとルシアスの頭に腕を伸ばす。


「ルーも、頭なでなで?」


 そう言いながら、シルビオはルシアスの頭をそっと撫でた。

 その事に、ルシアスはキュンッとした。そしてはにかんで、シルビオにお礼を告げる。

 お礼を告げられたシルビオは、照れてそっぽを向く。

 その弟の様子に兄達は、目を細め、微笑んだ。


 そこには、とてもほのぼのとした空気が流れていた。



 彼らは知らない。王宮にいる執事や侍女達が彼らの姿に、興奮していたことを。一生、知りたくない出来事を、彼らは大きくなって知ることになるのかは、まだ、判らない。

王宮は、変態でいっぱい・・・。




ご閲覧、ありがとうございました。

お気に入りや、評価、感想など頂けたら作者が嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ