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第19話:拠点防衛(あるいは、ダム決壊阻止ミッション)

 勇たちが生活の拠点としている「地下倉庫」は、セレナの神力で守られているとはいえ、長年放置されていたためガタが来ていた。特に、勇の質量による地圧の変化は、拠点の地下水脈に悪影響を及ぼし始めていた。


「このままだと、拠点の生活用水が止まっちゃうわ。勇、隣町のリバレーに行って、水路を安定させるための『古代の加圧ポンプ』と、貴方の重さに耐えられる『強化石材』を調達してこなきゃ」


 セレナの提案により、一行は拠点から数日の距離にある峡谷の町・リバレーへと遠征することになった。もちろん、移動は「勇が神輿を担ぎ、三人がそこに鈴なりになる」という、あのスタイルである。


 だが、到着したリバレーは、資材の取引どころではない大混乱に陥っていた。


「ああ、そこの神輿の御方! 助けてください! 街の上流にある巨大ダムが、先日の地響き(※勇が地上に出た際の振動)で亀裂が入り、今にも決壊しそうなのです!」


 勇は責任を感じた。自分の「重さ」が、遠く離れたこの町のインフラにダメージを与えていたのだ。


「……セレナ。俺のせいで起きたことなら、俺が片付ける。資材の調達はその後だ」


 勇は神輿を下ろすと、三人を引き連れてダムの基部へと向かった。  ダムの石壁からは、恐ろしい勢いで水が噴き出している。


「ヒルダ、俺の右腕をホールドして重心を固めろ。リネット、左から風圧をかけて俺の姿勢を垂直に保て。セレナ、俺の足元を魔力で固めて、ダムの土台が抜けないようにしろ!」


「「「了解であります!」」」


 勇は、噴き出す水の圧力に真っ向から立ち向かった。  普通なら水圧で弾き飛ばされるところだが、1万4400倍の相対質量を持つ勇は、濁流の中でも微動だにしない。


「……リミッター、人差し指だけ一部解放!」


 勇は亀裂の奥深くに指を突き立てた。  彼が指に力を込めると、その指の「引力」によって、周囲の崩れかけた石材がバキバキと勇の指に向かって凝縮され、密度を増して固まっていく。


「さらに……これだ!」


 勇は、拠点から持ってきた「予備の強化石材の破片」を両手で挟み込み、渾身の力でプレスした。  ギュゥゥゥ……ッ! という金属音のような音が響き、石材は勇の密度と同等の「超高密度プラグ」へと成形された。


「ふんっ!!」


 勇がそのプラグを亀裂に叩き込むと、激しい浸水は一瞬で止まった。勇の圧倒的な質量が、ダムの構造的な弱点を物理的に「上書き」してしまったのだ。


「……ふぅ。これでダム全体の強度も上がったはずだ」


「流石は師匠! まさに神の如き土木技術……このヒルダ、一生ついて参ります!」


 ヒルダが勇の腕に頬を寄せ、リネットも背後から首筋に顔を埋めて「……すご。私のアンカーは、世界一頼りになるわね」と熱い吐息を漏らす。


 勇は、拠点の修理に必要な資材を無償で譲ってもらえる約束を取り付け、ホッと胸を撫で下ろした。  平均的な生活を守るための遠征が、結果として一街を救う英雄譚になってしまったが、勇にとっては「拠点でおいしい水を飲み続けるため」の、極めて工学的な解決に過ぎなかった。

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