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第18話:一人神輿の怪進撃(担ぐ男と、吸い付く女たち)

「……なぁ、やっぱりこのスタイル、目立ちすぎじゃないか?」


 街道を進む勇は、自嘲気味に呟いた。  今の彼は、一人で巨大な黄金の神輿を肩に担いでいる。勇にとって、この世界の物質で作られた神輿は「1200分の1」の重力も相まって、もはや重さを感じない紙細工のようなものだ。


 だが、問題はその「乗り方」だった。


「いいのよ、勇。貴方が地面を直接踏む面積を最小限にするには、この神輿の底板を介して圧力を分散させるのが一番効率的なんだから」


 セレナは勇の首に後ろからしがみつき、神輿の屋根からぶら下がるような形で勇の背中に密着している。


「師匠! 右側のバランス、私が拳一つ分浮かせて調整しております! さあ、もっと堂々と歩いてください!」


 ヒルダは神輿の担ぎ棒に掴まりながら、勇の右腕を抱え込み、自身の怪力で神輿が傾かないよう「物理リミッター」として機能している。


「ふふ……この揺れ、最高に落ち着くわ。勇、私の風魔法でもっとふわふわさせてあげるから、思いっきり踏み出してみて?」


 新加入のリネットは、勇の左肩に座り込み、彼の首を両腕で抱えながら、翼を羽ばたかせて神輿全体に浮力をかけていた。


 客観的に見れば、**「一人の男が巨大な神輿を担ぎ、その男の首や腕に三人の美女が鈴なりにぶら下がっている」**という、極めて異様な、あるいは羨望を通り越して恐怖すら覚える光景である。


「おい、見ろよ……あの男、一人で神輿を担いでるぞ」 「それどころか、女たちを三人もしがみつかせて……どんな怪力なんだ?」 「まるで歩く山だな。あいつが通るたびに、地面から地鳴りがしてるぞ!」


 すれ違う旅人たちが、道を開けて震えながら見送る。  勇は平均的な日本人の顔立ちで、爽やかに微笑もうとしているが、その足元では石畳がミシミシと悲鳴を上げ、彼が吐く息ひとつで街道の街路樹が激しく揺れていた。


「……リネット、あまり首を絞めるな。くすぐったいし、風が耳元でうるさい」


「えー、だってこうしてないと、貴方の引力に吸い込まれて神輿の壁に激突しちゃうんだもん。……あ、でも、この筋肉の硬さ……やっぱり癖になるわね」


「ちょっと羽毛女! 勇の首筋に鼻を寄せないでよ! 術式が乱れるでしょ!」


「セレナ様こそ、背中に密着しすぎではありませんか!? 師匠の背骨が女神の柔らかさで溶けてしまったらどうするのです!」


 神輿の上(と勇の身体の上)で繰り広げられる、三つ巴の領土争い。  勇は、1万4400倍の自重に神輿の重さを加え、さらに三人の美女の情念という「精神的質量」まで背負いながら、一歩一歩、慎重に大地を踏みしめていく。


「……はぁ。せめて、平均的な『おんぶ』一回分くらいの疲れで済めばいいんだけどな」


 勇の切実な願いとは裏腹に、リネットの風魔法によって加速した「人間重力兵器」一行は、凄まじい風圧を巻き起こしながら、次の目的地へと爆走を開始した。

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