百色の光
とあるところに4人の子どもがいた。
名前は、「あか」「あお」「みどり」、そして「しろ」
「あか」は、おこりっぽいが、誰よりも強かった。
「あお」は、笑わないが、誰よりも頭が良かった。
「みどり」は、怠け者だが、誰よりも優しかった。
「しろ」は、何もなかった。
悪いところもなければ、誰よりもすごいところもなかった。
「しろ」は、そんな自分が嫌いだった。
「ぼくだって、誰かよりすごいところがあるんだ。」
「しろ」は、自分を探す旅に出た。
誰かよりすごい自分を見つけるために。
旅を出てすぐ、「きいろ」に出会った。
「きいろ」は、お調子者だったが、いつも誰かを笑顔にしていた。
「しろ」は、悲しんだ。
「ぼくは誰かを笑顔にすることはできない。」
次は「ブラウン」に出会った。
「ブラウン」は、口数は少なく無愛想だったが、いつも誰かの道標になっていた。
「しろ」は、また悲しんだ。
「ぼくは、誰かの目標にはなれない」
今度は「むらさき」に出会った。
「むらさき」は、飄々としていたが、いつも誰かに尊敬されていた。
「しろ」はもっと悲しんだ
「ぼくは、誰かに尊敬される人にはなれない」
最後に出会ったのは「くろ」だった。
「くろ」は、今まで出会ってきた人とは全然違った。
その目は、どこまでも遠くを見つめていて、吸い込まれそうだった。
「くろ」は言った。
「お前は何色になりたいのか。」
続けて言った。
「なんでもいいのなら、俺がお前を染めてやる」
すると「しろ」のいた世界は、色んな人に出会ってきた世界は、全て黒に包まれていった。
「しろ」は、怖くなった。
「ぼくが望んだことで、世界が全て黒く染まってしまう。」
「誰もが輝けるあの世界へ戻さないといけない。」
だけど「しろ」には、力が出なかった。
「しろ」は色んな人に出会ってきて、自分が何色なのか、わからなくなってしまっていた。
「しろ」は叫んだ。
「ぼくには力がない。何色にもなれない。だから…、どうか、どうか…!この声が届く誰か…!世界を輝かせて…!」
次の瞬間、懐かしい声が聞こえた。
「届け、あいつのところへ」
「届いて、あなたのいる場所へ」
「届きますように、あの方の元へ」
三人の手から、赤と青と緑の光がそれぞれ生まれ、真っ黒な世界へ登っていく。
三つの光は徐々に重なり合い、やがて一筋の白い光となった。
強く後押しするように、静かに諭すように、優しく励ますように、その一筋の光は大きく弧を描いて「しろ」に届いた。
「しろ」は、何にでもなれる可能性と、誰かを輝かせる力を持っていた。
その色は、その光は、希望にも道標にも、敬意の象徴にもなる。
夕日が落ちる海、夜空に光る星、朝露で輝く森
この世界は様々な光に満ち溢れ、「しろ」自身の力で照らしていたことを思い出した。
「しろ」は、この美しい世界で、今度は誰かに染まるのではなく、誰かを輝かせるために、強く願った。
真っ黒の世界に1つ、また1つと光が流れ、それは数えきれないほど増えていき、
真っ黒に包まれた世界は、元の輝きを取り戻していった。
「ぼくは何もなかったわけじゃない。ぼく自身が気付けてなかったんだ。」
自分自身の力とその無限の可能性、様々な色の大切さを知った「しろ」はもう悲しんだりしない。
だから「しろ」は、もう一度旅に出ることにした。
「君も一緒に来るかい?」
「しろ」は、力を失った「くろ」に呼びかける。
「くろ」は小さく頷いた。
2人は旅に出る。
これはキラキラと輝くこの世界を、もっと知るための物語。




