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烏賊戦記  作者: シロノクマ
*三章*ゲソ汎用性が留まるところを知らない
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15話:烏賊と王女とエルフと

 謎の全身ローブ異形魔族とチンピラの怪しい取引現場にて、危うく売り飛ばされそうになっていたエルフの美少女『ルナ』をスクイドが偶然救出した翌日の朝。


 スクイドとエステルは〈学園都市機構バベルディア〉における最高責任者である『学園長』の自宅へと訪れていた。


 スクイドが救出したエルフ美少女は、なんと都合のいい事に『学園長』の一人娘であった。


「わたくしがご招待いたしましたのはスクイド様です。甲斐性のない王女など呼んでおりません。

 スクイド様ぁ? もういっそ、こんな最底辺王女なんて放り出してわたくしの護衛、いえ、スクイド様さえよければ夫、いいえ、いっそ都合のいい女でも構いませんけど……」


 イザベラほどではないが程よい弾力と衣服越しにもわかる美しい形状の胸が長椅子の中央に座るスクイドの隣からその腕を抱擁する。


「スクイドは私の近衛軍、そして隊長です! ですが、そんなにスクイドが気に入ったのであれば、お腹の真っ黒な主席様も私の近衛に入隊するチャンスを与えてあげてもよろしくてよ?」


「フフフフ、笑えない冗談ですわ?」


「そうかしら? とてもユニークだと思いますけど?」


 迎え打つエステルは余裕の態度を崩さない。


 むしろスクイドを餌にルナが手駒となるなら大歓迎だとでも言いたそうな雰囲気すら醸している。


「ま、まあまあ……君たちね、一応ワタシの前だと言うことを忘れないでくれるかな?」


 対面の席から修羅場の様相を呈し始めているスクイドたちに向かって遠慮気味に声をかけたのは麗しいとすら表現しても差し支えないほどに容姿の整った耳の長い美丈夫。


 しかしスクイドの目には外見には現れない魔力の質から目の前に座る『エルフ』が最低でも齢五百歳は超えていると判断した。


 ちなみにルナは外見通りの年齢とスクイドは見ている。


「お父様は黙っていてください!」


「学園長、この度はお招き頂き光栄に思います。で、今回、()()()()が大切な御息女を救った功績についてですが——」


「まあ! なんて図々しいのかしら、この底辺王女様は」


「ふん、なんとでも。あなたはお気に入りのスクイドとその辺で戯れていたらよろしくてよ」


 永遠と口論を続ける二人にため息を漏らしながら目の前の美丈夫は優しげにその瞳を細めてスクイドへと向けた。


「招いておいて早々騒がしくてすまないね。改めまして、ワタシはここ〈学園都市機構バベルディア〉で『学園長』を任せられているプルトです。この度は娘の危機を救ってくれて本当に感謝してもしきれない——心から、御礼を伝えたい。ありがとう」


 言いながら学園長プルトは深く頭を下げてみせた。


「ふむ。自分は素体情報で言うところの『テンプレ』という場面に遭遇したので則した行動をとったに過ぎない」


「テンプ? ふふ、よくわからないけど謙虚で良い子だ。

 稀にワタシを『王』や『貴族』と勘違いして馬鹿な事件を起こす輩がいてね。ワタシなんて、ただ〈評議会〉から選ばれただけの中間管理職に過ぎないと言うのに……今回何故〈異形種の魔族〉から娘が狙われたのかは調査させているけど、それよりも。娘はワタシにとって命よりも大切な存在だ。

 それを救ってくれた君にワタシは報いたい。なにか、出来ることはないかな?」


 プルトに問いかけられスクイドは思案する。要望、即ち即座に叶えたい欲求は何か、と。


「……ふむ。今のところ望みはエステルとの触手」


「スクイドを! 学園に編入させて下さい!!」


 スクイドの発言を激しい声色と勢いで色濃く塗りつぶしたエステルは荒く肩で息をしながら血走った双眸をプルトへ至近距離で叩きつけた。


「え、あ……ああ、一先ず落ち着きたまえエステル嬢。スクイド君は、何か言いかけていなかったかな?」


「……、自分は」


「お父様! 業腹ではありますけれど最底辺王女にしては良い案ですわ! スクイド様をお父様の職権フル活用で、わたくしと同じクラス! 尚且つ隣の席にして差し上げて!!」


 前門の虎、後門の狼とでも言うべく両者から凄まれているプルトは、


「あ、うん。そ、それでいいのかな? スクイド君は——」


 瞬間、悪鬼羅刹もかくやと言うべき形相でスクイドを射抜くエステルと、これでもかと全身を絡ませた上目遣いなルナとの狭間、混沌に陥るエンシェント・カオス・クラーケン。


「……了承した」


 頷くほかなかった。


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