甘噛み
わたしがお母さんを甘噛みするときにはちゃんと噛み方というものがあるのよ。
お母さんの顔を見ながら噛むの。
お母さんもわたしを見ているわ。
そう、お母さんとわたし視線を合わせながら、ゆっくりと噛むの。
じわじわと噛む力を強めていって、お母さんが
「痛い」
って、言ったら噛むのはやめて口を離すわ。
お母さんがわたしを見ていないときやお母さんが寝ているときには、いつも「痛い!」って言う、少し手前の力で噛むことにしているわ。
視線を合わせて噛むときにはちょっと噛む力が強くなりがちですもの。
わたしの歯型がしっかりとお母さんの手に残っているのよ。
お姉ちゃんはわたしが噛むときだけ、オーバーリアクションなの。
どんなに弱く噛んでも
「痛い!!」
って、言うのよ。
噛まれるのはお母さんと違って好きじゃないみたい。
一度、ハナがいるところでお姉ちゃんを噛んだの。
「痛い!」
って、言ったお姉ちゃんにハナがとてもびっくりしてたわ。
それからしばらくは、ハナがいる時にはわたしはお姉ちゃんに近づけなくなったの。
ハナがお姉ちゃんのひざの上に座って、お姉ちゃんに抱きつき、お姉ちゃんを守っているのよ。
わたしがお姉ちゃんに近づくと、
「ポン ダメ! 」
と言って、お姉ちゃんのひじや腕をハナの手で庇うの。
庇うハナの手は震えていたわ。
震えながらでも大切な人を守るって素敵なことね。
お姉ちゃんはすごく感激してたわ。
泣きながら逃げてまわっていたユウとは大違い。
ハナはおままごとをする時にはお父さん役、お姫様ごっこのときには王子さま役、戦いごっこのときにはお姫さまを守って戦う騎士役をするのが好きなの。
その時のお母さん役、お姫さま役にはいつもお姉ちゃんを選んでいるわ。
お姫さまが出てくるお話が好きだから、王子さまや騎士に憧れるのかしら?
震えるほど怖くても、大切な人を守ろうとするハナはきっと素敵な騎士さまになれるわね。
貴方もそう思うでしょ?




