01-05
01言葉と剣
言葉は剣
ヒュン ヒュン ヒュン
そらを斬り
夢見るペンギンは
踊り出す
02若葉
割れきった若葉が生える春終わりのひはまだ冷たい
03杉の樹
杉の樹が
どーんと立って
突っ立って
張り手して
四股踏んで
捻挫して
酷く痛い思いをして
幹に寄りかかって
杉林は寄り添いあい林立し
道程で足をひきずっては歩く
遠く長い小路
04地球儀
鈍い鈍い夜の空に
磔にされた糸車が
クルクル回る
糸の先は黄色い針を求めて
どこか遠くへ消えてった
桜色したオットセイが
寝しょんべんして
怒られて泣いた
地図のない地球儀が隣で慰めるように回ってた
無数の鳥の群れが飛び立って
間違った方向で
ぶつかり合っては交差してゆく
鳥たちの光跡のカサブタは剥がれ落ちてった
いつの間にか糸は途切れ
オットセイは裸になり
群れの鳥は静まりかえる
幸せなんてくれてやれ
不幸面なんか蹴っ飛ばせ
宇宙の屋上で
地球儀は回り回る
軸がブレながら狂ったように
果てしなく回し続けてる
05彷徨い歩く
月夜のなかの真昼を
方向もわからないまま
心の向かう方へと
歩んでいく
暗闇の帳は地平まで落ちて
真っ暗だ
地表だけが明るい
申し訳程度に地面が見える
地図もないそんな場所で
向うにはたぶん
見覚えがあるような
あるいは
まだ見たこともないような
そんな地図が拡がっているのだろうか
たとえば
はがき裏に悪戯で描いたような
音楽的な小窓のついた部屋と
長椅子とかがあるのだろうか
それとも
赤い長靴を履いた
大怪獣が闊歩する脇のビルの中で
街が壊されていくのを
眺めているのだろうか
彷徨いながら
ひたすらに歩いてゆく
もし辿り着いたら
ぼくはそこであくびする