第98話 細剣
4年前、ラグナ一行に大魔族が討伐されたが、魔族の残党に国は苦戦していた。その日も普段とは変わらなかった。
「........」
街にはいつも通りの平和が続いていた。そして、その時既に王都では失踪事件がいくつも起きていた。
「また子供がいなくなったんだってさ」
「怖いね.....うちの子は大丈夫かな.....」
平民の話が巡回中のヴォルガーの耳に入ると、同期の騎士がヴォルガーに話しかける。
「怖いね、こういうことは騎士のみんなで解決しないと!」
今でこそ門番の彼ではあるが、昔はペアとして行動していた。ヴォルガーは少し考えると口を開く。
「失踪事件.......誰がそんなことを......人の仕業なのか......?」
平和を着飾りながらも人がいなくなる、そんな日々はずっと続いていた。
〜深夜〜
人々が寝静まると、魔族は動き出す。ヴォルガー・ハンスレットの正体は、半魔族である。
彼の母は人間であり、母1人の育てられた。父は消息不明、討伐された可能性も高い。彼の母は常に魔族と人の共存を望んでいたが、ヴォルガーが15歳の時に死去。彼は騎士として努力し続けた。
ヴォルガーは黒い仮面とマントを着用すると、家の外へ飛び出す。
闇夜を月の光が屋根を照らす中で、ヴォルガーは走り出す。王都の人口の内で1割は魔族であった。
物音がすると、ヴォルガーはそこへ走り出す。
「........なんだお前———」
その瞬間、ヴォルガーの剣が魔族の目の前に突き刺さる。
「.....なんだ....魔族じゃないのか....!?」
「今すぐにここから去れ」
ヴォルガーの言葉に魔族は怒りを見せて能力を発動しようとするが、その瞬間にヴォルガーの剣は心臓部直前まで迫っていた。
「もう一度警告する、ここから去れ」
魔族は黙ってそのまま去る。ヴォルガーの夜の姿、魔族でありながら人を守り魔族を生かす。どちらの味方でもない。
「誰.....?」
子供がヴォルガーをその漆黒に姿を見て口を開くが、すぐにヴォルガーはその場から姿を消すのであった。
いまだに失踪者を零にはできないが、それでも精一杯にやっていた、人間にも魔族にも、彼は感情移入していた。
「なんだ.....今日は.....騒がしいな」
騒ぎの元へ向かうヴォルガーが見たのは、今まさに殺され、灰へと崩壊する魔族の姿、そして屋根を伝う。1人の影であった。
その時、時空が歪む。
「あの者を許していいのか?」
その声と共に、目の前に黒い服に十字架のペンダントをぶら下げていた、緑眼で猫のような縦長の瞳孔の男が現れる。
「理由すらわからず、殺意を向ける。そんな者を野放しにしていいのか?」
その問いに対して、私はどう答えるべきかわからなかった。
既に失踪事件の発生を減らすことに成功し始めている。だがいまだに完全に食い止めることはできてない。おそらく魔族を殺しているのは恨みがある者なのだろう。家族を持つものも含めて魔族を殺し、ありのままに生きるか、騙し騙し生きることで、平和になるのか。どの選択が正しいのかは.....わからない。
今ここで魔族全てを切り捨てるべきなのか。
人ならば魔族を悪と捉え、簡単に決断できるだろう、だが私は半端な魔族でしかない。王都の魔族は今、変わり始めている。私の忠告を聞き、人を殺さない魔族が増え続けている....私は彼らの可能性....共存の道を信じたい....
「答えなんてわからない、だけど.....俺は見過ごせるほど強くない.....」
「つまらない答えだ、だが悪くない。授けよう、我が恩寵、細剣を」
目の前に現れたのは、刀身が何重もの糸で構成された剣がヴォルガーの目の前に現れ、男の姿は消えた。




