第96話 過去と静墺
〜下水路〜
「.......誰だ.......仲間じゃない.....」
マルクスの問いに答えるかのように、仮面を外す、それはリルートであった。
「.....なぜ....お前が...........」
マルクスは困惑している、仲間たちもそうだ。この行動自体は敵対を増やす危険行為に過ぎない。国すらも敵に回す行動であるから。だが、考えが正しければ、もっと問題が起き始めている。違うのなら戻ればいい。
「嘘はいらない。マルクス、王都で....あの夜に何があったの.....?」
リルートの言葉に対してマルクスは驚き、瞳孔が広がる。まるで神を見たような。だがマルクスはすぐに表情が暗くなり口を開く。
「......王都で人を殺した.......それだけだ」
マルクスはそう言って言葉を濁す。信用してない顔、だがリルートのその真剣な表情を見て暫く俯くと、ゆっくりと口を開くのであった。
「俺は———」
*****
11年前、マルクスが8歳になったばかりの時であった。王都から離れた山岳地帯にある小さな村、だが一年に一度、人がとてもよく訪れる村だった。
「今日は星が見えるの?」
ワクワクしながら言うマルクスの問いに対して母はにこやかに青空を指差すと答える。
「今日の夜は1年に一回の大誓星が見える日だからね、旅人も多いからはぐれないようにね」
「うん、わかったよ」
マルクスはコクリと頷く。村には既に旅人が来始めていた。一年に一度だけ見える巨大な星、それを求めて人が集まるのだ。
マルクスは牛舎に行くと地面を掃除し始める。牛と干し草の匂いに囲まれながら、夜への楽しみを募らせて。
〜〜〜
山に登り、人々は星を眺めていた。星は月よりも巨大に見える。明るく、まるで日食のような星。皆が星に何かを誓う。健康か、信念か、目標か、夢か、様々な願いが飛び交う中で、少年の思いもそこにある。
ずっとみんなが幸せに過ごせますように———
燃え盛る炎、崩れる家々、そう、この世界には理不尽が溢れている。そんな当たり前のことを、齡8歳にてマルクスは知った。
燃えて黒炭に近い状態になった母の亡骸を抱いていた。涙がポロポロと流れる中で、黒い煙が延々と流れ続ける。
「最後の1人は....子供だったか」
その言葉にマルクスが振り向くと、そこには返り血に塗れた魔族がそこにいた。
「残念だよ、僕にはこんな小さな子しか残してくれないなんて....でもせめて....楽しませてよ」
その瞬間、魔族の拳がマルクスの顔面にぶつかる。
「がっ———!!」
顔面に走る激痛と共に衝撃がマルクスを襲う。
大きく吹き飛ばされ、マルクスはなんとか立ち上がろうとしたその瞬間、もう一撃は胸に命中し、立ち上がることが難しい。力が入らず、目の前には嬲られ死ぬ運命がそこにあった。
既に痛みで満身創痍だった。だがその時、世界が歪み.....止まる。
「お前は何を思う?」
その声と共に、目の前に黒い服に十字架のペンダントをぶら下げていた、緑眼で猫のような縦長の瞳孔の男が現れる。
「村を滅ぼした魔族をそう思う? 怒り、悲しみ、不幸に見合わせた魔族たちを、お前の感情は.....何を思う?」
「.....魔族を.....滅ぼしたい........」
始めることに抵抗はない。戻れないだろう、楽になる日は一生来ない可能性すらある。だがこの気持ちは、この臓物を焼き尽くす業火の炎は言った。
「いい答えだ。私の恩寵である“崩剣”を授けよう」
その時、崩剣が地面に落ちる。
崩剣は重かった。大岩のようで、とても子供に持つことができる重さでは無かった。だが、[魔剣]がそれを持ち上げる。
その剣をみた瞬間、魔族は人差し指をマルクスに向けると、指先から光の柱が飛び出し、マルクスに向かって飛ぶ。
マルクスはその光を崩剣で受けようとする。
(僕の能力は[ビーム]、光という現象を受けようが、そんなの意味が———)
その時、光の柱が[崩壊]し始めるのを魔族は目にした。だがその時、魔族の目の前にまで崩剣は迫っていた。
その瞬間、魔族の首は落ち、死体は灰へと崩壊し始めるのであった。




