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第90話 破片

 「.....なかなか厄介な能力だな...!」

 啖呵を吐くフレッドに向かって少女は無言でナイフを投げる。

 ナイフ自体は視認できない、速度自体は普通だ。

 フレッドが剣を振るった後も斬撃の軌道に合わせて軌跡が残る。


 「聖剣の類い.......」

 少女がそう呟くとフレッドはナイフを弾きながらも答える。

 「そうだ、[残剣].....剣戟の軌跡がしばらく残る、それだけだ」


 ([透明化]も厄介だが.......ナイフが尽きねえ......)

 もう何度もナイフを避け続けてるがいまだにナイフが尽きない。音からして少女が一度に投げるナイフは4本から5本ほど。フレッドが捌けないほどではない。


 「いや......違うか......?」


 物を透明化する能力ならもっといい方法がある。例えば罠を使えばもっと機能するはずだ。だが今まで戦闘中で一度もそんなものはない.....そうなると触ってすぐの間だけか.....?





 [剣熟練]、フレッドの恩恵がわかったのは齢4歳頃である。村で初めて木の剣を持ち、冒険者の叔父と軽い模擬戦をした時。



 叔父の木刀は開始5秒で地に落ちた。

 筋力や反射神経も並の子供、だが剣を握った時だけ、神童と呼べるような剣士へと成る。それこそがフレッドの恩恵である。




 フレッドはナイフを弾きながら少女の方へ近づく、少女はすぐに後ろへ跳び、距離を取ろうとするが、その時、少女の服の背中部分が切れる。

 少女の意識が背後に向いたその瞬間、フレッドは少女を地面に押さえつけると、ロープで手足を拘束し、手のひらをぐるぐる巻きに縛る。

 「ようやくわかったよ、[アポート]、手元に物を引き寄せる恩恵だろ? 透明化は———」

 そう言ってフレッドが拾ったのは透明なクリスタル製のナイフであった。

 「夜なら確かに見ることはできないし、ナイフは回収すればクリスタル製ともバレない、まあ落ちてないから逆に怪しくなったんだがな」

 「殺るなら........」

 「いや、別に騎士様は殺す必要がないなら殺したりしないさ、それよりも——」

 その瞬間、突如として轟音が鳴り響くと、廃城は崩落し始める。

 フレッドはすぐに出入り口の方へ向かおうとすると、リルートを背負ったラティナが出入り口から飛び出すのであった。

 「リルート.....無事か.....!?」

 「あたし達はね.....ただアモスが」

 フレッドは崩れた廃城を見て言う。

 「崩落に巻き込まれた.......?」

 「あたしもよくわかってないけどね.........中にフォルトナがいた」


 「じゃあ今すぐ——!」

 フレッドがそう言ったとき、ラティナはそのまま地面へと倒れ、意識が完全に飛ぶのであった。






 

 



 ヴォルガーの周りには敵味方問わず死体が溢れていた。その場でヴォルガーに対抗できる者はおらず、数の利はあったものの——



 「ヴォルガー、4人を抑える、頼んだぞ」

 その次の瞬間にクルトは敵の主柱に乗り込むと、斧を振るう。


 剣撃を避けながら1人の腕を切り飛ばすと、もう1人の斧槍を蹴り飛ばす。そして2人がクルトに向かって武器を振るうが、その攻撃はクルトに届くことはなく、4人は心臓を貫かれ絶命する。



 心臓から引き抜かれたそれは、まるで髪の毛ほどの細い糸。ピアノ線が何十本と周りを浮遊し、その全ての線は一つに繋がっている。


 それは、ヴォルガーの持つ剣。剣の刀身自体が鋼の糸でできた聖剣であった。


 「ヴォルガー、一度全体の———ッ」


 その次の瞬間、クルトはとてつもない衝撃を受け、吹き飛ばされる。

 全身に衝撃が走る中でクルトであったが土煙の中で見えたのはマルクスの姿であった。

 

 「まさか最前線にくるとはな、マルクス」

 ヴォルガーの問いかけに対してマルクスは何も答えない。立ち上がれないクルト、斧は[崩壊]し刃が崩れ始めている。

 



 「.....ヴォルガーは俺が相手する......他のところに援護へ行け......」

 マルクスの言葉で他の部下たちはその場から離れる。ヴォルガーの糸刃がマルクスの部下たちに向かって一瞬で伸びるがその瞬間、マルクスが全ての糸刃を弾き飛ばす。

 糸刃は[崩壊]していくが、それでも無数の糸刃があり、殆ど意味を成していないように思えるほどだ。



 「お前を殺してこの因縁を終わらせる」

 ヴォルガーが“細剣”を構えるのに合わせてマルクスも“崩剣”を構える。

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