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第88話 出崩血落

 (人数は12人.....3人は負傷であまり戦力にはならねえか.......)

 イロアスの視認ではエレノアに援護に向かう冒険者が2人、魔法使いが1人、他はレルフェンス相手に躊躇している。イロアスはキョロキョロと周りを見渡すと、[千里眼]を使う。


 [千里眼]は独自の視点を空気中を自由に進み視認できる。だがその間自身の視点で見ることはできない。


 「他にマルクスの増援は———」

 その時、突然重力感を失い、イロアスは受け身も取ることができずに地面へと倒れる。



 「な.....なんだ.....?」

 イロアスはすぐに視点を自身に戻したその時、目に映る木々、そしてベンクトの拳が目の前まで近づいていた。



 「ぐが.....ッぁ.....!!!」

 イロアスは腕でその拳を受けるが、衝撃を芯に受けてしまい、イロアスは吹き飛ばされる。


 腕に電撃が走ったような痛みが走る。おそらく骨折したところだろう、イロアスは腕の痛みに耐えながらも体勢を戻し、周りを見渡す。しかし周りに人はなく、ベンクトとレルフェンスのみだ。

 (ベンクトはどこから現れた.....?土の中を進まれたら確かに気づかないが.....)

 ベンクトの服は土で汚れてなどいない。つまり地中からではない、リルートの話だと[超回復]、つまり俺の探知を抜けて来たってことは.....



 「他に増援がいるかもしれない! 警戒頼むぜ!」

 イロアスはエレノアの援護をしきれず、ベンクトの拳を避けるだけで限界に近い、剣を振るうが避けられ、それどころか拳をくらい続ける。

 イロアス自体は戦闘能力が高くない、中距離からの援護や[千里眼]と合わせての狙撃などである。


 「が......っぁ.....!!」

 顔面に一撃もらい、後ろへ大きく飛ばされる。鼻血が流れ、全身にズキズキと痛みが走る。ベンクトは距離を即座に詰めたその時、斧槍がベンクトに向かって振るわれ、ベンクトは斬撃を浴びる。

 

 「大丈夫ですか、イロアスさん」

 青年には見覚えはない、それどころか初めてあっただろう、なぜ名前を....

 「リルートさんから話を聞きました、カイルです。一度ベンクトとは戦闘を経験してます」

 

 ベンクトは受けた傷を即座に再生させるとカイルの懐に入り込み、カイルを蹴り上げる。

 だがカイルは即座に身体を[布]に変化させ、衝撃を殺す。

 「相性に関しては.....俺の方が高いから、イロアスさん、援護をお願いします....!」





 


 *****




 ああ、そうだね。ずっとそうだと思うさ。

 



 この世界に正しいものはないし、それぞれが決めるしかない。だから俺は———





 俺は今意識がはっきりしたよ。そう、別に寝てたわけでも意識が飛んでたわけでもない、ただ宙に浮いたような意識が身体に戻ったような、そんな感覚だ。

 「おかしいなぁ......仲間が足止めしてると思ったんだよ?」

 フォルトナは余裕そうに笑みを浮かべながら言う。目の先にいたのはリルート、アモス、ラティナ、三人は警戒しながら無言でフォルトナにジリジリと距離を詰める。


 



 リルートは辺りの警戒をする。廃城の謁見場は広く石造りだが威圧感がある。視認する限り隠れられる場所はなく、フォルトナ1人、廃城を見た限りマルクス、ベンクトはまだどこにも見ていない。つまりどこかに隠れているか——

 「ああ、俺1人で3人は流石にきついかなぁ?」

 フォルトナはそう言うがリルートは全く信じていない、言葉を警戒しつつ、リルートは口を開く。

 「私たちは三人であなただけじゃ勝てないと思うけど?」

 おそらく[透明化]や[瞬間移動]系統を使える人間がいる、私たち3人を油断させるために......だから1人だけという状況に見せかけてる———



 ———とお前は思ってるんだろ?()()()().....

 ここには俺1人しかいない、俺の目的はここでお前ら三人を足止めすること、戦闘力も経験も大したことない、だが頭が廻る。だからこの廃城に来るのは予想できた、お前らをマルクスは警戒している。リルートの執着してるということは、おそらく恩恵不明のお前に秘密がある。




 フォルトナはまるで道を歩くかのように自然に近づく。そして次の瞬間、フォルトナの手元から何かが飛び出し、3人は反射的に後ろへ避けるが、アモスの肩にそれが突き刺さる。



 「.....剣......?」

 アモスはそう呟いた。フォルトナからアモスの距離は3メートルほど、だがその剣の刀身は非常に長く、次の瞬間、アモスから刀身が引き抜かれ、地面に刀身が垂れ落ちる。

 

 「あぁ、西方には面白い武器があってね、刀身は薄く、鋭く、鞭のようにしなる。ウルミって言うんだよ」

 アモスは布を押し当て出血を抑える、フォルトナ自体の恩恵には殺傷力はない、というよりはなにが起きるのかすらまだ上手く把握できていない。[幸運]の概念とはなにか、何を持って運と判別するのか。未知数でしかない。

 フォルトナは腕を大きく振るい、ウルミの刀身を自身の近くまで引き寄せると、笑う。

 「そうだ、気をつけた方がいいだろうね? ここって結構古いからさ」

 その瞬間、天井の石造りが崩落し、アモス達を襲う。3人は散り散りになるようにして避けるとラティナはすぐさま詠唱を始める。

 「マグスキャントスエクソシア———」

 

 リルートはすぐさま走り出すと、フォルトナとの距離を詰め始める。アモスが傷口を塞ぎ、走り出す頃にはフォルトナとリルートとの距離は1メートルもない。

 「まあ、距離を詰めるだろうね」

 ウルミは射程こそ長いが接近戦に持ち込まれれば勝機はない。そのことはどちらもわかっているだろう。

 「———でも俺の恩恵なら関係ないんじゃないかな?」

 フォルトナは思い切りウルミを引き、自身ごとリルートを巻き込んで切り刻む。

 「———ッ.....!!」

 刃はリルートを切り刻み、復剣の振りがズレる。一方でフォルトナにコントロールが効かないはずの刃は当たることなく、背後へ跳ぶ。

 

 「ああ、運がいいのかなぁ。俺にだけは刃が当たらなかったみたいだ、偶然ね」

幸運に対して勝ち目はあるのか、全てが神頼み。話はまだまだ続きます。面白いと思ったらブックマークや評価お願いします。

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