第87話 命刈りの結晶
「リルート! 増援がきてる.....カバーを頼む!」
廃城の扉から次々とマルクスの部下たちが出てくる、リルートは火薬を布袋に詰めると、縄に火をつけ、扉に向かって投げる。
爆発を引き起こし、扉近くのレンガが崩れる。
フレッドの持つ武器は、波のような紋様の刀であり、刀身には澄んだ空のような蒼い宝石が嵌め込まれていた。
ナイフ使いの少女は次々に見えないナイフを投げるが、フレッドが剣を振るうと、その後に飛んできたナイフを含めて叩き落とされる。
「[軌道残し]......厄介な能力......」
少女がそう呟くとナイフを次々に投げ飛ばす、だがフレッドが斬った軌跡に合わせて斬撃が“残り”、ナイフは弾かれる。
「お前の能力は[透明化]か? だが俺との相性は悪いみたいだな」
2人が戦うの中で仲間の冒険者たちも何人かが加勢し、アモスやラティナも到着する。だがそれと同時にどこからか廃城から出てきたマルクス側の人間も加勢し始める。
「ここは俺たちがなんとかする! 頼んだぞ!」
フレッドはそう言って少女に向かって突撃する。リルート、アモス、ラティナ、そして数名の冒険者が廃城の中へと向かうのであった。
「リルート.....でしたか.....あの少女は実に勘がいい...」
茂み全体の面積を軽々と超えるほどの大結晶、あの一撃だけで死者が多数、手足をこの時点で失ってる負傷者も少なくはない。
「エレノアっていったか.....どう思う?」
「間違えないね、あいつレルフェンスだ」
その瞬間、冒険者五人が前に飛び出す。斧を持った重装、もう1人は二刀流の軽戦士。さらには槍使いが2人、斧を持った男が飛び出す。
「援護するぜ!!」
イロアスは居合斬りを放つと、懐に隠していた飛剣が飛ぶ。レルフェンスは両手を地面につけると、次の瞬間、巨大な結晶の剣山が飛び出し、槍使い、二刀流の冒険者の姿が血塗られた結晶へと変化するかのように消える。
だが三人は飛剣が勢いよく結晶にぶつかったことで勢いが消され、致命傷を逃れていた。
エレノアはすぐにレルフェンスの方向へ走る、三人は結晶の山の間を進み、レルフェンスに近づくが、レルフェンスが地面を踏み抜いたその瞬間、一瞬にして槍のように結晶が伸び、2人の首を貫かれ、1人は腕が[鋼鉄化]しており、結晶の攻撃を防いでいた。
飛剣はさらに飛び続け、レルフェンスの首へ一直線に向かうが、当たるその直前にレルフェンスは地面を踏み抜くと結晶の壁が即座に生成され、結晶に飛剣が食い込む。
「貫けねえか......!」
走ってくる斧使いの冒険者を待ち受けようとしたその瞬間、レルフェンスの背後から短剣を持った冒険者が現れる。
(俺の[消音]で気づいてない......いける....!!)
短剣使いの男はレルフェンスの首に一直線に打ち込むが、その一撃は結晶に覆われたその剣で防がれる。
「懐に入れば勝てると思ったのか?」
レルフェンスは余裕そうに短剣を弾くと、短剣使いの男に斬撃を振るう。短剣使いの男はナイフをそのまま捨てると拳をレルフェンスの顔面に打ち込む。
だがレルフェンスには効いていない、パラパラと顔から生成された結晶が落ち、男の拳に結晶が深々と食い込み血を流す。
その瞬間、飛剣がレルフェンスに向かって飛び、レルフェンスがそれを避けたその瞬間に短剣使いの男はナイフを取ろうとレルフェンスから距離を取るが———
「がッ..........ぁ.....!!!」
その瞬間、レルフェンスが地面を踏み抜き、短剣使いの男を串刺しにする。
「距離を取れば結晶の発動が間に合う、だから距離を詰めたのではないのか? まるで意味が———」
「そうでもないぜ.....!!」
エレノア、そして重装の冒険者が完全にレルフェンスの懐に入った。飛剣で援護しつつ2人の攻撃で結晶を発動させなければ残りの冒険者が———
その瞬間、重装戦士の首がイロアスの足元へ転がる。
(こいつ......結晶だけじゃない........シンプルに戦闘力が高い....!)
エレノアは溶剣を振り下ろすが、レルフェンスは剣を受け止めることなく避け、それと同時にエレノアの腹を蹴り飛ばす。
「ぐ......ぁっ———!!」
飛剣が飛び回りレルフェンスを狙うが、レルフェンスは飛剣を剣で弾きながらエレノアの攻撃を躱し続ける。エレノアは溶剣を振り続け、横に薙いだその瞬間、レルフェンスの剣がエレノアの首元へ向かう。
「隙の多い戦い方だな」
エレノアの首に剣が突き刺さるまでほんの数秒、だがエレノアは諦めることなく次の一撃のため体勢を保つ。
その瞬間、ナイフが飛び、レルフェンスはそれを避けるため、距離を取ろうと背後へ跳ぶ。
短剣使いの男のナイフが飛び回る飛剣にぶつかり、レルフェンスに向かって偶然飛んでいたのだ。
(やっぱり死の運命を捻じ曲げるな....さすがだよ、[生存者].......)
だが敗北を捻じ曲げることはできない、勝利するには、恩恵だけでは勝てない。




