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第84話 その愚

 「4年前、リアスタで巡回の勤務をしてた。真夜中だったんだが.....その時、あいつは現れた」


 「黒色のローブを被っててうまく見えなかったが....服や身体に崩れた粒子が見えたんだ。私は戦い.....そしてあいつは逃げた」

 ヴォルガーは顔を上げ、周りを見渡すと少しだけ微笑んで言う。

 「この国とは違って.....あの事件が起きる前から平和な街ではなかったがな....」

 「何かあったんですか...?」

 「ああ、今考えればマルクスの襲撃前だったのかもしれない、王都では既に失踪事件が何軒か起きていた。その時点で防げていれば、あの事件も起きなかったのかもしれない」


 

 少しリルートは考えるとヴォルガーの目をまっすぐ見て、質問する。

 「そうなんですね.......貴方から見て、彼はどうでしたか?」

 「どうっていうのは?」

 ヴォルガーは質問の意図を読めず、リルートにそのままの言葉で返すとリルートは俯きながらいう。

 「マルクスは.......どんな人物に見えましたか....?」

 

 リルートの問いに対し少し硬直するが息を吐き、答える。

 「あいつは......大量に殺した最低な人間だ。私はそう思う」

 その表情には複雑な感情と怒りが見てとれた、リルートがその表情を見て口を開けずにいるとヴォルガーが口を開く。

 「他に何か聞きたいことはないのか?」

 「そうですね....マルクスの能力について....教えてくれませんか?」

 「噂くらいは聞いたことあるだろ? [崩壊]、触れたものを名前の通り崩壊させる。殺意に満ちた能力だ」

 「その能力だけですか.....? 他に何か....」

 「俺が見た時点ではな、人に恩恵は一つしかない、それは当たり前のことだ」

 

 「失礼する」

 そう言ってスタスタとその場を去ってしまった。

 リルートはその場でベンチにもたれ、ただ青空を見ていると声をかけられ、リルートは顔をあげる。

 「何やってんだ?」

 声の主はイロアスであった、疑問の声というよりは会話の起点、イロアスはニコニコと笑っているが、その直後、真剣な表情へと変わる。


 「マルクスと会ったんだろ? 聞かせてくれよ」

 「そっか......ちなみにイロアスはマルクスについて....どれくらい知ってるの?」

 リルートの問いに対してイロアスは少し考えると、口を開く。

 「そうだな......リアスタ国での大虐殺、能力が[崩壊]ってこととか....あとはレルフェンス、フォルトナ、ベンクトと部下が何人か、それくらいは知ってるぜ」

 

 リルートは少し黙ると、ゆっくりと口を開く。

 「マルクスの能力は......[崩壊]じゃないと私は思ってる」


 

 「へえ、じゃあなんだ? 目星はついてるのか?」

 イロアスは楽しそうにリルートの聞き、リルートは少し黙ると答える。


 「おそらく.....私やアモスと同じだよ」

 「.....?」

 「[崩壊]は聖剣の能力だと私は思ってる」

 その言葉に対してイロアスから笑みは消え、目を見開く、その反応を見てリルートは言う。

 「あなたも......だよね?」

 

 イロアスはしばらくの間、沈黙を貫くが観念したように口を開く。

 「ああそうだ、俺の本当の恩恵は.....[千里眼].....そして[飛剣]が俺の聖剣だ」




 「私が見た限り、マルクスは速度が異常だったと思う」

 「速度?」

 「一瞬にして距離を詰められた、恩恵じゃないとありえない速度でね」

 「じゃあ恩恵の力だとしたら....身体能力系統か?」

 イロアスの言葉にリルートは頷きそうになるが、どことなく違うような、そんな気がしてリルートは止まる。


 「とりあえず.....気をつけた方がいいと思うかな」

 「わかった、気をつけるぜ」

 そう言ってイロアスはその場を去ろうとするが、立ち止まると、リルートの方へ振り向き言う。

 「そうそう、俺ら聖剣使いは身体の回復が常人より僅かに早いんだ、それと聞きたいんだが......お前の本当の恩恵はなんだ?」


 リルートは死んでも時間が巻き戻ることを伝えようと口を開いたその時、時間が歪み、世界が歪む。

 


 まだ言うことができない、これが私の......恩恵の“制限”........なのか....?


 「私は無恩恵、それ以上のものは持ち合わせてないよ」

 リルートの言葉に対してイロアスはニヤリと笑う。

 「だったら[略奪]の恩恵に対して特効だな」

 

 そう言ってイロアスは去っていくのであった。




 「[略奪].......?」



 

 


 リルートは国立の図書館にいた。この国では書物を無料で読める、リルートが手に取ったその本は、恩恵のことについて書かれた本であった。

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