第81話 逸脱
「クソ.....!!」
ハロルドは地面に落ちたナイフをリルートに向かって投げる。リルートはその一撃を避けるがその瞬間、[竜]の身体の上に乗り、ハロルドは逃げ出しリルートを突き飛ばし、ベンクトが戦っていた方向へ向かう。
(ベンクトを殺せる殺傷力はあの[重剣]の男くらいだ、トドメを刺してなければ斧槍使いの男が来てない時点でおかしい.....ベンクトは捕えられているだけで生きている可能性は高い....!)
そしてダンジョンを走り抜け、バリスタの矢で壁に突き刺さったベンクトを発見する。
「ベンクト! 乗れ!!」
[竜]の手でベンクトに刺さったバリスタの矢を叩き壊すとベンクトは[竜]の背中に乗る。
「ハロルドさん、足が.....」
「そんなことより早く———」
その瞬間、カイルが斧槍をハロルドに投げ飛ばすが、[竜]の腕で防御する。
「———がっ......!?」
その瞬間、[竜]の鱗ごとバリスタの矢が貫通し、ハロルドの脇腹に突き刺さる。
「あの技術士......忘れた頃に.....!」
ハロルドは痛みに耐え、怒りで煮えそうな心を持ったまま入り口へと向かい、そして光は見えた。
「ああ........中々ひでえな.....」
ダンジョンは、騎士たちに完全に囲まれていた。一面の檻のような大盾の中で、1人の男が鎮座していた。
ゆらめく白銀の髪のエルフ、インヴァルスがそこにいた。
「ここは包囲されている、そして君1人に勝機はない、大人しく投降してはどうだろうか?」
インヴァルスの言葉を無視してハロルドは[竜]に乗ったままインヴァルスに突撃する。インヴァルスは背中に背負った大剣を引き抜こうとするが、ハロルドと[竜]の体が赤く光り始めるとインヴァルスは高く跳ぶ。
その瞬間、騎士たちにぶつかると爆発を起こし、インヴァルスは爆心地に近づくと真っ黒の死体の手を取る。
「自爆か....そうやって少しでも戦力を削ごうとね.......すまない、アルフレッド、ライオス、マイク、セドリック.....」
ハロルドを含めた5人の死体に祈りを捧げていると、ダンジョンの方へ向かおうとするが、その時、カイルとリルートが出てくる。
「ああ、君たちが追い出したのかな? 助かったよ、ハロルドは死んだからね」
インヴァルスの言葉を聞き、リルート達が爆発した方向に目線を移した時、インヴァルスは笑う。
「成程、やられたよ.......もう1人に逃げられたな」
「すまない、ハロルドの自爆で意識が向いていなかった。あと1人は全力で捜索させてもらおうかな」
「あ.....あの.....!実は魔族がいるらしくて....増援を.....」
「......わかった、私が同行しよう。私も魔族との戦闘経験はあってね」
「でも1人じゃ———」
その瞬間、カイルがリルートの口を塞ぐと頭を下げる。
「ありがとうございます......是非同行を願います」
ダンジョンを3人で進んでいる際、リルートはカイルの耳元で聞く。
「なんでさっきは止めたの?」
「知らないんですか? 未来視のインヴァルスを.....」
「知らない....」
第一印象からして優男という雰囲気、エルフであること以外では大剣や剣、ナイフなどをじゃらじゃらと付けている格好だが普通の冒険者と違うわけではない。
「インヴァルスは世界中を放浪してる戦士なんですが.......この国で彼を超える人間は存在しないと思う....」
「おや、あれはアモスくんかな」
インヴァルスの目線の先には意識を失ったアモスが横になっていた。
「おや、リルート殿.....それに.....そちらはインヴァルス殿ですかな」
コルクは既にインヴァルスに気づいているようでインヴァルスはニコリと笑う。
「ええ、彼を外に連れてあげると良いですよ」
そうしてインヴァルス達はダンジョンの奥へ、また奥へと進んだ時、横並びになったエレノア、レオン、ラティナ、クルト、そして横で座っているハイトであった。
「........魔族は多分倒しました....彼らがおそらく....」
「みんなは生きているのかな?」
インヴァルスの問いに対してハイトは頷く。
「煙の中で全員が倒れてて....酸欠だったんだと思います。自分は離れるわけに行かなかったので....」
そうしてダンジョン最奥地へ向かい、そこにあったのは、食い散らかされた人間の死体と血塗れの財宝がそこにはあった。
「ほお.....確かに今まで攻略されなかっただけはある、魔族の数は20ほど.....いまだに絶滅してなかったのですかね....」
インヴァルスの言葉に対して疑問を抱き、リルートは口を開く。
「魔族って滅んだはずなんですよね......どうして未だに.....」
「さあね、まあ絶滅しきれなかっただけと私は考えるがね、それに昔よりは随分と数も減ったようだ」
リルートが困惑している様子を見せるとインヴァルスは続けて言う。
「———君の年齢は....16歳といったところかな....確かに君の年齢じゃ知らないだろう、あの頃について、詳しくは倒れてた戦士の男に聞けばいいはずだ、これ以上言うことはもうないさ」




