第6話 勝利の宴
「ところで....その剣は....」
ロッドがリルートの持つ剣を指を指すと、リルートは聖剣の刀身が復活していることにようやく気づく。
「折れた....はずなんだけど....」
リルートは刃の腹をコンコンと叩くが完全にヒビ一つなく、新品同様の剣となっていた。
「これは....」
リルートが疑問を抱いた時、あの男の言葉を思い出す。
これが聖剣の能力ってことでいいのかな....恩恵って....
「もしかして....それがお前の恩恵なんじゃないのか?」
言葉を発したのはフレッドであった。
「リルートは今までは恩恵無しだったんだよ、ようやく発現するとはなあ....!」
フレッドは嬉しそうに言い、3人も納得する。
「いや....これは......」
リルートは男の話をしようとするが口を噤む、誰も信用してくれるとは思えない、リルートは自分の心の中にそれを留めることにすると、リルートは笑って誤魔化す。
「やったね! これでようやく....冒険者としても戦えるよ!」
そうしてリルートとフレッドは馬車に乗るが、クルト達は死体を集めていた。
「な....何してるの....?」
リルートがロッドに聞くとロッドはにこやかに答える。
「いやあ、こういう時は死体をしっかり確認しないといけないんだよ、どこの人間なのか、数とかもね」
ロッドは死体の首を切り落とすと箱に入れる。
「それ....どうするんですか....?」
「王都に入ったら報告しにいくよ、そうじゃないと殺人で捕まるし」
リルートはモヤモヤとしながらも無理やり自分を納得させる。一人は自分が殺した、その事実が変わらない以上は死に文句を言えるような立場じゃない。
「もう一度死んだら....もっといい未来も....」
リルートはそっと呟くと首を横にブンブンと振る。もう一度繰り返して仲間を失う体験をリルートは憂いている、さらには今までが本当に夢であったらと、そう仮定すると恐怖がある。
そんなことを考えているとクルトが疑問の声を上げる。
「....数が足りない」
クルトの声にロッドとウィルムは武器を持ち、辺りを警戒する。しかし周りに人影はなく、クルトは[補聴]を行うがしばらく経つと息を吐く。
「逃げられたか....まあ近くにいるよりはマシか....」
クルト達は首の入った箱を荷台に詰めると馬車に乗り込む。
「それじゃあ出発してくれ」
「あいよ!」
そうして馬車は動く出すのであった。
〜盗賊団アジト〜
埃臭い廃砦の中は盗賊達がアジトにしていた。その中の最奥部にて中央にダブルベッドの上に座る男と出入り口を背にし、距離を取りながらも喋る盗賊がいた。
「——ゴルドもやられてしまいまして.....」
腰を低くし、苦笑いをしながら報告する盗賊、その視線の先には橙色の髪色の男、”ガルザル“が女を片手に抱きながら言う。
「へえ、あの鉈男死んじまったんだぁ、まあそんなことあると思うぜぇ? そいつら手練なのか?」
「.....一般の護衛、のようですが実力は確かかと、ですが」
盗賊の言葉にガルザルは笑う。
「じゃあ俺が敵討ちをしてやらねえとな! 俺は仲間思いだからよお!」
ガルザルは女の腕を振り払うと服を着出す。
「ですがガルザルさんがいく必要は....」
「ああ? 仲間は大切だろ、だから弔ってやらねえとな!」
「......そうですか....」
盗賊はガルザルにそれ以上何か言おうとはしなかった、。それは彼の笑顔、純粋に何かを楽しむような、その狂気的な顔に、これ以上何も返すことはできなかった。
時間は夜、暗い中で馬を休ませ、焚き火を皆で囲う中、ロッドはツボを取り出す。
「俺の好きなやつううう!!」
ロッドは急に立ち上がるとクルトの口に流し込む。
「やめ......ッ!!」
クルトが抵抗する間もなく、大量の酒が流し込まれ、クルトは顔を真っ赤にしながら頭を抑える。
「だ.....大丈夫ですか....?」
リルートは心配しながらクルトの顔を覗き込むとクルトは顔を背け、申し訳なさそうに小さく言う。
「今の俺は.....酒臭いぞ.....」
「大丈夫だ! 俺の方が酒臭え!!」
ロッドは酒をガブガブと飲みながら地面を転げ回る。
「ロッド、落ち着けって....!」
ウィルムは土まみれになったロッドを必死に抑えるがロッドは抵抗し、暴れる。
「ああああああああ! やだああああああ俺は英雄だぞおおおおお!!」
リルートはゴミを見る目でロッドを見るとロッドは急に黙り、ゆっくりと立ち上がる。
「飲んでみたらわかる....! 君は酒好きな気がする!!」
ロッドは酒を容器に注ぐとリルートの前に出す。
「飲むんだよお!!」
「あはは....まだ酒は飲んだことなくて....」
リルートは断ろうとするとフレッドがリルートの肩を掴む。
「いいじゃねえか、時代遅れおっさんの酒だぞ、飲んでみろって...!」
フレッドはニヤニヤとしながらリルートを抑えるとロッドは震える手で酒をリルートの口元へと近づける。
「やっやめ——!!」
「うへへへへ.....ニンジン厳選....! ニンジン厳選!!」
リルートは既に何を言っているのか自分でも理解していなかった、頭から意味のない謎の単語を発し続け、ロッドの肩に足を通すとロッドはゆっくりと立ち上がり、肩車の状態で二人は両腕を広げる。
「「串!!」」
「ギャハハはははは!!」
フレッドは既に出来上がっており大爆笑しながら涙を流す。クルトは既にダウンしていた。
「危ないですって!」
ウィルムはアワアワとしながら二人を止めようとするが、二人の勢いは止まらない。
「大回転!!」「ぐるぐる回って腹裂け僧侶!!」
ロッドが回ろうと足を踏み替えた瞬間、軸が横にブレる。
「あえ?」
リルートの視界の僅か数ミリ先に、地面がそこにあった。