第58話 矢の鉄
イロアスはおそらく探知系の恩恵の可能性が高い、おそらくあの刃の一撃は.....
「イロアス、そこに人がいるなら———」
リルートがイロアスに言おうとした次の瞬間、剣がリルートに向かって飛ぶ。
「避けろ!」
イロアスが居合斬りを放ち、ヒュンと甲高い音が鳴り響くと、飛んできた剣は弾き飛ばされる。
リルートはその瞬間、イロアスの[空斬撃]、あの刃を探そうと視線を絶え間なく動かす。
そしてリルートはあの刃を見つけ出す。
その刃は大きく弧を描き、アモス達の視線に映らないようにイロアスのローブの下に入り込む。
「ごめん! 私はあっちの木の方に向かうから周りを警戒して!!」
(イロアスが探知のできる恩恵ならば“手”の生まれる場所がわかるかもしれない.....)
リルートは走り出し、その木に近づくと火薬を投げると火付け爪で火を放つ。
木は爆発し木の葉が散る、そして黒い煙の中からへヴァッジが飛び出す。
「アモス行って!!」
アモスはすぐさま重剣を構え、落下するへヴァッジに向かって重撃を振り下ろすが、へヴァッジはすぐさま受け身をとり、その一撃を避ける。
土煙が舞い上がり、地面が大きく削れる。
さらにアモスは切り払うが、剣を持った“手”がそれを防御する。
「攻撃の畳み掛けは流石だけど、それじゃ足りないよ」
一瞬の鍔迫り合いの間に剣を持った“手”が3本現れ、アモスを襲う。
「屈め!!」
イロアスはそう叫ぶと居合斬りを放ち、宙に浮いていた“手”が2本、真っ二つに切られる。
その瞬間にアモスは“手”を一つ蹴り飛ばすと同時にもう片方を斬る。
「イロアス! どこからあの手が出現してるかわかる!?」
「わからねえ、それよりもさっさとあいつを倒すぞ!」
イロアスはすぐさま居合をへヴァッジに向かって放ち、ヒュンと甲高い音が鳴り響く。へヴァッジはそれを紙一重で避けると、盾を持った“手”がファランクスのようにへヴァッジを守る。
「くそ....!!」
リルートは道具箱から出した球状の陶磁器に火薬を詰め、へヴァッジに投げつける。
盾に当たり、カンと金属音がなったかと思うと爆発する。盾を持っていた“手”が吹き飛ぶが、すぐさま違う“手”が盾を持って防御姿勢をとる。
「近づけない.....」
その瞬間、盾の壁から弓を構えた“手”が大量に現れ、その瞬間、矢は一斉に放たれる。
リルートは避けることができず、その場で防御姿勢を取ることしかできない、そして数秒間、あらゆる場所に矢の刺さる音が辺りから鳴り響いた。
「な......なんで...!?」
目の前にはアモスがいた。
アモスはそのまま力尽きるように倒れる。背中に刺さった大量の矢が痛々しい。リルートはイロアスの方を見ると、致命傷は避けているものの、腕や足に矢が数本刺さり、血濡れていた。
「どうして....なのかな?」
へヴァッジはそう言ってリルートの方へ無防備に歩きだす。
リルートはへヴァッジが一歩、また一歩近づくたびに復剣を強く握りしめる。そして目の前まで近づくとへヴァッジは問う。
「君は.....今までに何か恨まれたりするようなことをしたのかな?」
「........どういうこと?」
へヴァッジは続けて口にする。
「マルクスは君を狙っている。でもなんでなのかな....?」
へヴァッジの言っている事がわからずリルートが困惑している内に更に近づいてくる。
その瞬間、リルートの間合いに入り、リルートは剣を振るうが、へヴァッジはそれを避けるとリルートの顔面を蹴り、リルートは仰向けに倒れる。
「マルクスくらい強ければどんな人間だって復讐できるはずだ、人間ならなおのことね」
「だから.....なんの話を.....」
「そう考えるとさ、君自体に何か特殊な物を秘めているんじゃないかと考えているんだけど、どんな恩恵を持っているのかな」
「私は.....武器再生の恩恵を.....!」
「違うと思うな....それって“聖剣”だよね?」
へヴァッジの言葉にリルートは息を飲む。能力が既にバレていることにリルートは動揺を隠せずにいると、へヴァッジは問う。
「やっぱりそうなんだね、じゃあ、君の恩寵ってなんなのかな?」
それでもリルートは答えない、というよりは答えらてないというのが正しいだろうか、リルートが黙っていると、へヴァッジはリルートの指を優しく手に取ると、その瞬間、リルートの指が真逆へと曲がる。
「ッアア———!!」
折られた指から急激に熱を感じ、それはゆっくりと痛みに変わっていく。
「あと9本残ってるけど、どうする?」
言うことができない、終わらない拷問、リルートは復剣を首に当てがおうとするが、へヴァッジは復剣を蹴り飛ばす。
「そんなことさせないよ」
リルートはその時、イロアスの方に視線を向け、自身の首を指差す。
そしてその1秒後、首に刃が突き刺さり、リルートは絶命するのであった。
ごめんね、イロアス.....よりによって仲間を殺すようにして......




