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第57話 底なし

 「なんだ.....この刃......?」

 へヴァッジは驚きながらも刃を無視し、どこからともなく“手”が宙に浮き、そこらに散らばる剣や槍を取り、リルートを攻撃しようと一斉に向かうがその瞬間、地面に突き刺さっていた刃が飛び出し、ヒュンと甲高い音を立てて“手”を2つほど一気に切り払う。

 

 中空に舞い上がった刃にへヴァッジの視線が誘導された次の瞬間、リルートは麻痺針を数本へヴァッジに向かって放つ。

 「おっと......」

 へヴァッジは体を後ろへのけ反らせ針を躱わす。

 リルートはその隙にアモスとラティナの元に走り、三人は固まる。

 「アモス! 20秒守って!!」

 「.....了解」

 そう言ってリルートはラティナの耳元に近づくとゴニョゴニョと話す。へヴァッジは邪魔をしようとするが、アモスが近づく“手”を全て斬り払い、へヴァッジ自身を飛ぶ刃が襲う。

 「邪魔だな.....!」

 へヴァッジは剣を手に取り、刃を受け流すが、刃は止まらない、アモスを襲う“手”の動きも鈍くなったところでラティナは詠唱し始める。

 「マグスキャントスエクソシア——」

 「アモス! 行って!!」

 その言葉を聞き、アモスは走り出す、リルートは蒸留酒の入った陶磁器を2個、アモスのサイドを通るように投げ、蒸留酒が流れる。

 「ミディアスインペトムテラストーンバンプ!」

 詠唱と共にアモスの走る足場が隆起し始め、道になる、宙に浮く“手”がアモスを襲おうとしたその瞬間、リルートは流れた蒸留酒に向かって火付け爪で火を放つ。

 

 (おそらくあの黒い宝石の嵌め込まれた刃はイロアスの能力....というよりは聖剣の可能性が高い.....へヴァッジは“手”を意識しなくてもある程度操れる.....だけど意識してる時より明らかに弱いんだ.....そうじゃなかったら最初の時点で全滅してた.....そして———)


 リルートは背中に背負った道具箱を投げ捨てると隆起した地面の横を走りだす。

 (おそらくこの壁で私はへヴァッジから死角になっている.....ここから私が同時に狙えばいい...!!)

 そしてアモスがへヴァッジに近付いたその時、へヴァッジは懐からリルートの道具箱の中に入っていたはずの蒸留酒を取り出す。


 「まさか......!」

 アモスは咄嗟に防御の姿勢を取ろうとするが、そんな暇もなく蒸留酒をかけられ、アモスは火に包まれる。

 「熱っ...!?」

 アモスはそのまま地面に倒れ、もがき苦しむ。リルートはへヴァッジに近づくが、その瞬間、地面に蒸留酒をかけられ、分断されるように火が付く。

 「.......一応盗っておくものだね....」

 その瞬間、周りに弓を構えた“手”がリルートを囲む。リルートは一度逃げようと一歩後退した次の瞬間、肩に矢が突き刺さる。

 「う.....っ!!」

 それを皮切りに次々と矢が放たれ、リルートの胸、足、腹、腕、あらゆる場所に撃たれ、そして全身の痛みが走る中、首に矢が刺さり、リルートの意識は途切れるのであった。


 

 



「おい、リルート」

 イロアスの声でリルートは目覚め、首を摩りながら思考する。

 「....大丈夫か?」

 その言葉でリルートはイロアスの方を向くとイロアスは首を傾げ、釈然としないながらも狼煙の方を指差す。

 「あっちで何かあったかも知れないし、一度戻らないか?」

 (私が知るべきことのまず一つは.....イロアスの能力が聖剣によるものなのか、恩恵なのかだ....)

 リルートは少し考えると口を開く。

 「じゃあ半分に分かれない?」

 今までと同じく分かれる提案をすると更に続けてリルートは言う。

 「私とアモス、イロアスの三人が戻って、ラティナとメリーさんが待機でいい?」

 

 「......うん、良いけど....」

 「私も構わないわ」

 「じゃあそうするかー」

 そうしてリルート、アモス、イロアスの三人は第一陣へと戻るのであった。


 「なあ、どう思う?」

 イロアスが声をかけ、リルートは振り向くと、イロアスは言う。

 「この状況での狼煙ってさ、明らかにやばい時ってことだよな?」

 リルートは少し悩んでいる風に見せると、答える。

 「何もないとは思うけど.....覚悟はしておいた方がいいかも」

 三人の中に緊張が走る、そして、今まで見た惨状を眼にする。

 三人とも何も口にしなかった。リルートは今までに見ている光景で慣れているからだろうか。



 「すまん.....ちょっと目眩が.......」

 そのとき、イロアスが目を抑えながらその場にへたり込む。リルートはどうにかイロアスを起こそうとするがイロアスは立ち上がらない。

 「ちょっと休憩させてくれねえか? ......あんまりこういう状況はな.....」


 リルートは周りを警戒しながらも、イロアスを休ませることにする。

 「あ....ああ......」

 下半身のない騎士を見つけ、リルートは駆け寄りながらアモスに向かって叫ぶ。

 「アモスはイロアスの近くで敵の警戒をして!」

 

 リルートは騎士の手を取ると口元に耳を近づけ、騎士に問う。

 「“手”をどれだけ出した? 戦闘力は?」

 「.......30......いや.....40........あいつは.......」

 騎士は答えている間に口が止まり、こときれる。

 その時、イロアスは突然立ち上がると、へヴァッジの隠れている木の方を指差す。

 「あっちの木の上に....誰かいるぜ」

ループが続き、リルートは勝てるのか?

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