第49話 変遷
死にたくない、痛い、苦しい、怖い
だけど周りが死ぬのも怖い、どうすればいい.....?
「ああ、確か冒険者の....銅級のリルート....だったか?」
「実はホブゴブリンが二体....それとおそらくゴブリンロードが.....現れました.....!」
リルートの言葉を聞き、アランは俯き、冷や汗を流す。しばらく思考するとアランは声を荒げながら聴く。
「そいつは....ゴブリンロードがもう近くまで来てるのか.....!?」
「さっきも言いましたが———」
アランはリルートを無視するように長屋を飛び出すと、息を吸い、大きく声を上げる。
「総員———!!」
声の大きさにリルートは思わず耳を塞ぐ。それでも少しうるさいがアランは続ける。
「ゴブリンロードがすでに四陣に侵入しているッ!! おそらくすでにゴブリンが相当侵入している可能性が高い! 6班は今すぐ大砲の用意! 8班は2班と合流し第四陣へ!3班は——!!」
アランは指示を続ける中で、リルートはそそくさと間を通り、ラティナを見つけると、8班と合流することにした。
「———お前が2班かな?」
後ろから声をかけられ、振り向くとそこには一人の青年がいた。
「あなたは.....もしかして8班の?」
顔には所々傷があり、ツンツンとした黒髪。年齢はリルートと同じほどだろうか、全身を覆うマントを着ており、身長は同じくらいのだ。
「あぁ、そうだね、俺の名はイロアス、よろしくな」
イロアスは握手しようと手を差し出し、リルートのそれの返す。
「イロアス〜、いくらなんでも危険じゃない?」
「いいじゃんか、楽しまなくちゃね」
後ろから茶髪の軽戦士であろう少女がイロアスの頭を掴みながら言う、少女はリルート達に気づくとニカリと笑う。
「私の名前はマイン! よろしく〜」
「リルートです、よろしくお願いします」
「ラティナよ、魔法使い、よろしく」
リルートはイロアスの周りを見て疑問を口にする。
「イロアスさんの班は二人だけ?」
「いや、他にも兵士さんが三人と騎士様が一人だね」
イロアスは説明をしながら、兜を被りまるで殺し屋かのような目をした男達を指差す。
「とりあえず前線に行こうよ、指示があったからね」
「ロイドさんは........」
全員で前線に向かいながらもロイドを探すがやはり姿はない、そうやって走り続けているとイロアスは顔を一瞬しかめ、発する。
「血の臭い......」
戻った時、そこにロイドはいなかった。そこにあったのはホブゴブリン達が貪る肉だけだ。”ロイドの頭だった物“はすでにぐしゃぐしゃに潰されて原型をとどめてない。骨に血管が絡まり、リルートは吐き気を催すが、無理やりその酸っぱい流動物を飲み込む。
「ゴブリンロードはどれ?」
イロアスはリルートに問う、リルートは目を逸らそうとするが喝を入れ前を向く。
「二体しかいない.....?」
ゴブリンロードであろう者はいなかった。リルートは辺りを見渡そうと視線を逸らしたその瞬間、ホブゴブリン2体は走り出し、リルートの方へ向かう。
「きたぜ...!」
ホブゴブリンは拳をリルートに打ち込む、リルートは即座に身を屈め、それを避けるとすぐさま顔に向かって2連、斬撃を振るうがホブゴブリンはそれを回転しながら避けるとそのままの勢いでリルートを蹴り飛ばす。
「っが....———!!」
リルートは思い切り吹っ飛ばされるのを見た兵士の一人は自身の掌をガブリと噛み、頬を膨らます。すると瞬く間に腕が肥大化し、その腕でリルートを受け止める。
「一瞬隙を作るんでよろしく」
イロアスは腰に装着した剣に手を掛けると居合を放ち、ヒュンと甲高い音が鳴り響き、その瞬間に高速で斬撃が飛ぶと、ホブゴブリンの胸を切り裂き、血が吹き出す。それを見た騎士と兵士が一気に距離を詰める。
ホブゴブリンは血を流しながらも兵士に向かって斧を振るう、騎士が直剣でそれ一撃を受け流し地面へ押さえつけると、もう一人の兵士は大きく上へ跳び、兜を外すと、ホブゴブリンの真上に行ったところで一つに纏められた髪を切り落とし、ホブゴブリンの上で髪が舞い散る。
「離れろ」
その兵士の言葉を聞いて斧を押さえつけていた騎士は後ろに跳ぶ。
次の瞬間、舞い散った髪は鋼鉄の針へと変貌し、ホブゴブリンに向かって全ては勢いよく突き刺さる。
「グゲア.....アア!!」
様子を見てラティナは杖を構えて詠唱し始める。
「マグスキャントス———」
全身を針で突き刺されたホブゴブリンはまだ攻撃を続ける、兵士は斧の一撃を腹に喰らい、血を流しながら吹き飛ぶ。
もう一体のゴブリンはイロアスの背後を取り、拳を振るう。それを見たマインがイロアスを突き飛ばし、拳に合わせて剣を突き立てる。
拳に少しだけ剣が刺さるがホブゴブリンはすぐさまその剣を叩き折り、マインを蹴り飛ばす。
「う.......ッ!!!」
「この....!!」
追撃をしようとマインにホブゴブリンの意識が向いたその瞬間にリルートはナイフでその首を切り払い、大量出血を起こさせる。
「危ねえ!!」
イロアスは叫ぶが、その次の瞬間、リルートは首を掴まれる。
(ま.....ずい.....!!)
リルートは抵抗しようとした次の瞬間、クロスボウの矢がホブゴブリンの目玉に突き刺さり、リルートはその瞬間に火付け爪でホブゴブリンの顔面に火を放つ。
ホブゴブリンは火を振り払おうと闇雲に腕を振るっている、そして潰されていない方の目を開いた時、周りには空中に舞う大量の石が2体のホブゴブリンを覆っていた。
「———ストーンラピッド!!」
ラティナの詠唱で石の弾丸はホブゴブリンを四方八方から撃ち続ける。肉を裂き、血が流れながら二匹は絶命するのであった。
「おい、マイン!大丈夫か?」
イロアスはマインの元に駆け寄り声をかけるが、マインは力無く言う。
「ごめん....死にはしないけど......痛....い」
「そうか.....そっちの兵士さんは?」
イロアスは腹を切り裂かれた兵士を介抱する兵士は首を横に振るう。
「だめか......とりあえずマイン、戻るぞ」
「犠牲が....大きい.....」
掴まれた首がまだ痛い、リルートは自身の首を摩りながらそう思いつつ、戻るのであった。




