第4話 未来との戦い方
「来た......」
リルートは俯きながら馬車にゆっくりと足を入れる、この後に起こる運命、それは死だ、馬車が爆破され、盗賊に襲われてみんな死ぬ。運命を回避する手段はあるのだろうか?
「リルート? 大丈夫か....?」
フレッドが心配そうに声をかけるとリルートは笑う。
「いやいや、気にしないでいいよ、なんでもない....!」
リルートは馬車に乗り込むと眼を瞑り、硬直する。
もしもこれから起こることが....もしも世界を繰り返しているのだとしたら....この先の運命は同じだ....どうやったら....何をすれば....
リルートが難しい顔をしながら考えているとロッドがリルートの肩を揺する。
「大丈夫? うなされてたけど!」
ロッドはいつも通りの笑顔で言ってくる。しかし彼が死ぬと考えるとリルートは下を向く。
「いや、気にしないでください、ちょっと悩んでいたんですよ....」
「そりゃ大変だ! 俺が悩みを聞いてあげようか!?」
ロッドがリルートの手を握るとクルトがロッドの腕を掴む。
「10個下を口説いてるんじゃねえ」
クルトの言葉にリルートは驚く。
「10個って...25歳!? 同じくらいだと思ってた....!!」
ロッドは照れながら頭を書く。
「いやあ....見た目より若く見えちゃうんだよなあ! これが!」
「仕草がガキだからだよ」
「そんな褒めないでくれたまえ!」
会話をしてる中でも目に刻まれた時計を鏡で確認していると、あと10分ほどで、12時になるところであった。リルートはゆっくりと外を確認すると、平原の中でガサっと物音が一瞬だけする。
「.....クルトさん....外に...誰かいます....」
リルートがクルトに伝えると斧を持ってゆっくりと身を乗り出し、耳を澄ませる。
(ここまでは変わらない....次に気をつけることは....)
リルートは御車台に出ると土道を見る。
「すみません....何か変なところはありませんか....?」
リルートは周りから投擲物が来ないか、何があるかはわからない、だけど確認することにもしかしたら、意味はあるのかもしれない。
「10人ほど、囲んでいるな、おそらく盗賊だ、襲われるかもな....」
「すみません! こっちの方に何かないか聴いてくれませんか!?」
(爆弾が投げられたりとかもないし、一体どこから....)
リルートが見ているとその時、地面の違和感に気づく。
「この亀裂.....黒くなってる....)
黄土色の土道の中にあったのは小さな亀裂であった、黒く変色した土のようで、亀裂の先を辿っていくとその時、クルトが叫ぶ。
「一旦止まるんだ! あれは....!!」
リルートは御者の肩を掴むと叫ぶ。
「今すぐ馬車を止めてください!」
「あ.....え!?」
御者は驚きながらも馬を止めると、黒い土は弾け飛び、光を放つ。煌めいた直後に黒土は爆破する。
「な.....!? 爆発....!?」
ロッドはすぐさま御車台から火の手を見る、燃え上がり炎の壁となったそれを見て驚愕していると、クルトが声を上げる。
「おい、来るぞ!!」
サーベルを持った盗賊が前へ出ると、剣を大きく振りかぶってクルトに向かって切り払い。クルトは後ろへ大きく飛ぶ。
「クルトさん! そいつの腕は——」
リルートの言葉は杞憂だった、クルトは伸びる剣撃を斧で叩き落とすと同時に、盗賊の顎を蹴り上げると、すぐさま斧で盗賊の胸を裂く。
「心配しなくても問題はない」
クルトは斧を構えると、盗賊たちに対して手招きをする。
「一斉にかかって来い、じゃないと勝てねえぞ」
「んだと....!!」
「舐めてやがって!! いくぞ!!」
盗賊たちは一斉に姿を現し走り出す、しかし大男が叫ぶ。
「止まれ! 相手のペースに飲まれるな!!」
男の怒号に殆どの者は止まるが、それでも攻撃を仕掛けようとする者が3人、クルトは3人の剣、斧の攻撃を全て受け流すと一人の首を刎ねると同時に屈みながら足払いで一人を転ばせる。クルトの背後から投げ飛ばされた槍が盗賊の眼球に深々と突き刺さり、その一瞬の動揺の間に、ロッドは盗賊の上に馬乗りになる、手斧がロッドの首元を狙う。しかしロッドは手斧を弾き飛ばすと、容赦なく剣で首を突き刺し絶命させるとニヤリと笑う。
「余裕綽々ってね!」
弾き飛ばされた手斧はフレッドの手の真横の地面に突き刺さり、フレッドが驚き、斧から距離を取る。
「うおあ!?」
情けない声を出しながらもフレッドは息を整えようとしたその時、手斧に亀裂が入る。
「危ないッ....!」
リルートはフレッドに抱きつくように掴むと外へと飛び出す。それとほぼ同時に金属の割れる音と共に破片が馬車の布を裂き、鉄粉がパラパラと落ちる。
「すまん....助かった....!」
「それよりも....来るよ!」
フレッドはすぐに立ち上がると剣を構え、走り出す。次いでリルートの加勢しようと謎の男が入れた剣を取り出すと鞘から引き抜く。
「軽い....!!」
それは木刀ほどの軽さであった、逆v字型の鍔には紅い宝石が嵌め込まれ、輝く銀色の刀身は刃こぼれ一つない、まさに聖剣と呼べる者であった。
「聖剣って言うなら....その力を見せてよ!!」
リルートは剣に語りかけるように言うと構える。