第48話 第四陣
「おっさん、もうすぐ着くわよ!」
ラティナの声に対して男はゆっくり起き上がると少し怒った声で返す。
「俺はガルドだ! おっさん言うな!」
二人のいがみ合いでリルートやアモスも目覚める。
「———あ゛ッ...!!」
リルートは起き上がった直後、先程の痛みを思い出し、頭を抑える。もう痛くないはずだが、手が震えて止まらない。
「.......大丈夫....?」
アモスは心配そうにこちらを見る。リルートは必死に笑顔を作り、若干強張りを持ちつつも大丈夫だと笑う。
(今のうちに考えろ.....作戦を、頭を使え......!)
「なんであんたと一緒なのよ!!」
「まあいいじゃねえかよ」
ラティナはロイドに対して不満をぶつけるが、
「さっきから考え込んでるけど、どうしたのよ」
ずっと思考し続け俯いてるリルートにラティナは覗き込むようにして声をかける。しばらくするとリルートはようやくラティナに声をかけられたことに気づく。
「え、あ....ちょっと考えてて....」
リルートの言葉にラティナ不信感を抱きつつもリルートの肩を軽く叩く。
「まあなんとかなるわよ、それより終わった後のことでも考えましょ」
ラティナは素っ気無く言う、そして歩き出そうとした瞬間、リルートは叫ぶ。
「ラティナ! 前方に壁を作って!」
「え..? マグスキャントスエクソシア.....!」
ラティナは動揺しながらも詠唱し始め、それを守るためリルートは直径2mほどある木の板を取り出し矢に備える。
「ロイド、矢が来る!」
「お、おう!!」
まだ矢は来ない、目の前に壁も生成され少し心に余裕が持てそうになったその直後、矢の突き刺さる音のみが壁から鳴る。
「もう来たのかよ.....!」
ロイドは剣を引き抜き、構えていると、土壁の上からゴブリンが這い出てくる。
「マグスキャントスエクソシアミディアスインペトムテラストーンスリング!!」
ラティナの周りを5〜6個の石がクルクルと浮き、ラティナの視界にゴブリンが入った瞬間にそれは“捕捉した者”へと勢いをつけて飛ぶ。
「ギャア..ッ!」
ゴブリンは身を乗り出した瞬間に次々と撃ち落とされ落下死していく。リルートは復剣に黄土色の液体を塗っているとその瞬間、爆音をたてながら壁が粉砕される。
「ホブゴブリン....!!」
リルートは即座にラティナの方を見ると叫ぶ。
「ラティナ! 私の剣に向かって撃って!!」
ラティナがリルートの復剣に目を移すと石の弾丸は勢いよく飛び、復剣は破壊され破片が飛び散る。
リルートは火付け爪を打ち、ホブゴブリンに向かって火を放ち、一瞬だけ怯ませるとその瞬間にホブゴブリンの足元に縄をかけ、ロイドに端を渡す。
「引っ張って!」
「おうよ!!」
互いにロープの端を引き、ホブゴブリンは体勢を崩し、復剣の破片が飛び散る地面に背中から倒れる。
肉に破片が突き刺さりながらもホブゴブリンは立ちあがろうとするが、そのままホブゴブリンは絶命する。
「毒か...!!」
ロイドは感心しながらも辺りの警戒を行い、周りにいないと判断する。
「とりあえず大丈夫そうだな、ラティナ! 報告に行ってくれねえか!」
「あー、了解したわ」
ラティナはそう言ってアランがいる中央の方へ向かう。ロイドはゴブリン達が来たであろう方向に向かう。
「なんでゴブリン達はここに....まだ軍勢は1kmは先にいますよ?」
「確かにな.....ゴブリンロードは斥候まで出すのか....? まあ調べてみりゃわかるか」
そう言って二人はその方向へと向かうのであった。
「ゴブリンの足跡......なんでこいつらは先に来たんだろ....」
リルートは疑問を抱きつつ痕跡を探してると、何かの影がリルートを覆い尽くす。
「おい! 逃げろ———!!」
ロイドの声で振り向くと、そこには先程のホブゴブリンの大きさ、だが豪華な王冠を被り、赤い上質なマントを着用したゴブリンが大剣を振り下ろそうとしていた。
「あ——————ッ!!」
リルートは反応できず、死を覚悟しその瞬間、全身に衝撃が走る。
「......ロイド..!!?」
リルートの身体はロイドが抱えていた。しかし右腕は既になく、血がダラダラと流れていた。
リルートは止血をしようと包帯を取り出すが、絶望はさらに深まる。
「ホブゴブリンが....二体....!!」
後ろからのっそりと現れた二匹をみて、ロイドは冷や汗を流すが、リルートを後ろへ突き飛ばす。
「ここは....俺が足止めするから逃げろ....!!」
「でもそれじゃ——-!!」
「いけ.......っ!!」
リルートの言葉はロイドの迫力の押し切られ、リルートは少し足が止まるが、後ろを向き、走る。
「絶対に生きてよ....!!」
(どうする....自殺するか......!?)
既に思考に自殺の選択肢が入っている。だがどうしても痛みには恐怖心がある。更には生き返れる保証があるわけでもない、限界があるのかもだ。
「.....信じるか........!」
リルートはロイドを信じ、アラン達の元へとがむしゃらに走るのであった。




