第47話 視界は全てを
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「おっさん、もうすぐ着くわよ!」
ラティナの声に対して男はゆっくり起き上がると少し怒った声で返す。
「俺はガルドだ! おっさん言うな!」
二人のいがみ合いでリルートやアモスも目覚める。
「朝から騒騒しい.......もう着いたの?」
リルートは馬車から身を乗り出し、外を見ると、そこには大量のバリケードで囲まれ、大砲の並ぶまるで砦のようの村がそこにあった。
「なかなかありゃすげえな、戦争でもおっぱじめんのかよ? ところで姉ちゃんよ——」
もう一人の男、ロイドはリルートに声をかける。
「——あんたはこれについてどう思うよ?」
「どう思うって?」
「———明らかにキナくさいからなぁ、なんか嫌な予感がするぜ?」
ロイドの言葉に対してリルートは特に考えることもせず、道具の大量に入った箱を漁り、確認をする。
「まあいいか、あとは待つだけだしな」
聞いた限りではロイドの恩恵は[硬化]、ガルドの恩恵は[閃光]、ラティナは[念写]である。
「そういえば[念写]って言ってたけど、どんなことが出来るの?」
リルートが問うとラティナは立ち上がると外の方を見る。
「実際に見せた方が早いわね」
ラティナは眼を見開くと、次の瞬間、ラティナの手に一枚の紙が現れ、それをリルートに見せる。
そこには外の風景がまるで切り取られたかのように写っていた。
「すごい! 絵とは思えない!」
「まああんまり役に立たないのよね、対象の確認とかくらいかな」
バリケードを抜け、村の中で一番大きい長屋に入ると、銀色のピカピカと磨かれたかのような豪華な鎧と赤のマント、筋骨隆々な金髪の男は口を開く。
「今回の指揮を取る、ナニリニック騎士団長、アランだ。まずは作戦についてだが———」
作戦について、要約するとここは拠点であり村人は全て避難している。ここを中心にゴブリンロード率いる軍団を追い払う。そのためにはゴブリンロードを殺せれば統率を失い、私たちの勝利.........なのだが.....
いくつかのグループに分かれることとなり、私は2班に配属された。役割としては斥候だそうだ。
この村は現在区分けがされており、アランを中心にした村の中央は冒険者たちが休むためのテントが幾つか用意され、心臓部とも呼べる第一陣、そして第一陣を囲むようになった大量のバリケードや大砲にバリスタを用意し迎え撃つことに特化した第二陣、その二つを取り囲む巨大なバリケードと罠、駐屯地が点々と用意され、ゴブリン達の様子を見ることができる第三陣、そしてゴブリンが今現在侵入を試みている第四陣だ。
私たちは第四陣の中間にてゴブリン達の様子を見ることとなった。
「ラティナはともかく.....なんでロイドと組むの?」
ロイドは高笑いすると言う。
「俺じゃ不満かぁ?」
「「超不満!!」」
「アモスはガルドと組むからいないし、すっごい不安!!」
ロイドに対してリルートはそうやって不満をぶつけて続けると、ロイドは武器を手に持つとバリケードの外を指差す。
「まあ不満なのはわかるが、見ろよ? もうゴブリンが見えて来てやがる。俺らが喧嘩してるうちに———」
その瞬間、リルートの目の前を“何か”が通りすぎた。
「矢....!?」
それの着弾点には矢が刺さっていた。
すぐさまそれが撃たれたであろう方向を見た瞬間、矢の雨がこちらに向かっていることに気づいた。
「クソ....!!」
ロイドは大盾でそれを防御しようとするが守りきれず数本がロイドの腕や足に突き刺さる。それを見たラティナは地面に杖を突き立てると詠唱する。
「マグスキャントスエクソシア、ミディアスアクシリアテラストーンウォール!」
地面が抉れ、真四角の土壁が目の前に現れ、矢を防ぐ。リルートは閃光弾を取り出すと、それに火をつけ、上へと蹴り飛ばす。
爆発音が村全体に鳴り響き、全体にそれが伝わったところで、物陰に隠れていたゴブリンが飛び出す。
「く......!」
リルートは後ろに跳び、ゴブリンのナイフを避けようとするが、手首を切られ、出血する。
「マグスキャントスエクソシア.......」
「うぉら!!」
ロイドはゴブリンを蹴り飛ばすと、すぐさま剣で頭を叩き潰す。
「まだいるぞ!!」
次々にゴブリン達が現れる。三人はそれぞれ走り出す。リルートは火薬を取り出すと、周りにばら撒く。
「おっさん! 手伝って!」
ラティナはロイドを呼び、近づいた所でロイドの手に足を乗せると、ロイドは足腰に力を込め、大きく上へ飛ばし、ラティナは民家の屋根の上から詠唱し、石の弾丸で二人を援護する。
リルートは周りを確認し、ゴブリン達がこちらに意識が向いたその瞬間、火付け爪を打つ。
火薬に火がつき、その瞬間に爆発し、ゴブリン達は吹き飛び、巻き込みがないように石の弾丸がゴブリン達の頭を撃ち抜き、絶命させる。ゴブリン達のほとんどは倒され、リルートは力を抜こうとした次の瞬間、ロイドがリルートに向かって走り出す。
「しゃがめ!」
リルートは言われた通り頭を下げると、その瞬間、鈍い金属音が鳴り響き、後ろに振り向くと、そこには大斧をもったホブゴブリンがそこにいた。大きさは2mほどであろうか、リルートは後ろに下がると、ホブゴブリンは斧を振り下ろす。
「が....! 重え.........」
ロイドは大盾でその重撃を防ぐが、次の瞬間、ホブゴブリンはロイドの腹に蹴りを打ち込む。
ロイドはよろけつつ後退し、追撃されないよう、リルートはホブゴブリンの顔面に2連、斬撃を当てようとする。だがホブゴブリンはそれを避けると拳を打とうと構えるが、その瞬間にリルートは火を放つ。
「おいおっさん! 大丈夫なの!?」
「ああ......なんとか[硬化]で防いだが.....それでも痛え......!」
リルートは心配し、ロイドに視線が僅かに移ったその瞬間、視界が真っ暗になると同時に、宙に浮く感覚と、頭を抑えつけられる衝撃に襲われる。
「ぐっ.....がぁ.........っ!!」
ホブゴブリンはリルートの頭を鷲掴みにしていた。視界のない中でリルートは闇雲に復剣を振るうが当たらない。
「このやろう....!!」
ロイドはホブゴブリンの足を切り、ホブゴブリンは体勢を崩す、だが次の瞬間、リルートは叫びだす。
「いぁ......いあああぁぁぁあああッ——!!」
頭蓋骨を圧迫され脳が「痛い」潰れる感触と、目玉がその場から飛び出そうなほどの激痛。リル「痛い」ートは抵抗するがそれ以上に思考「痛い」を続けることができない。「痛い」鼻から、眼か「痛い」ら、体液がダラダ「痛い」ラと流れる「痛い」脳みそがミンチになり、すでにもうそれはぐちゃぐちゃに「痛い」「痛い」「痛い—————————




