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第3話 与えられし恩寵

 「夢....なんだよね....」

 リルートは息を切らしながら、地面に足につけて立ち上がろうとするが、よろめき倒れそうになる。

 

 「う.....うう....」

 思い出す度に涙が出てくる。あんな死に方絶対にしたくない....あんな夢を....なんで見ないといけないんだろう....



 リルートはタンスをゆっくりと開き、奥から服を取り出すと、服を着ていく。

 「やっぱり....」

 やはり鏡を見るとリルートの左目は時計が写っていた、時間は10時前、服の色も、外の風景も、旅立ちの日であることも全て一緒だ、この時計のような眼もそうだ、やっぱり何かがおかしい。

 

 あんなリアルな体験が夢だったのか....? 私の頭にあるのはフレッドと、クルトさんと....ウィルムさん..........そして...ロッ——


思い出したその時、リルートはトイレへ走り出した、酸い臭いと腹痛、溢れ出る悲しみと共に。

 「お゛え゛え゛え゛え゛.......」


 リルートは便槽の中に吐瀉すると深呼吸をして、ゆっくりと立ち上がる。

 「ありえないけど....繰り返している......?」


 リルートは自室に戻ると椅子に座る。

 「......いや....そんなわけないと思いたいけど....」

 リルートはあの時の痛みを思い出しながら考える。


 「もしも繰り返してるなら....このまま行くと同じようになる....そんな気がする....死にたくない....」

 リルートは夢のことでバカらしいと思いながらもリルートは考え、とりあえず朝食をとりに自室を出るのであった。





 ———やっぱりおんなじだ......会話も、朝食の内容も変わらない....もうダメなのかも....いや、まだ何かできるはずだ....


 リルートは走り出すと厩舎へと急ぐ。

 変わらない田舎道、唯一の違いはリルートが駆けていることであった。変わらない視界の中に、彼らはいた。

 「クルトさん...ウィルムさん...ロッドさん....!!」

 リルートは出てくる涙を必死に拭いながら馬車の方へ駆け寄ると息を切らしながら言う。

 「すみません....今日の話なんですが....無しにできたり——」


 「リルート! もう来てたのか〜!」

 後ろから聞こえるその声はフレッドの声であった。リルートは振り向くと、フレッドの肩を掴む。

 「フレッド....今日行くのはやめない? 明日とかにさ....!」

 

 リルートの言葉を聞き、フレッドは驚きながら言う。

 「な、どうしてだよ....もう準備できてるぞ....具合でも悪いのか?」

 「違う....! 違うけど....よくないって!!」

 リルートはフレッドに言うがフレッドは首を横に振る。  

 「騎士の申し込みもあるんだ....また予約し直すとなるといつになるかわからないんだ....なんでそんな止めようとするんだ....?」

 フレッドの言葉にリルートはしばらく黙ると口を開く。


 「あのさ....実は私....同じ時間を繰り——」

 その瞬間であった、言葉を遮るように音が消えた、風も、鳥も、人の声も、全ての音が突然、静止した。

 「.......!?」

 

 周りの物が全く動かない、何がどうなって.....

 

 その時、目に映った知らない男がいた。

 高身長の細身の男、黒い服に十字架のペンダントをぶら下げていた、猫のような縦長の瞳孔をした緑色の眼、静止した世界の中で彼だけが動き、ゆっくりとリルートの元へ近づくのであった。

 「ダメだよリルート、お前にそれは言わせない」

 

 「お前....誰なの、それにこれは一体...!」

 リルートは思考がまとまらない、なぜ時が止まっているのか、この男は誰なのか、なぜこのようなことになっているのか。

 男はニヤリと笑うと口を開く。

 「ああ、それを知る権利はお前にない、少なくとも今は」

 男はリルートの目の前に立つと眼を見開く。とんでもない殺気がリルートの体を駆け巡り、リルートが硬直する。呼吸ができないほどの恐怖と共に、男は話し始める。

 「君の運命を見る者、そう言っておこう」

 男は拳を作るとそこから銀色の剣が手のひらから生えるように生成される。


 「これは聖剣だ、与えられた恩寵を謳歌しろ」

 男はそう言いながら、剣をリルートの鞄に入れると笑いながらゆっくりと歩き出す。

 「運命は君の手に委ねられている、せいぜい足掻いておくれよ....」

 その言葉と共に音が戻る、空気の感覚も、人々が動くその場所も全てが戻り、リルートは先程まで呼吸もできなかったため、過呼吸を起こしながら倒れる。


 「リルート! 大丈夫か!?」

 フレッドがリルートの元へ駆け寄るがリルートはゆっくりと立ち上がり、フレッドの腕を払いのける。

 「大丈夫....転んだだけ....」

  リルートの強張る表情に対してフレッドは指摘しようとするが言葉を詰まらせる、今まで見た彼女にはないほどの真剣な表情で、フレッドは聞くことができなかった。

 「いやあ、まあ何もなさそうでよかったな! 彼氏くんも優しいじゃないか!」

 ロッドがフレッドの肩を叩きながら言う。楽観的であったが彼女にとってはその軽口に救われる。そんなことを考えていると、馬車がやってくる。

 「さあ、準備ができましたよ」

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