第38話 カルック祭り
凍える空気、雪が所々積もるその村はいつも以上の活気で祭りの夜に向け、準備で賑わっていた。
「ん.....ぁ.....」
アモスの目に朝日が灯ると、ゆっくり目を見開くと、そこには思いもよらない光景があった。
「.....ぇ」
僅かに発された声、そしてアモスの視界に映った、映ってしまったものは僅かに飛び出た発達しきっていない少女の乳房であった。
寝ぼけながらもアモスは布団をリルートに被せ、それを隠す。他意はない。
「さて.....どうしようか.....」
アモスは大きなあくびをするとそのまま洗面台に向かうと顔を洗う。
冷たい水を顔に浴びて、だいぶ目が覚めた所でアモスは机の上に置かれた籠からパンを取り出すと頬張る。
モグモグと咀嚼する中で味わいをなんとなくで感じているとリルートが目を開く。
「ん......おはよ〜.....」
リルートが布団を払い除けた直後にアモスはすぐさま視線を逸らすと一言。
「..おはよう.........」
リルートはベットから起き上がると、パンを取ろうとテーブルに近づいたところで自身の体に視線が落ちる。
「わ.....! ぁぁ.......!」
すぐさま服を引いてそれを隠すが、みるみる顔が赤くなり始める。
「.....ごめん..」
アモスは冷や汗をかきながらただ一言、立ち上がるとそのまま部屋から静かに出ていくのであった。
アモスは先程の出来事を忘れようと町をふらつく。既に露店の準備や飾り付けなども殆ど済ませており、あとは夜まで待つと言うところで、飾り付けの手伝いをしているフィルを見つける。
「あ、フィルだ....」
ボソッと呟いた言葉にフィルは気づくとアモスの元に駆け寄る。
「アホ毛さんおはよー!」
フィルは元気よく言うとアモスはフィルに聞く。
「.....フィル......もう準備は終わったの?」
「うん! もう少しで終わるよー!」
フィルはニコニコと笑っているとアモスの表情を見て何か勘づくと、ニヤニヤと笑いながら聞く。
「お姉ちゃんと何かあった〜?」
アモスは一瞬だけドキッとなるが、平静を装いつつ聞く。
「.........なんでそう思ったの?」
「だって髪がいつもよりボサボサだし〜、パン屑とかついてるし〜喧嘩でもしたの〜?」
フィルの言葉に何も返せず、アモスは渋々経緯を説明するとフィルは興奮しながら言う。
「なかなかお姉ちゃんも面白いことをするんだねえ〜、フィルも見たかったなあ」
「......すごく.....気まずいんだけど.....」
しょんぼりしているアモスを見てフィルは言う。
「うーん....お姉ちゃんは別にそこまで怒ってないと思うけどなあ?」
「....そう....かな......」
「うん! アホ毛さんのことはわかっているはずだよ! だって根暗だもん!」
何かがアモスの心に突き刺さった。
「......そっか.......」
「あ、お姉ちゃんが来たよ!」
フィルが指差した方向に振り向くと、リルートは走ってこちらに向かってきていた。
「いやあ、ごめんごめん!」
リルートは息を切らしながらもアモスに軽く謝るとリルートはニコリと笑う。
「カルック祭り、楽しみだよね!」
「.....ああ、そうだね」
思ったよりもリルートが気にしてなさそうなところを見てアモスは安心して言葉を返す。
「大丈夫そうでよかったね〜」
「......そうだね....」
〜夜〜
「人が随分多いね!」
リルートがはしゃぎながら辺りを見渡す。周りには祭りを楽しむ人々が溢れ、地面が見えないほどである。
「確かに....人が多いって聞いてたけど.....こんなに多いとはね......」
アモスが感心しながらそう言うと、後ろから声をかけられる。
「アモスさん、こんばんは」
振り向くとそこにはレイを連れたライトがいた。
「いやあ、こんなに人が多いと冬なのに暑いですよね」
「そうだね.....まあ楽しむつもりだよ」
「気をつけてくださいよ? 人がたくさん来る分、スリとか犯罪も増えますからねー」
「ああ.....そうだね.....」
アモスはそう言ってリルートの腕を掴むと人混みの中へ姿を消す。
「.....お邪魔だったかな?」
ライトはそう言って笑う。
「レイ、何か買いたいものがあったら言ってよ、今日のために頑張ったんだ」
ライトはそう言って財布をだす。
「いいの? そう言われるとたくさん買ってもらいますよ?」
レイはそう言うと二人とも笑う、人々の中の一つとしてそれはあった。
「なんで引っ張るの〜?」
リルートがそう言うとアモスは手を離す。
「.....リルートは絶対邪魔しそうだから」
「えー? 私が邪魔するようにみえるー?」
リルートの言葉にアモスは何も返さない、それを見たリルートは頬を膨らませ、人混みの中を突き進む。
「ちょ.....待ってよ....!」
アモスが追いかけようとするが姿は既になかった。アモスは焦りながらもリルートが行ったであろう方向へ進む。
「....どこに.....」
アモスが辺りを見渡していると腕を掴まれる。
「ねえ、りんご飴買って」
リルートだった、上目遣いで明らかに態度が違う。アモスは呆れてため息をつくと財布を出す。
「どこに売ってるの......?」
「こっちだよ」
〜宿屋〜
宿屋の時計は11時を指していた。
「いやあ、ごめんごめん!」
「リルートが財布を持ってないとは......思わなかった......」
アモスは呆れながらそう言うと自室の扉を開ける。
「......自分はもう寝るよ......」
「じゃあおやすみ〜」
そう言ってアモスは扉を閉める。
「私も戻るかぁ」
リルートは新たに用意された奥の部屋へ行こうと廊下を歩く。
「......ここら辺はあんまり人がいないんだなぁ.....」
リルートはそうぼやく、部屋から物音が一切しない、多分ここら辺、部屋一帯に人が泊まっていないというよりも、祭りは朝まで続くのもあって誰もいないのだろう。
「うーん、朝まで遊んどくべきだったかなあ.....」
曲がり角を曲がると、奥の部屋にたどり着いた。




