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第37話 アイとアイ

 〜3ヶ月後〜

 「はあ.....寒い....」

 早朝、白い風景の中で顔まで持ってきた手に息を吹きかける。感覚を失い始めている指先にはまるで意味がない。雪景色と、寒さ。

 「あ、レイだ!」

 雪景色の中で足跡をつけながら道を歩き白い息を吐いていた。リルートはレイに声をかける。

 

 「レイ! やっほー!」

 「あ、リルートさん、今日も寒いですよね」

 リルートはレイの耳元へ近づくと小さな声で聞く。

 「ライトとはどう? 良い感じ?」

 「....うーん」

 レイは一呼吸おくと、ゆっくり話し始める。


 「ライトさんはとても良い人です.....人が困っていたらすぐに行動に移せる、それって素晴らしいことだと思います.....だけど....」

 「だけど? どうしたの?」

 「だからこそ思うんです、私なんかがライトさんの時間を奪って良いのかなって....ライトさんは私よりも価値のある....そんな気がするんです....」

 レイの悩みに対し、リルートはしばらく考えると、言う。

 「相手のことを思う....”愛“って互いの関係を深めることだと思うけどさ....自分にとって嬉しい、自分の気持ちの強い“恋”も....必要だと思うなあ。そうじゃないと関係を保つのも難しくなるって私は思うよ!」

 リルートの言葉をレイは受け止める。そしてしばらく考えるとニコリと微笑む。

 「そうなのかもですね....なんだか気が楽になりました、もう少し二人で....考えてみます」

 「うん、頑張ってね!」

 そうしてレイは去る中でリルートは手を振りながら送り出すと呟く。

 「....後でアモスのところに行かないとな.....」





 「ああぁぁあアモス!!」

 アモスの部屋に繋がるドアを殴打しながらアモスの名前を叫ぶと中からドタドタと慌てるような音が鳴るとアモスがドアを勢いよく開く。

 「......何..?」

 アモスはボサボサの髪、さっきまで寝てたのかウトウトしながら聞くとリルートはズカズカと部屋に入るとベットの下に落ちている重剣を手に取る。

  「———ッ!!」

  震剣を持った時と同様、紫色の電流が走り、麻痺した様な痛みがリルートを襲う。 

 「ダメか.....」

 リルートはしばらく痛みに耐えて重剣を持とうとするが、それでも耐えきれずリルートは手を離してしまう。

 「痛ったたた.....!」

 「.....大丈夫?」

 アモスがリルートの元に駆け寄るとリルートの手を取る。

 「.....怪我とかは....大丈夫だね....どうしたの? 急にさ」

 「いやあ、ちょっと聖剣について知りたいことがあってさ」

 「....知りたいこと?」

 アモスが首を傾げると、リルートは復剣を手に取るとアモスに持つ様に柄を突き出す。

 「持ってみて」

 「え....うん....」

 アモスは困惑し、少し警戒しながら柄に触れる。

 「うッ......!」

 アモスが復剣の柄に触れると、先ほどの様に痺れる様な痛みが走り、アモスは復剣から手を離す。

 「やっぱり....他人の聖剣を持つと弾かれてしまうみたいですね....」

 アモスは重剣を手に取るとそれを見つめ、しばらくすると口を開く。

 「これは....聖剣を持っていない普通の人でも....弾かれてしまうのかな....」

 「どうなんですかね....試してみますか?」

 「そうだね....まあできることがあったらね」

 「じゃあそろそろ私は帰るよ。あ、そうだった、明後日にこの村を出るからね。それを伝えにきたんだったよ」

 リルートはそう言ってアモスの部屋から出ていくのであった。

 

 (この聖剣は他人が持ったら弾くのか、そもそもこの剣を”創った“男は誰なのか....わからないことだらけだ、マルクスが私を狙う理由も———)




  SAVE



 目を開いた時、いつもの天井が映るはずだった。感覚は冷たい、だが目の前に見える人影が違うと囁いているようで、もう少し意識をはっきりさせた時、その顔を見た。


 「———やあ、久しぶりだね?」

 声ではっきり意識が戻った。刻まれた声の主。フォルトナだ。


 「——っ!?」

 リルートはすぐさま飛び上がると、拳を構える。武器はない、緊張感に蝕まれながらもフォルトナへ視線を向けると、フォルトナは笑う。

 「なかなか良い判断の速度だけどさあ、武器を手放すのはどうかと——っ....!!」

 フォルトナは余裕綽々と復剣に触れた瞬間に紫の電流が広がると、反射的に手を離し、復剣はガチャンと地面へ落ちる。


 「あはは.....ちゃんとしてるようだね....だけど武器はないよね?」

 フォルトナはすぐさまリルートと距離を詰めると、回転しながら顔面に蹴りを打ち込む。

 「く........っ!!」

 リルートはその蹴りで鼻血を垂らしながらも後ろへ後退すると、その瞬間に足場が割れ、足がめり込む。

 「おっと、ここまでかな?」

 フォルトナはリルートの背後を取ると自身の着ていた羽織を脱ぎ、彼女の首に巻きつける。

 「.....っは.......く....ぁ......!」

 呼吸ができず悶える中で、リルートは抵抗するが力は収まる気配がなく、視界が暗くなる。リルートは割れた先の尖った床板を拾うと、フォルトナの首の向かって突き出す。

 「おっと、流石に当たらないよ」

 リルートはそのまま意識を失い、鼓動が止まった。

 



 目を開くその瞬間にリルートは完全に意識の戻ってない状態で拳を打ち込む。

 「——おっと....!?」

 フォルトナは尻餅をつくと、リルートはテーブルの横に置かれた復剣を手に取ると鞘を捨てて構える。

 「フォルトナ....! なんでここに!?」

 リルートの問いにフォルトナは笑いながら答える。

 「いやあ、君がどこにいるのか意外とわからないものでねぇ、でもまあこうして見つかったんだし、やっぱり僕は運がいいのかもしれないね?」

 リルートはすぐさま復剣をフォルトナに首元に振るう。しかしフォルトナは足を滑らせてそのまま地面に倒れると、足を上へと突き上げ、リルートの顎を蹴り飛ばす。

 「が....っぁ....!!」

 リルートは顎の痛みに耐えながらもフォルトナの首に向かって剣を突き立てる。



 「危ないなあ」

 フォルトナはその剣撃を躱わすとふらりと立ち上がる、リルートは息を切らしてるが、彼はまだ余裕そうであった。そんな時だった。

 「なっ.....———!?」

 扉が勢いよく開くとアモスが飛び出し、フォルトナに切り掛かる。フォルトナは突然の出来事に対応できずに体勢を僅かに崩した直後、アモスはフォルトナを蹴り飛ばす。

 「おっと.....中々強いね」

 フォルトナはすぐさま体勢を戻すが、その瞬間に縄鏢がフォルトナを狙う。縄鏢の元には村長がおり、素早く手元に戻すと、フォルトナの元に一直線に縄鏢が飛ぶ。その縄鏢の切先に自身のローブを投げ、軌道をずらすと窓の方へ走る。


 

 「あはは.......流石にちょっと厳しいかなぁ....?」

 フォルトナはそう言って窓ガラスを割ってそこから身を乗り出すと振り向いて言う。

 「今回は僕の負けだよ、だけど次こそはね?」

 そう言うと、リルートの道具箱に入っていた閃光弾が光り、それが晴れる頃にはフォルトナの姿は消えているのであった。二人は窓から外を見るがすでにフォルトナはいない。リルートはその場にへたり込むと、アモスが手を出す。

 「........あれが......フォルトナだよね.......」

 「うん.....まさか急に来るとは思ってなかったけど、アモスのおかげで助かったよ。村長さんも、ありがとうございます」

 リルートはアモスの手を掴むと立ち上がる。

 「にしてもカルック祭りの前だと言うのに....落下防止のために窓に金具があったからな.....蹴破るとは.....店主には言っておくから、君は....この部屋に泊まるってのもな.....急いで部屋を用意できないか聞いて——」

 「じゃあアモスの部屋に泊まるので大丈夫ですよ」

 「.......え?」

 アモスは困り顔でリルートに視線を移すがリルートは全く気にしてない様子でアモスの方を見る。

 「いいよね!」

 アモスは少しだけ視線を逸らすと小さく頷く。

 「じゃあ今日だけはそういうことで!」


 そう言ってリルートはアモスについていくのであった。






 「じゃあ自分はソファで寝るから........リルートはベット使って............」

 アモスはそう言ってソファに座るとそのまま身体を倒し、目を瞑る。

 「ん、おやすみ〜....」

 リルートはそう言ってベットに横になると布団を被り、瞼を閉じる。





 「........寝れない.....」

 リルートはしばらくモゾモゾとし続ける、何もない時間と共に、繰り出されるのは思考であった。

 

 マルクスとは結局、なぜ自身を襲おうとするのか。殺す理由も、そして自身がそれに向かっている理由もわからない。だけど......運命的な何かを感じて、それがやまないのだ。




 「すまない、フォルトナ」

 真っ黒のフード付きのコート、左腕のない金髪の眉目秀麗の男“マルクス”は歩きながら言う、鋭く強い青眼がフォルトナをみることもなく前を向いている。それについていくように歩きながらフォルトナは話す。

 「だけどさあ.....どうしてあんな子を殺そうと考えているのかなぁ?」

 フォルトナの問いにマルクスは俯くと立ち止まる。

 「ああ.....俺は......アイツの恩恵(ちから)が必要なんだ.....」

 「へえ.....だけどあの子の恩恵って武器の再生じゃあないの?」

 フォルトナの問いにマルクスは何も答えず、スタスタと歩いて行き、フォルトナは大きな欠伸をすると呟く。

 「.....つれないなあ.....」

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