第36話 正義のヒーロー
陽気漂う某日。
人々が行き交う活気ある商店街に二つの影があった。
「ふふふ.....なかなかいい感じになってるじゃないか....!」
ニヤニヤと物陰からライトの跡をつけるリルートと、それについていくアモス、周りからは不審の目で見られているなど、リルートは気づいてもいなかった。
「.....もうやめない.....?」
アモスの言葉に対し、リルートは信じられないというような顔をして反論する。
「ライトさんの恋が実るようにサポートしようと思ってるんだよ....!」
「いや....どう考えても余計なお世話——」
「何してるんですか....?」
アモスの声を遮って現れたのはライトだった。表情は崩れず笑顔だったがどこかしら恐怖がある、レイがその背後で恥ずかしそうに佇んでいる様子が見て取れた。突如、ライトはおかしそうに笑みを溢すと、
「大丈夫ですよ、リルートさん達の気持ちも嬉しいですけど、僕だってそれくらいは弁えてるつもりなので大丈夫ですよ」
「そっか....せっかく私の考えた87のデートプランが.....」
「......なんでそんなに考えつくの?」
呆れながらもアモスがリルートに聞くとリルートはどこからかスクラップ帳を取り出す。
「これだよ! 一晩で思いついたの!」
ライトはそのスクラップ帳を受け取り、ペラペラと軽く流し見する。そしてそのスクラップ帳を閉じるとため息をつく。
「.......遠慮しときます....それじゃあそろそろ——」
ライトはそれをリルートに返すと、手をひらひらとさせながら少女の元へと向かうのであった。
リルートは自身のスクラップ帳をじっと見つめると涙目になりながらアモスに言い放つ。
「.....ご飯食べに行こうよっ!!」
「うん......」
そうして道中を歩いているが、ふとリルートは疑問を口にする。
「魔族ってどんな奴のことをいうの?」
「......どうしたの? 急に」
「いや、なんとなく気になって、何か知ってる?」
アドレットと対峙したあの魔族について思い出し、リルートが聞くとアモスは答える。
「えっと.......魔族は人の見た目をした魔物だよ、基本的に人以上の身体能力と魔力を持ってるんだけど、今はもう殆ど絶滅した.....らしいよ」
「それってルックスの話?」
リルートの言葉にアモスはコクリと頷くと話を続ける。
「魔族とはもう殆ど会うことは........無いだろうけど、倒し方が普通の魔物と少し違うんだ.....」
「違うって....何が違うの?」
「魔族は基本的に心臓部に核があって、それを破壊しないと再生することができるんだ、一応再生できないくらい肉体を損傷させてもいいみたいだけど.....」
「ふーん.....コアって心臓と同じなの?」
「見た目は宝石に近い見た目らしい........でももうそんなの見る機会はないしね」
*****
「さっき僕と遊んでくれたんだー!」
「馬車の修理を手伝ってくれてねぇ」
「草むしりを一緒に———」
道中でライトのことを耳にする。彼はこの村に来て一年ほどだが、彼は様々な人を助けて回ることが多いらしい。
「いやあ、やっぱりライトさんは私の見込み通りだね!」
リルートもすっかり泣き止み、ライトのことを話していた。アモスは頷く。返す言葉も不器用ではあったがそれなりに楽しい会話をしていた。
「いやあ、それで———」
リルートは会話を止めると、遠くにある一本の木に目をつける。
「ん....あれはフィルちゃんかな....?」
目を細めて見るとそこには木の前で立ち尽くすフィルとレイがいた。リルート達はそれが気になり、そこに小走りで向かう。
「———子猫が降りれない?」
「そうなんだよ! フィルは猫さんを触ると痒くなるから助けてあげられないし困ってたんだ! そしたら——」
その言葉と共に木の葉が散ると同時に宙に浮いた子猫がライトの元に寄せられる。
「わあ! 本当に助けてくれたんだね! 念力ってすごい便利だね! 今度教会の時計も直してよ!」
「うん、いいよ」
フィルが嬉しそうにそういうとライトはニコリと笑う。
「こういうことがあったらいつでも僕に相談してよ、何か役に立って———....あれ、リルートさんにアモスさん....?」
「あー.....別に追いかけてたわけじゃないんだけど.....」
リルートの言葉にライトは少し考えると納得した様子で言う。
「そうなんですね、まあ小さな村ですし、こういうこともあるでしょ」
「ねーねー、ライトとそこの子は、恋人なの?」
「うん、そうだよ」
ライトの言葉にフィルは目をキラキラと輝かせながらライトとレイに質問をぶつける。
「どこがよかったのー? 良いところはどこー? いつから一緒に——!」
リルートはなんとなくフィルの口を塞いでみると、フィルは口を必死にモゴモゴと動かす。まだ質問し足りないようだ。
「ふふ、面白い子ですね」
レイがフィルに向けて言うと、フィルは照れくさそうに笑う。
「それじゃあ行きます、バイバイ!」
ライト達の姿が見えなくなるとリルートはフィルから手を離す。
「プハっ! ようやく離してくれたね!」
フィルはプンと怒りの表情を見せる。だがとても可愛らしいものでリルートは少しだけ考えるそぶりをするとフィルに質問する。
「フィルちゃんは私たちにもあんなこと言ったけど....恋人とかに憧れているの?」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにフィルは鼻高々に口に出す。
「フィルは修道院にずっといたから、そういう話は大好きで興味津々なんだよ!」
「......プリーストなのに大丈夫なの....?」
アモスの問いにフィルは答える。
「フィルは他の子と少しだけ違うんだ! だから大丈夫なんだよー」
「違うって?」
「そんなことはどうでも良いと思うな! それよりもフィルはお腹が空いたんだよ!」
フィルは二人の手を掴むと引っ張る。
「そうだね、じゃあご飯にしよっか!」




