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第30話 使徒の少女

 無様な生命だ、何度やり直しても変わらないと言うのに、なぜ繰り返す? なおさら気に入った。


 諦めない、私はなにがあろうと、必ず———




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 「ん.......」

 目を覚ますと、既に幾ら時間が経ったのかはわからない、だが西方諸国まではまだ遠い。馬車の音は心地よいもので右半身が暖かい。リルートは横に視線をずらした瞬間に驚く。


 「えあ!?」

 アモスに寄りかかったまま寝ていた。リルートは驚きながらも寝ているアモスと距離を取ると、笑う声が聞こえる。

 リルートは視線を声のした方向を向くとピンク色の髪をしたツインテールの少女がいた。見る限りプリーストでとても小さく可愛らしい、胸元にあるピンクのリボンが強調されているデザインのようだ、少女は疑問そうにリルートに聞く。

 「お姉ちゃん達って、()()?」

 少女はニヤニヤとしている、嘲笑うかの様な笑い、リルートは苦笑いになりながらも答える。


 「違うよ〜私と、このお兄ちゃんはそんなんじゃないよ〜」

 「そうなんだー、つまらないねー」

 「君はどうしたの? 10歳くらいに見えるけど、1人なの?」

 リルートの問いに少女は答える。

 「“フィル”! プリーストとしてゴミ処理をしてるんだよ! 一応言うけど10歳じゃないよ!!」

 少女はそう言って聖典を取り出す。

 「そうなんだ、ちなみに何歳なの?」

 「12歳!!」

 「たいして変わらないね.....」

 リルートは笑いながら言うとフィルはアモスを揺り、起こす。

 「ん....なにこの子....」

 アモスは目を開くと状況がわからず一瞬だけ硬直すると、フィルはアモスの目元にある3本の引っ掻き傷を指差す。

 「この傷どうしたのー?」

 「あんまりそういうことは....!」

 リルートがフィルを注意しようとするとアモスは笑う。

 「大した傷じゃないよ....オーガと戦った時に.....」

 アモスの顔は段々と暗くなるとフィルは声を上げる。

 「戦った傷!」

 「別にそれだけだよ....」



 「村が見えてきましたよー!」

 御者の声でリルートは身を乗り出すとそこにはリルートの村よりも活気のある田舎村であった。御者の話によると西方諸国までの道は土砂崩れによりしばらく行くことができない。しばらく滞在することになるそうだ。

 

 リルート達は村で降りるとフィルも降りる。

 「フィルちゃんはここに用事があるの?」

 リルートの問いにフィルは首を横に振る。

 「暇だからお姉ちゃん達についてく〜」

 「着いてくって言っても、買い出しを済ませるだけだよ?」

 「いいのー」

 そうしてリルートの後ろをフィルは着いていく、しばらくこの村に滞在するつもりではあった、リルートは食料品店に入ると中は果実の匂いで溢れていた。その甘く清々しい空間で深呼吸をする。リルートは目の前にあるリンゴを取ろうとすると、横から現れたもう一つの手とぶつかり合う。

 「あ、ごめんなさい」

 リルートが平謝りしながらその手の主を見ると、茶髪で同い年くらいの少年がいた。

 「あ、ごめん....先にとってよ」

 「いいの? じゃあお先に」

 リルートは少年の言われるがままにリンゴを一つ取る。少年は続いてリンゴを取り、リルートは少年に話しかけてみる。

 「君もリンゴ好きなの?」

 リルートの問いに少年は少し考える動作をすると答える。

 「うーん、まあ見た目は好きかな、可愛いよね」

 「.....ん?」

 リルートの疑問の声に少年は慌てて訂正する。

 「いやいや! ただ見た目がね! ほら、こういうのって...!!」

 少年の言いたいことはなんとなくわかる、だが問題はその発言を真顔で、返しとして、少しおかしいところだ。

 「まあなんとなくわかります」

 「そっか....ごめんね、変なこと言って、僕の名前は“ライト”。冒険者をやっていてね、君はこの村の人?」

 「リルートです。私も冒険者ですよ、旅をしててね」

 「そっか、僕はここにちょっとした用事があってね、まあ少ししかいないけど、よろしくね」

 ライトが手を出すとそれに応えるように握手をするのであった。

 「そういえば僕の止まってる宿って時計がロビーにしかないんですよ、それに出入り口はロビー以外にないしですごく不便なんですよね〜」

 「ふーん? 窓から出るなんてどうです?」

 リルートは何も考えず言うとライトは笑って返す。

 「残念ながら窓は金具で固定されてて出ることはできないんですよ。まあ安いですから」

 「なんだか大変そうですね〜、じゃあ私はそろそろ行きます」

 「ではでは」

 そうして次々と回っていき、武器屋へ入る。


 「うーん....」

 リルートは目に入ったナイフを手に取り、刀身を確認する。刃こぼれはない、だが僅かな錆が目に入り、気がかりであった。リルートは他のナイフを手に取る、大型のナイフだが重さは復剣と同じ重さ。リルートがナイフを戻し、ロングソードを手に取る。

 「....やっぱり重い....」

 彼女にとって通常の剣は重すぎる。復剣は再生するからこそ耐久力を犠牲に軽量化を可能とした剣に過ぎない。それ以外の何者でもない。

 「お姉ちゃんはどうして悩んでるのー?」

 フィルの疑問にリルートは答える。

 「選択肢.....いろんな物があれば色んなことができるでしょ? できることが多いと便利なんだよ!」

 リルートはアドレットの言っていたことをさも自分が考えたことの様にドヤ顔で言う。フィルはしばらく考えると口を開く。

 「よくわかんない」

 「よくわかんないかあ....」




 村を回っている間に既に時間は夕暮れを過ぎ、今にも夜を迎えようとしていた。

 「宿は取っといたよ。あっちの方....」

 アモスは村の中央近くにある少し大きな建物を指差す。アモスの言葉を聞いて、リルートはフィルの前でしゃがむと目線の高さを合わせ、聞く。

 「じゃあ行きましょうか、フィルちゃんはどうするの?」

 「フィルは教会でお泊まりするから大丈夫だよ!」

 「そっか、それじゃあね」


 そうして2人は宿屋へと向かうのであった。

  


 「......」

 蝋燭の灯りと木の香り。隣からは微かに生活音がし、アモスがいるのがよくわかる。部屋は老朽化してるような節を感じるが、防音性は高い方だと理解する。部屋のベッド上でリルートはアドレットから受け取った銀の鍵を見つめていた。なんの鍵なのか、いつ使うのかわからない。だが錆ひとつないその鍵はとても美しく、それ自体に価値がある様であった。

 「まあいいや、しばらく馬車は出ない様だし....ゆっくりしよっと....」

 そうしてリルートは眠りにつくにであった。

新章突入、といった所でしょうか。すみません、気が利いた言葉を載せればよかったのでしょうけど

続きを読みたい、面白いと思っていただければブックマークや評価などよろしくお願いします。

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