第28話 神に愛されし恩恵
「お、ようやく戻ったようっすね」
「疲れました....」
リルートは席に座るとそのまま力無く前に倒れる。
「んへぇ.....」
「傷は男の勲章と言うっすけど、まあ女の子ですしね、これあげるっすよ」
そういってアドレットは銀色の鍵を渡す。
「なんですかこれ....?」
リルートの力無い声にアドレットは答える。
「これは昔、俺が冒険で手に入れた鍵なんすよ、まあなんの鍵かはわかんないっすけど、もしかしたら宝とかが手に入るかもしれないっす、自分は使う機会がないっすし、どうぞ」
リルートはその鍵を受け取ると微笑む。
「ありがとうございま———」
「へえ、俺もそれ、気になるなあ?」
その声は、意識してない所で突然聞こえた、横を見た時、男はいた。黒と白にちょうど半々に分かれた髪色と肩を覆うほど黒色のケープを纏った若い男だ、リルートは突然現れた男に驚き、後ろに体勢を崩す、一方でアドレットの蹴りは既に男の眼の前まで迫っていた。
「血の気が多いよなあ、アドレット?」
男はひらりと蹴りを避ける。アドレットはすぐさま散弾銃を男に向けると引き金を引く、しかし——
「な...玉詰まり....!?」
銃弾は発射されない、すぐさまナイフを取り出し、突き出すと同時に男に抱きつくと首に腕を回し、締め上げる。
「....! きっついなあ.....!」
男は呼吸ができず、抵抗するがアドレットは離さない、男の意識が途切れそうになったその時、足元の木が崩れ、そのままアドレットの上から机や椅子が雪崩こむ。
「ぐ....」
アドレットが目を開けると、既に男は散弾銃をアドレットに向けていた。
「偶然かなあ? 劣化していた様だね?」
「この...!」
リルートはすぐさま剣を振るう、男はニヤリと笑う。アドレットから距離を取ると銃を投げ捨てる。周りの冒険者達は武器を持ち、男を囲うが余裕そうに男は語る。
「俺の名前はフォルトナ、随分と手厚い歓迎だね」
「クソが!!」
斧を持った男はフォルトナに向かって振り下ろす、フォルトナはその一撃を避けると同時に足を掛け、男を転ばせると斧は宙を舞い、男の頭に突き刺さる。
「いやあ、怖いもんだねえ」
次々と冒険者達はフォルトナに攻撃をする、だが一切の焦りなくフォルトナは次々と攻撃を避ける、左右から同時に攻撃される、だが剣撃同士がぶつかり合い、火花が散った直後に散弾銃の火薬に引火し、1人の足が撃ち抜かれる。
「いやあ、運が悪いね、君」
撃ち抜かれた男の剣はもう1人の男に向かう、飛んできた剣を弾くがその瞬間にフォルトナが顔面に蹴りを入れる。
「———フォルトナ.....生きてたんすね....」
「知ってるんですか.....?」
アドレットはゆっくり立ち上がると剣を構える。
「すまないっすけど今はきついっす、後で言うっす」
アドレットはフォルトナに向かって一撃を与えるが、フォルトナはその攻撃を躱わす、男達はすぐさま距離を取ると2人を囲み様にしてフォルトナを逃さない。さながらその光景は決闘の様であった。
アドレットの剣撃がフォルトナの首を狙うと同時に靴先からワイヤーが飛び出す。
「相変わらず卑怯だね?」
フォルトナはワイヤーを手に持つと剣撃をワイヤーで防ぎ絡める、その瞬間にアドレットは毒針を口から吹くと、フォルトナの腕に数本突き刺さる。
「麻痺毒かな? 悪くないね」
フォルトナはアドレットに蹴りを入れるがその蹴りを避けると上へ跳び、フォルトナの頭上をとった瞬間にクロスボウを撃つ。
フォルトナは飛んできたボルトに対して小石を投げると命中しボルトの軌道を逸らす。
アドレットが地面に着地したその瞬間にナイフを構える、フォルトナは剣を拾うとアドレットに向ける。
「流石に分が悪いかなあ?」
「多勢に無勢とは言ったものっす.....不利ならさっさと帰ってくれないっすか?」
フォルトナはニヤリと笑う、アドレットの腰元を指差すと言う。
「いやあ、本当にすごいよね、ほとんどの武器が使えなかったよ、だけどね」
その直後、アドレットの持っていた閃光弾が一斉に光り出し、アドレットはすぐさまベルトを前に投げ捨てる。
「それじゃ、お疲れ様」
「クソ....!!」
そうしてギルド内は光に包まれ、目を開けると既にフォルトナは消えていた。
「.....なんなんですか....あの人....」
リルートの言葉にアドレットは答える。
「フォルトナ、あいつはマルクスの仲間っす、3年前....あの事件で———」
アドレットの意識はそのまま途絶え、その場に倒れるのであった。
「アドレットさん!」
リルートはアドレットの元に駆け寄ると荒くれ者がアドレットを背負う。
「とりあえず救護室に運んでくるぜ! お前もついてこい!」
「は....はい!」




