第26話 血を飾る結晶
地上に近づき暖かい風が漂う中でリルートは目覚めた。全身の痛みと、眼球にある記憶の痛み。
「また死んだ....!?」
リルートはすぐに立ち上がるとアモスの肩を揺するとアモスに声をかける。
「おきてください!」
リルートの言葉にアモスは目を開く。
「どうしたの....?」
リルートはすぐさまリュックを背負うと、馬車から身を乗り出す。
「敵がどこかにいます....!」
リルートはアモスと御者に聞こえるように言った、その直後にガラスの割れる音が鳴る。
「何かきます!!」
リルートの叫びに、アモスはリルートを即座に抱えると馬車から飛び出る、そして草むらの中で身体を起き上がらせると、目を疑うような光景を見る。
「な.....に.....あれ.....」
リルートは呆然とする、それは巨大な結晶石のようなものであった。馬車全体を破壊し、御者の血で赤く染められる。2人が驚いている内に結晶にヒビが入ると、一気に破壊される。
「この一撃を、よく避けましたね?」
「なぜこんなことを.....」
声の方向を見るとそこには身体の半分の皮膚から結晶の生えた男がいた、上質の白いワイシャツの上に茶褐色のコートと、凛々しい顔立ち、20代後半ほど、トゲトゲとした茶髪の髪とその強いまっすぐな眼でこちらを見る。その男はアモスの言葉を無視してそのまま続ける。
「あなたには恨みはない、しかし死んでいただきます」
男は地面を力強く踏みつけたその瞬間に、結晶の槍がアモスに向かって地面を這うように生成される。
「.....!!」
アモスは声を発せない、しかし背後にのけぞると紙一重でその一撃を避ける、リルートは走り出すと男に向かう。復剣を構え、男とあと数歩ほどまで。その瞬間に、男は両手を地面につける。
「美しい結晶だろう?」
次の瞬間、男を中心に結晶の剣山が突如として生成される、リルートは後ろに跳ぶが間に合わない、リルートの左腕が飛び散る。
「うああぁぁあッ....!!」
激痛が彼女を襲う、左腕の感覚は瞬時に消え、その断面に痛みが残るだけであった。
「落ち着いて....!」
アモスはリルートの元へ駆け寄るとすぐさま包帯を切断された左腕に巻き、止血が終わった直後にアモスは男に向かって走り出し、男と距離をつけると高く跳び、重剣を振り下ろしながら落下する。
「いい動きだ、洗練されている」
男は結晶の纏わる直剣を取り出すと、アモスの落下攻撃を受け止めるように防御動作をとったその直後に結晶の剣山がアモスに向かって生成される。
「く......!」
アモスは結晶の動きに合わせて身を回転して躱わすと結晶の上で[受け身]をとり結晶の上を走る、確実に距離を詰めると、結晶の足場から跳び、男に真上を取る。その瞬間に男の背後からリルートが現れると、二人は同時に剣を振るう。
「悪くない、だが甘い」
男はリルートの剣撃を躱わすと同時に蹴り飛ばし、アモスの剣撃に対して横に避ける。
「その重さで落下すればただでは済まないだろう?」
結晶の破片と土煙が舞う中で男はアモスの落下した場所に剣撃を振るう。
「まずい....!」
リルートはすぐさま男に剣撃を打ち込むと同時に爪に付いた打金を打ち、火を放つ、男は炎を、結晶に包まれた腕で防御すると、男の足元から鋭い結晶が生成され、リルートの足に突き刺さる。
激痛が彼女の足に走る、ゆっくりと筋肉を裂き、骨を砕き、血が流れる。異物感と不快感は初めて感じる痛みであった。
「この..!!」
アモスは男の首に剣撃を打ち込む、男は避けることができず、一撃は完全に入った。しかし——
「私に一撃を入れたな」
「な.....!?」
剣撃は首から生えた結晶に守られていた、そして即座に鋭い結晶を手にすると男はアモスを刺し貫く。
「アモスさん!!」
リルートは叫ぶがアモスは声も発せず、立ったまま絶命する、リルートが驚愕していると、その瞬間に男の剣撃は一直線にリルートの心臓を狙うのであった。
心臓は貫かれ、絶命するまでわずか数秒、彼女にとってその数秒は長く、重苦しいものであった。
私は目を覚ました。その瞬間に手鏡を取り出すと周りを確認する。
「一体どこに....」
リルートが手鏡を横に傾けながら調べていると、ガラスの割れる音の方向について思考し、ひらめく。
「後ろか....?」
リルートはゆっくりと後ろ側の布を裂くと、男の姿を視認する。だが既に結晶が目の前まで迫っていた。
「敵です!!」
アモスはすぐに目を覚ます、だが遅かった、2人は勢いよく飛び出るが、アモスの足に結晶が突き刺さる。
「く.....!」
アモスはすぐさま重剣を重化させると結晶を叩き割る。アモスは着地する、激痛と結晶の破片が肉を傷つける、アモスは痛みに必死に耐え、剣を構える。
「殺したつもりでしたが、私もまだまだのようですね」
男は余裕そうに近づく、リルートはアモスを守るように立ち塞がる。
「あなたは.....一体なんなんですか....?」
リルートの問いに対して男は不敵に笑う。
「その問いに答える気はない」
男はすぐさま地を踏むと結晶を生成する。リルートは後ろに下がりながらも結晶を叩き切ろうと復剣を打ち込む。
結晶にはヒビが入る、だが斬り壊すことはできず、そんなことをしている間にも結晶は広がる。
「リルート....!」
アモスの言葉を聞き、リルートは走る。
「なるほど?」
男は手のひらを前にかざすと即座に結晶の大壁が生成される、しかしアモスはその結晶壁を重化させた剣で叩き壊すとリルートが飛び込む。
「惜しいな」
男は不敵に笑う、そして気づいた時には、リルートの両腕は地に落ちていた。




