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第25話 斜位

 ガルザルの鼓動は止まり、震剣は灰になった。一度も死ななかった勝利、なのにとても苦しかった。死なない犠牲は大きく、戦闘が終わってしまえば痛みに酔うことも叶わない。イルン、ダイン、ミール、彼らの犠牲は自身の命を捨てれば解決できたことなのだから。




 「ごめんなさい....」

 リルートは3人の死体に向かって呟く。3人の顔は穏やかなものではない。血の臭いと蝿が空を漂う。苦悶の表情がその死を鮮明に伝えるようで、痛かった。


 「....ート....」

 

 私は今まで何度も死んでいる、なのになぜ死ねなかった、なぜ死ななかった? 繰り返せることはわかっていたのに、痛みにも慣れたと思っていたのに、今の痛みもそうだ、全身が痛い。痛いのに心の痛みの方が強い、私が不甲斐ないばかりに彼らは——


 「リルート....!!」

 

 アモスの言葉を私は知覚した。


 「どう....しました?」

 リルートの力無い声にアモスはしばらく黙ると言う。

 「仲間が死んで悲しいって思ってるんだよね....もしも自分が動いていたら助かったんじゃないかって....」

 そうだ、私が戻っていれば必ず助けられた、私はそんなこともできないんだよ。


 「自分は思うよ....不甲斐ないからできないって、そんな深く考えなくてもいいんだよ。自身が特別な存在だって感じちゃってるから....彼らと同じ人間なのに、だから助けられなかったって、彼らに失礼とは言わないけどさ....それは違うと思うんだよ....」


 「だけど私は....変えられたのに....」

 リルートの言葉を聞いて、アモスは柔く微笑むと、悲しそうな声で言う。

 「たとえ救える力が君にあったとしても、しょうがないと思うよ、救わなかったんじゃない、救えなかっただけだから....」



 救わなかったんだ、あそこで死ぬ勇気があれば.........なのにどうしてだろう、なんで涙が溢れて止まないんだろう....


 「....うう....ううぅ....」

 リルートは泣きながら言う、自身を悪いと考え、1人で溜め込んでいたからだろうか、彼女にとってその言葉は最も欲しかった言葉だったのかもしれない。

 リルートの感謝の言葉にアモスは頷くと遺体を抱える。

 「せめて弔ってあげよう」

 そうして2人で三人の遺体を埋葬する。掘り起こす土の感触はなんでもない、だが埋める時、別れは空虚で、冷たく、優しかった。

 「....じゃあいこうか」



 馬車の音と、御者と馬、私と彼。山脈峠を通る中にいた。

 「アモスさん、ひとつ聞きたいんですけど....あの高所からどうやって生き残ったんですか?」

 リルートの言葉にしばらくアモスは黙ると口を開く。

 「信じられないかもしれないけど、自分の恩寵は[重化]じゃないんです」

 「てことはもしかして....ただの怪力?」

 「いや....実はこれ、聖剣っていうもので....この剣自体に恩寵が宿っているんだ、自分の本当の恩寵は[受け身]、落下の衝撃とかを最小限に減らせるんだ」

 アモスはそう言って黒剣を取り出す。

 「名前は[重剣]、自在に重量を変えられるんです、これを手に入れたのは自分が......いや、なんでもないよ」

 アモスは歯切れの悪そうに黙る、リルートのこれ以上追求しないようにする。

 「私もなんです」

 「どういうこと?」

 リルートの真剣な表情にアモスが聞くと答える。

 「私の剣も聖剣なんです、復剣。破壊されても再生する剣なんです、私の本当の恩寵は———」




 その時、周りの全てが止まる、まただ、あの男が.....


 男はいない、だがその瞬間に心臓に激痛が走り、リルートは身体を動かせないながらも悶絶する。


 痛い、苦しい、やはりそうだ、私のこの繰り返す力については話せないようだ。


 しばらく激痛が走り続け、10秒ほど経つと時間の動きは戻る。


 「本当の恩寵は....ないんです」

 リルートの言葉にアモスはキョトンとした顔になる。リルートは照れくさそうに言うとアモスは微笑む。


 「そうなんだ....この聖剣は手に入る条件も、なぜ持っているのかもわからないけど....だけど何か理由があるんじゃないかと、自分は考えているんだ」

 アモスの言葉にリルートは顎に手をやると思考する。

 

 あの時、三人の聖剣使いが同時に集まった、なんの意味があるのかわからない。震剣は灰になった、今の所わかるのは、アモスさん、ガルザル、そして私。他に誰がいるんだ?

 

 「アモスさん、一ついいですか?」

 リルートが声をかけるとアモスはリルートの方を向く。

 「....どうしたの?」

 リルートは恥ずかしそうに言う。

 「私と....仲間になってくれませんか?」

 「......いいよ」









 



  SAVE




 

 地上に近づき暖かい風が漂う中でリルートは目覚めた。全身の痛みはまだ残っているがそれ以上に清々しい気分だった、涙はとっくに枯れ果て、だが悲しみの残響がある。なんとも言えないその空間であった。


 

 リルートはゆっくり起き上がると頭を掻くと、左半分の髪だけが切れていることに気づく。

 「あの時、切れちゃったのか.....変かな....」


 アモスは既に目を瞑っていた。リルートは自身のリュックの中身を確認しようとしたその時、ガラスの割れる音が鳴った。

 「......?」

 リルートが前を向いたその瞬間、何かが目に飛び込み、激痛と共に視界は真っ暗になる。

 リルートは叫ぶ暇もなく、意識は混乱する思考の中で途切れた。

山賊を倒し、終わりはしましたがまだまだ続きます。

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