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第23話 覚悟の一つ

 せめて情報を残してから....全力を尽くすんだ、努力してから死ね、私の命は他の人よりも軽いんだから.....


 リルートは思考しながら逃げているとイルンは叫ぶ。

 「リルートさん! きてます!」

 リルートが後ろ振り向いた時、既にガルザルは目の前にまで迫っていた。リルートはすぐさま復剣でガルザルの首を狙う。しかしガルザルはリルートの復剣を切断しながら、リルートの腹を蹴り、後ろへと飛ばす。

 「がッ.....!!」

 リルートは廊下に叩きつけられ、ガルザルは追撃を入れようと地を蹴ったその時であった。

 「こっちです!」

 イルンは叫ぶと矢を放つ。ガルザルは防御の動作を取るが、矢は上へと放たれると、石壁にぶつかり、崩れると廊下への道が埋まる。

 「自分から逃げ場をなくすとは馬鹿だなあ?」

 「いいんですよ」

 イルンは山賊の剣を拾うと構える。

 「ここから勝負と行こうじゃないですか?」

 「いいぜえ? 何秒耐えられるかな?」




 「まずい......」

 リルートの目は既に瞑り掛けていた。既に意識が朦朧として、意識を失いそうであった。

 「諦めたくない.........せめて死なないとみんなは....」

 リルートは震える手で復剣を持つ。刃はゆっくりと自身の首元に近づいてきた。リルートは覚悟を決めて、刺そうとする。しかし——


「....刺さ....ないと.....」

 刃は寸前で止まる、ここにきて恐怖が彼女を襲う。ありふれた死。生き返れるはずの死、なのにとても怖い。その時、彼女の意識をプツリと切れるのであった。




 「後悔することもたくさんあった、それは俺もお前も同じだ、だからこそ、今やるんだ」

 黒い人影は言う。男の声だ、優しいけど痛々しい声だ。

 「それでも...もうだめだよ....こんな悲しい思いをし続けるなんて....」

 私は答えた、答えた? 何ができないんだ?

 「そうかもしれない、だけどお前にしかできない、俺が———」






  SAVE



 目が覚めた。石壁と血の臭いと、私。

 「寝てた....!?」

 リルートはすぐに復剣を手に取る。

 「今死ねばまだ....」

 刃が酷く重い、自害という行為が拒否反応を起こしている。何度も死んだ、しかし彼女にとって自害というのはとても恐怖に満ちていて、苦しいほどに辛いようであった。




 「そういえば....イルンさんは....」

 リルートは痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がると瓦礫に気づく。

 「ここは通れない....だったら一旦入り口に....」

 リルートが振り返ろうとしたその時、金属の弾ける音と共に、瓦礫は開かれる。そこにはイルンの生首を持ったガルザルがそこにいた。


 「随分と時間をかけちまったからなあ? 死んでなくてよかったぜ!」

 ガルザルはすぐさま攻撃に転じる。

 「く.....!」

 リルートは咄嗟に剣撃を受け止めるが、即座に復剣は切断され始めると復剣を引き、後ろへ避ける。

 「お前の武器は何回切っても戻るんだなあ?」

 ガルザルはニヤリと笑い、即座に間合に入ると蓮撃をぶつける。上段、下段、肩、肘、腰。リルートは受け流すようにして躱わすがそれでも限界だ。復剣は例え何度、刃こぼれを起こしては復活する。だが彼女の体力はすでに限界まで迫っていた。

 「教えてやるよ! お前が戦った一番でけえ男、ゴルドはなあ、俺の師匠なんだよ!!」

 ガルザルのその言葉は、戦いを楽しんでいるが、僅かに、本当に僅かだが怒りが籠り、その剣撃が復剣をまた切断する。

 「元黒龍騎士団のあいつを殺ったっていうからどんなもんかと思いや.....こんなもんかよ!!」

 その瞬間、リルートの剣は粉々に弾け、リルートは思わず目を瞑る。




 (諦めるな....相手の剣速は今までの比にならないくらいに早い....だけどここまでに死んだ仲間を裏切りたくない....例え死ぬとしても最後まで....!!)

 復剣を再生させ、リルートは剣撃をギリギリだが何度も受け流す、何度も、何度も。ガルザルが大きく上へ振りかぶったその瞬間に、リルートは腰につけていた縄を引くと、崩れた壁に縛り付けられていた縄がピンと張り、ガルザルの足に引っ掛かる。

 「今だ..!!」

 リルートのブーツから刃が飛び出す。ガルザルは前へ体勢を崩している、蹴り上げるだけで殺すことはできるが、震剣もまたリルートの頭へ振り下ろされる直前まで来ている。


 (相打ちじゃだめだ、私は人につなげない、繰り返されるだけだ、決めろ、決めるんだ)

 「うああああああ!」

 リルートは叫ぶ、振り下ろされる剣撃を復剣で受けようとする。剣撃を避ければこのチャンスはもう来ない、今決めるしか彼女一人にあるチャンスはない——


 ナイフは首元に既に近づいている、あと少しで蹴りが届く。その時だった。

 「勝負は俺の勝ちのようだなあ?」

 その声に背筋が凍りつくような、そんな感覚を覚えた。何かわからない、だけどとんでもない恐怖がそこにあった。

 

 リルートは違和感を覚えながらも蹴り上げる。そしてナイフはガルザルの首元に突き刺さったその時だった。


 「消え.....!?」

 ナイフを刺した部分はまるで雲のように曲がり、消えた。何が起きたのかがわからない、刺さった部分から連鎖するようにガルザルは消えた。

 「惜しかったなあ、俺の恩寵は[幻]だ」

 声の方向は後ろ。リルートは振り返り、剣を構えようとした。だが遅かった。

 リルートの胸、僅か数ミリにまで迫っていた。剣じゃ防げない、避けることもできない、確実な死———


 あいつは私と同じ聖剣使いだ。ガルザルの恩寵はわかった。あとはここから奴を倒すために。繰り返す、私の命は軽いんだから。

 

 リルートはその命を諦めると、目を閉じた。

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