第22話 奪い、奪われ
〜20年前〜
「おーい!」
母は幼いガルザルに声をかける、ガルザルは汚れた道を裸足で走ると母親の元へと飛びつく。
「久しぶり!」
ガルザルにとって1ヶ月ぶりの家族との再会であった。決して愛がなかったわけではない、母は娼婦であった。ボロボロの布でできたお粗末な家を空け、長い時間を一人で過ごし、その後帰ってくる。そんな日常であった。ガルザルの生活は苦しかった、しかし辛さというのはそれほどなく、彼にとっては幸せな人生であったのだ。
「兄弟ができるの」
母の言葉にガルザルは硬直する。その言葉は喜びの感情なんかじゃない、複雑な、どんな感情かはガルザルにはわからない、だが複雑ということだけは、心の奥底で理解した。
「そう....なんだ、楽しみだね!」
ガルザルは笑顔を振り撒きながら答える、彼は幼いながらも自身のわがままを押し殺し、まるで喜んでいるかのようにそう言った。
そして一年も経つと彼に弟ができた。名はハルド、生後間もない赤子であった、だからこそスラム街で生きていけるのか? 誰の子かもわからないからこそ、母が育てるのを諦めるのではないかと、少年は弟を守ることを決意した、しかし———
〜6年後〜
「すごいすごい! そんなに動けるようになったの!?」
ハルドは壁を伝いながらあっという間に壁を登る。ハルドは当たり前のようにするがガルザルにはできない。弟を見てガルザルは言った。
「俺の弟だから当然だね!」
〜8年後〜
「ハルド! ご飯だよ!」
母の言葉にハルドは返事をするとすぐ食卓に着く。
「今日も仕事をしてきた?」
ハルドは食事を口に頬張りながら親指を立てると袋から銀貨を数枚出す。
「今日もたくさんね! それで、ガルザルは?」
ガルザルに向けられる目線、それは諦めの目だ。
「ごめん、今日も売れなくて....」
母はため息をつくとハルドの方に笑顔で向く。
「今日は色々あったもんねー! 例えば———」
俺の存在は既に消え掛かっていた。俺の心配は杞憂だった、弟が生きていて、母も仲良くやれている。なのに俺だけが不満に満ちていた。愛が欲しい、あいつが妬ましい、欲しい、ほしい
ホシイ ホシイ ホシイ
ホシイ ホシイ ホシイ
ホシイ ホシイ ホシイ ホシイ
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欲しい。
そんな時だった、あいつに出会ったんだ。
「そんなに欲しいなら奪ってしまえばいい」
その言葉と共に周りが止まる。俺は周りを見るが誰も動こうとしない、俺はゆっくりと声の方向を見た時、そこにいたのはその時、目に映った知らない男がいた。
高身長で細身の男、黒い服に十字架のペンダントをぶら下げていた、猫のような縦長の瞳孔をした緑色の眼が俺を威圧するようで、初めて死の恐怖を感じるほどだった。
「なんだよ....一体何をして....」
俺は言葉を発してる時に気づいた。
笑っている。
何かわからない、怖い、なのにすごく新鮮な気分だった。
「欲しいなら奪ってしまえばいい、俺がそれを遂行できる力を与えてやろう」
男はそう言って手から生成するようにノコギリのような剣を生み出す。
「これは聖剣、[振動]の恩寵が込められた武器だ、これがあればお前は——」
俺はその時、男に切り掛かっていた。
ものすごい轟音を鳴らしながら男を袈裟斬りにすると二つに切断した。
「成程、それが君の悪心か」
男の切断面から大量の蝿が這い出してくるとそれは身体と一体化するようにして身体が再生する。
「気持ち悪いなあ!」
俺は続いて剣撃をぶつけようとする、だがその瞬間に、男は消えた。
「へえ、じゃあやってみようじゃねえか?」
そうして聖剣を持った俺は、まず、家へと帰ることにした。
「世界最強の男、ダイン、今からお前を倒してやるぜ!!」
ダインは腕の痛みを必死に耐えながら啖呵を切るとガルザルは笑う。
「お前の身体、大事にしてるかあ?」
ガルザルの言葉を無視してダインはガルザルに戦鎚を当てようとする、しかしガルザルはその攻撃を後ろに躱わすと即座に切り掛かる。
「おらっ!」
ガルザルの剣撃をギリギリで避けると、ダインは空中に飛び、首元に蹴りを入れる。
「効かないなあ!」
ガルザルはニヤリと笑う、ガルザルは突撃するとダインは相打ち覚悟でガルザルに打ち込んだその時であった。
「なに....!?」
ダインが戦鎚を打ち込んだ瞬間に、ガルザルは霧のように消えた。ダインが困惑したその瞬間、背後からの殺意に気づく。
「残念だなあダイン!!」
ガルザルはダインの肩に震剣を斬り込むと震剣は高速で振動し、ダインの身体をこじ開けるように進む。
「がああああああ!!」
ダインは激痛で叫ぶ、だがすぐにその叫びは止むことになる。ダインは真っ二つになり、絶命するのであった。
「くく....ははははははは!!」
ガルザルは笑いながらミールの死体を蹴り飛ばす。
「リルートぉ、俺からゴルドを奪ったんだあ、お前の持ってるもん、奪っても構わないよなあ!!」
ガルザルは高笑いをしながらリルートの走った方向へと歩いて向かうのであった。




