第12話 奇策工作
「手負いを狙うってわけっすね、確かに狡猾....だけど実力の差はわからないようっすね」
アドレットに剣撃が当たるその瞬間、アドレットはマントを広げて身を隠すと散弾銃を取り出し、引き金を引く。
「ギギャア!」
銃声と硝煙の香り、銃弾は3匹のゴブリンに同時命中し、3匹の身体はぐしゃぐしゃに崩れる。
続いて5匹がアドレットを襲うが、アドレットは2匹を縄鏢で捉えると腕を横に大きく振り、撒菱をばら撒くと、2匹を撒菱の置かれた地面へと叩きつける。
「アドレットさん!!」
仲間の死体を踏むことでゴブリンはアドレットのところへ走るのを見て、リルートが叫ぶとアドレットは紙に包まれた石を上へ投げ、石の露出した部分を剣で叩くと、火花が散り、紙に引火すると、近づいてきたゴブリンに被弾すると石は燃え上がり、ゴブリンを火だるまにすると縄鏢の持ち手部分をもう1匹のゴブリンに投げると、縄鏢に引火し、持ち手部分が爆発する。
「リルートさん! 来るっす!」
ゴブリンは2匹、そのうち1匹はマジックキャスター、ゴブリンは高く飛び上がると上空から落下しながら剣撃を振るい、マジックキャスターは氷の槍を生成し、リルートに向かって飛ばすがアドレットは氷の槍を斬り裂く。
「ありがとうございます!」
リルートはアドレットに言いながらゴブリンの一撃を受けたその時、アドレットが叫ぶ。
「リルートさん! それを受けたら——!!」
リルートが受けたゴブリンの剣撃は大して強くなかった、だが、異変が起きたのはその後であった。
「.......水....!?」
リルートの顔や目に液体が付着した、リルートは困惑しながらもゴブリンを斬ろうとしたその時。
「熱! ....ッああああ!!」
顔にとんでもない激痛が走り、リルートはその場にうずくまる。目を開けようとするが激痛のせいでひらくことができない、まだゴブリンもいる。リルートは目を瞑ったまま闇雲に剣を振るう。
「リルートさん! こっちに来るっす!!」
アドレットの声は聞こえるがどこにいるかわからない、リルートは剣を振るっていると、何かに腕を掴まれ、右腕が握り潰される。
「ぐ....が....!?」
痛い、暗くて何も見えない、何が起きたかわからない、腕と顔の痛み、リルートは何かから逃げようと腕から振り払おうにも離れない、リルートが抵抗しているとその瞬間、身体が宙に浮いた——
「うあッ!!」
リルートは情けない声を上げる、状況は確認できない、何かに持ち上げられた? リルートがそう思った直後、全身の棘の刺さる痛みと激突の衝撃が走る。
リルートは悲痛の叫びを上げる、わからない恐怖、全身への激痛、アドレットの声、ゴブリンの足音、血の臭い、入り混じる大量の思考の中で、リルートの呼吸は止まった。
「リルートさん、着いたっすよ」
アドレットはリルートの身体を揺らし、リルートは目を覚ます。
「あ.....私、また......?」
リルートは先ほどの痛みを思い出し、息を切らしながらも平静を取り戻す。
「着いたんですね.....それじゃあ行きましょう....」
体調の悪そうなリルートを心配しアドレットは声をかける。
「大丈夫っすか? もし気分が優れないのなら....」
リルートは笑顔を取り繕いながら急いで降りる。
「大丈夫ですよ....ちょっと嫌な夢を見ただけなので!」
「ああ.....そうならいいんすけど....」
アドレットは不安に思いながらも顔をブンブンと横に振るうと自身の頭を叩く。
「一応おさらいっす、ゴブリンは鼻がいいし夜目が効く、とても狡猾で罠なんかもあるかもしれません、だから警戒して進むっす!」
「わかりました....じゃあ行きましょう....!」
目に映る時計はは11時40分ほどを刺してる。これはおそらく12時になった時....前に死んだ時の時間なんだ....やはりそうだ、私は死ぬと時間が戻る。それも起きた時間にだ、ここまでが夢だなんて私には到底思えない。この繰り返しは私の恩恵なんだ、私は繰り返しの恩恵と聖剣、これを駆使して生きていくんだ.....
「.....今足音がしたっす。ゴブリンが来るので武器を構えてくださいっす」
リルートは聖剣を構える、槍とナイフのゴブリンが現れることを考え、動きを想定しながら待っていると、2匹のゴブリンは現れる。
「おりゃあああ!!」
リルート槍を持ったゴブリンに盾で体当たりをするとナイフを持ったゴブリンを切り払う。盾で押しのけ壁に叩きつけると剣を突き刺す。
「アドレットさん!」
「わかったっす!」
アドレットはリルートに斬られたゴブリンにトドメを刺す。
「やるっすね、俺はいらないんじゃないっすか?」
アドレットがにこやかに言うとリルートは否定する。
「そんなことないです、アドレットさんがいたからこうやって戦えるんです!」
「そうっすかね....なんだか照れ臭いもんですね!」
そして二人が進むと二つの分かれ道が現れる。
「足跡とかがあったらいいんすけどね....とりあえず右に進むっすよ」
アドレットは右の道を歩き始め、リルートもついていく。
この後に待ち受けることもきっと変わらないはずだ、私にできることは....