第115話 リルート
少女と怪物の出会いは、序章に過ぎなかった。
怪物は人の不幸を求め、創り、壊していた。
そのようにして村々を焼き払い、魔物を侵攻させ、飢えを強制し、突発性災害を人為的に引き起こしていた時で。怪物の所持していた恩恵の一つ、[時間遡行]は自身の望む過去にまで、戻ることができた。
そうやって何度も苦しむ顔を見ることが彼の愉悦だった。あの時までは。
ある村にオークを嗾けた。村は最も簡単に蹂躙され、泣き叫ぶ中で、怪物は心地よい気分で闊歩して、純粋に見ていた。
そんな中で、怪物は立ち尽くし、呆然と焼ける死体を見つける少女を目にした。
少女の顔はよく見ることができない。興味本位で怪物はその少女の顔を覗き込んだその時、少女はその怪物の顔に手をのせるように、静かに触れた。
その感覚を怪物は知っていた。それは怪物自身が利用して、だからこそわかる。
少女の名はリルート、彼女の恩恵を文献はこう記す。
恩恵の名は[略奪]
何を奪われたのかはわからない、だがこの少女は使えると、怪物は確信した。[略奪]の恩恵を[共有]し、また恩恵を無限に手にすることができる。怪物は[時間遡行]を使おうとしたその時———
———それは発動しなかった。
怪物はそれを知った瞬間に、少女を絶命させ———
怪物はそれを知った瞬間に、少女を絶命さ———
怪物は違和感に気づいた。普通の常人が知り得ないその、時間の感覚、渦のようなものを。
怪物はリルートを既に数千回は殺しているはずだ。だが[時間遡行]を繰り返している。つまり、この少女はこの一瞬にして[時間遡行]を操れるようになったのか?だがこの少女はどれだけ殺されても戻ることを続けた。
泣きながら、失禁しながら、全身を震わせ恐怖する少女はまだ繰り返し続けた。幼子というのは生きる本能が凄まじいということなのだろうか。だから私は諦めることに決めた。例えば15歳だ、思いつく限り最大の絶望をこの少女にぶつける。同一化を果たせず自ら命を落としたくなるほどにすれば、この少女はきっと死んでくれるはずだ。
希望を見せて絶望に落とす時こそ、人は挫ける。
そう思い、私はその村から手を引いた。
そして今、私は目の前にいる少女を殺す。次は炎だ。ガスによる窒息はさせない。体内から焼き尽くし、爛れさせる。この少女が諦めれば、それで構わないのだから。
リルートはそこから15分の時間をかけて絶命することとなる。




