表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険少女の繰り返し  作者: 山田浩輔
切望の醒
114/119

第113話 絶望

 知覚した。



 全体の盤面は最悪だ。でもここからの打開を考えるんだ。さっきの攻防.....あの男の恩恵は.....複数あるのか....?彼自体は特殊な道具や武器は持っていない...何がある? 人に恩恵は一つだけ、それはわかっているはずだ....どうすればいい.....何がある.....?


 黒いスライム、沼、睨みによる筋肉の硬直.....私の目をおそらく切り裂いた。だから斬撃系の恩恵もあるはずだ....いや考えろ....再生の速度からして魔族の可能性が高い....だったら素の身体能力で私に斬撃を与えた可能性だって....


 「さあ、何秒耐えられるか、試させてもらおう?」



 作戦を練る暇がない、一旦は様子を見つつこの男の能力を知る必要があるだろう。


 その瞬間であった。先ほどのように黒い巨大なスライムが波のように襲いかかる。リルートは即座に背後に跳ぶが、地面を抉り周りを巻き込むようにして速度は上がる。

 

 違う。リルートが見たそれはスライムなんかではない、これは....


 竜だ、ハロルドと同じ系統の竜だ。だが闇のように黒く速度や大きさは比にならないほどの、それがこいつの能力なんだ。リルートは闇竜に向かって火薬を投げつけると即座に火付け爪で点火する。


 意味があるかはわからない、だが試さなければわからないものだろう。何が効くのか、何が無駄なのか。



 そのように思考していたリルートを見て男は笑う。

 「ああ、火薬は効かないよ。それにハズレだ」



  その言葉で一瞬だけ思考が止まるリルートであったが、火薬の爆発を無視して襲い掛かる闇竜を見てリルートは毒針を取り出そうとするが、その暇もなく、2度目の死を迎えることしかできなかったのだ。




 *

















 *













 *










 *






 *




 *



 *



 *

 *

 *

 *

 *

 *

 * 

 *



******************************************************




 

 何度目....なのだろうか


 既に百回ほど死んでいる....だろう.....だが打開点がまるで見つからない....闇竜を応用してなのか、様々な多彩な攻撃をする。[防壁]、[斬撃]、[超音波]、[閃光]、[雷撃]、[破壊]、[毒]、[磁石]、[急成長]....そのような能力....恩恵を全て使える....?いやそんなわけがない、魔族だとしても....人間だとしても....能力は一つしかないんだ.....だったら何が....




 違うな....恩恵は無限に....私が思う想像を超えるような恩恵があるはずだ....突出した理外の発想でもいい.....考えるんだ......



 例えば.....()()()()()()()()()()()があるとしたら.....?




 いろいろな恩恵を....奪える何かが。



 その時、リルートに浮かんだのは図書館で見た文献であった。



 *****

  [略奪]の恩恵。

 恩恵の中でも群を抜いている、その力は殺した相手の恩恵を完全に自分のものにする、以降[略奪]の力は消え、その恩恵として生きていく。15歳を超えても[略奪]を使用してない場合、典型的に自覚する。

 [略奪]は神殺しだと考える研究者も多い。


 今から100年以上前、古文書に書かれたそれによれば、突如国民の約3割が消滅した。死体はなく、誰が殺したのか、そもそも殺害なのかすらわからない。だが歴史的災害として語られており、今でも神の力だと吹聴するものは多い。



 いや....[略奪]は一つしか奪うことができない.....だったらまた違う恩恵を組み合わせて....


 「殆ど情報がないと言うのに思考だけは得意なようだね? だったら....ヒントでも与えようか?」

 男は余裕そうに笑う、既に何人かが攻撃を仕掛けていると言うのに全てを避け、破壊して、なお話す余裕があると言うのか。



 「私の恩恵を伝えよう、私の恩恵は[共有]、相手の同意を得ている状態に限るが、他のものの恩恵を[共有]できる」


 男は自分の情報を自ら出した、ブラフの可能性はある、だが......いやそれよりもだ、さっきからそうだが思考が読まれている......心を読むことまでできるのか...



 男がわざわざその情報をこのタイミングで出した理由....つまり関連がある可能性はある....だとしたら....どういう可能性が....



 

 

 ......




 [共有]で[略奪]を使って恩恵を奪ったらどうなる?恩恵はどこへ消える....?消えるのか.....いや、もしもそれが....[略奪]が相手の恩恵を自分のものに定着させるものだとしたら......




「それこそが....真実なのだよ」



 その言葉が嘘にはまるで聞こえなかった、おそらく皆はまだ知らない、だがもしもそれが本当だとしたら.....この男は....




 怪物(バケモノ)だ。






 この事実を伝えなければ.....非常にまずい。




 攻撃を続ける一同に向かってリルートは叫ぶ。


 「そのバケモノは....! 恩恵を多数持っています! 一つを警戒してもダメです....!」



 皆がその言葉を聞いたその時、怪物は闇竜を生み出す、その数は8つ。頭一つで場を制圧できるその竜は8つ同時に現れたのだ。



 戦闘不能者はカイルやフレッド、コルクは既に呼吸をしているか怪しい、クルトやレルフェンスやヴォルガーは攻撃を続けるがいつまで持つかわからない、どうすればいい.....どうすればいい?




 多数の恩恵をもち、無数に苦しめるそれはまさに







 絶望そのものであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ